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第一章:仇討ち
間話1:初めての同居人
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< 間話はストーリー上飛ばしていただいてかまいません(サリー視点) >
「どうぞ入って! 私もさっきこの部屋に来たところだから何もないんだけどね」
サリーは、ポツンとテーブルと椅子、そしてベッドが1つだけがある部屋に少女を招き入れた。
少女は、ボロボロの服を着ていて、素足のままだった。
「サリーさん、本当にいいのですか?」
銀髪の少女は、入り口で立ち止まって入っていいものか思案している。
「サリーでいいよ」
「は、はい。じゃあ、サリーって呼びます。あの、私のことはララって呼んでください」
ちょこんと頭を下げるとララは言った。
「ご迷惑になってないでしょうか?」
「ぜーんぜん、迷惑なんかじゃないからっ! あたいも今日こっちに来たばかりで心細かったからさ。気にしないで」
満面の笑みでサリーは言うと、入口で立ち尽くしているララの手を引き椅子に座らせた。
そして、ドタバタと部屋から出て行くと、すぐに木桶に水を汲んで戻って来た。
「足が汚れてるから洗おっか! そのままじゃ、ベッドも汚れちまうからね」
そう言うと、水を張ったばかりの桶を足元に置いた。少女の足は泥だらけだ。
「ごめんなさい、私、靴も履かずに裸足で飛び出してしまって……」
「いいって、いいって。 この布を使ってくれていいよ」
サリーは、足を洗うための布をララに投げて渡す。
それを、右手でサッと受け取ったララは木桶に布を浸した。
足を洗う前に、布で顔をふく。そして、手を腕から指先まで拭いて行くときれいな肌が現れた。
道に転がった時にずいぶんと泥がついていたのだ。
この部屋に来る少し前にサリーは、この少女に出会った。
ちょうど家の前の通りで少女は男に痛めつけられていたのを、助け出したのだった。
もちろん、サリーがララを助けたわけではなく、この部屋の家主の男がこの少女の男を叩きのめしたのだった。
「あのー、親切にしていただいてありがとうございます」
「いいよ、そんなに遠慮しなくてもさ。しばらくここに住むんだからララの家でもあるわけだし」
サリーは、乾いた布を手渡しながら言う。
「ありがとうございます」
ララは、安心したのか、頬が緩み、顔から険しさがなくなった。
かわいいじゃねーか!とサリーはララの顔を両手で挟んで言った。
ララがひどく緊張していた様子だったため、気を使っていたのだろう。ララの笑顔を見てサリーも安堵したようだった。
「水がすごく汚れたな。もう一回汲んでくる。あたいも体を拭きたいしさ」
「そ、それくらい、私にさせてください」
ララは、茶色く濁った桶を見て、慌てて水に浸けた足を出して拭く。
「いいから、いいから。今日は私がやってあげるよ。ここってドアのすぐ外に水瓶が置いてあるから、取り替えるのってすぐだし……
明日からはララが水瓶に水を汲んでおいてくれたらいいからさ」
そう言うと、サリーはララの肩をポンと叩いた。ララはその手にそっと手を添える。
「わかりました。私にできることは言ってくださいね」
「ああ、明日からあたいも店作りしなくちゃいけないから、ララに家のことは頼むとするよ」
ララにウインクすると、サリーは桶を持って外に出て行った。
◇◇◇
サリーは、ひとつ括りにしていた緑の髪をとくと、ハラっと肩にかかった。
照明に照らされたサリーの髪はエメラルド色に輝いている。
「サリーの髪、とてもきれい!エメラルド石みたいで素敵……」
「おぉ、ありがとうな。よく言われるんだ。他の人はもう少し濃い色してる人が多いんだけど、あたいは母ちゃん似だからかな、淡い緑なんだなあ」
二人は、着ているものを脱いでいく。
サリーは、女同士だから気にしないが、ララは恥ずかしいのか胸を隠してサリーの裸を見ないように下を向いていた。
「せっかくだからお互いに体を洗わおうよ」
サリーはさっさと全裸になると、桶の前に座りララを見上げた。
おずおずとララが脱ぐ姿を見て、恥ずかしがらなくていいよと声をかける。
「あのー。 びっくりしないでくださいね」
「おっ、もしかして~、あたいよりおっぱいが小さいとか気にしてるの?」
サリーは自分の胸を両手ですくい上げ、寄せて谷間を作った。
ララは、シャツを脱ぐと全身にあざがいたるところにあった。
腕には掴まれたのか指の形に血が滲み、脇腹や胸の上も青紫色に腫れている。
日常的に虐待を受けていたのがわかる。
サリーは、痛ましいララの姿を見ると思わず涙ぐみ、そしてララに抱きついた。
「もう、大丈夫だからな……」
「はい……」
「あたいたち、ずっと一緒だから……」
「……はい」
「もう男なんかに、ララを触らせないから……」
「……はい」
ララの涙が頬を伝うと、憐憫の情を誘ったのかサリーの目からも大粒の涙が落ちる。
サリーは強く抱きしめ、ララの背中をさすりながら、何度も、何度も、大丈夫だと言い聞かせた。
◇
◇
「このベッド、大きめだよな。二人で寝ても全然平気だし。あっ、あたい寝相が悪いけど、ごめんな」
「私も寝相が悪い方なんです」
ララはクスッと笑うと、サリーと手をつないでベッドに寝転んだ。
「あの、助けてくださった男の人…… 明日改めてお礼が言いたいわ」
「セイヤさんな。 すげえよな、めちゃくちゃ強いわ、女に優しいわ、完璧じゃん!」
「あ、それ私も思いました!」
二人は先ほど大泣きしていた二人とは思えないくらい、笑いあっていた。
涙がすべての忘れたい出来事を洗い流してくれたかのように……
その夜はサリーは、セイヤに出会ったところからララと出会うまでの経緯を、延々と喋り尽くした。
「サリーさんったら、全部教えてくれるんですね」
「あっ、わりー。なんかさ、すごく嬉しいんだよなあ。だって、今日この街に戻ってきて、住むところも店も何も決めていなくて泊まるところも決まっていなかったのにさ。セイヤに会って、家も借りれて店も借りれたんだから」
夜、皆が寝静まった頃には二人は手をつなぎながら寝息を立てていたのだった。
「どうぞ入って! 私もさっきこの部屋に来たところだから何もないんだけどね」
サリーは、ポツンとテーブルと椅子、そしてベッドが1つだけがある部屋に少女を招き入れた。
少女は、ボロボロの服を着ていて、素足のままだった。
「サリーさん、本当にいいのですか?」
銀髪の少女は、入り口で立ち止まって入っていいものか思案している。
「サリーでいいよ」
「は、はい。じゃあ、サリーって呼びます。あの、私のことはララって呼んでください」
ちょこんと頭を下げるとララは言った。
「ご迷惑になってないでしょうか?」
「ぜーんぜん、迷惑なんかじゃないからっ! あたいも今日こっちに来たばかりで心細かったからさ。気にしないで」
満面の笑みでサリーは言うと、入口で立ち尽くしているララの手を引き椅子に座らせた。
そして、ドタバタと部屋から出て行くと、すぐに木桶に水を汲んで戻って来た。
「足が汚れてるから洗おっか! そのままじゃ、ベッドも汚れちまうからね」
そう言うと、水を張ったばかりの桶を足元に置いた。少女の足は泥だらけだ。
「ごめんなさい、私、靴も履かずに裸足で飛び出してしまって……」
「いいって、いいって。 この布を使ってくれていいよ」
サリーは、足を洗うための布をララに投げて渡す。
それを、右手でサッと受け取ったララは木桶に布を浸した。
足を洗う前に、布で顔をふく。そして、手を腕から指先まで拭いて行くときれいな肌が現れた。
道に転がった時にずいぶんと泥がついていたのだ。
この部屋に来る少し前にサリーは、この少女に出会った。
ちょうど家の前の通りで少女は男に痛めつけられていたのを、助け出したのだった。
もちろん、サリーがララを助けたわけではなく、この部屋の家主の男がこの少女の男を叩きのめしたのだった。
「あのー、親切にしていただいてありがとうございます」
「いいよ、そんなに遠慮しなくてもさ。しばらくここに住むんだからララの家でもあるわけだし」
サリーは、乾いた布を手渡しながら言う。
「ありがとうございます」
ララは、安心したのか、頬が緩み、顔から険しさがなくなった。
かわいいじゃねーか!とサリーはララの顔を両手で挟んで言った。
ララがひどく緊張していた様子だったため、気を使っていたのだろう。ララの笑顔を見てサリーも安堵したようだった。
「水がすごく汚れたな。もう一回汲んでくる。あたいも体を拭きたいしさ」
「そ、それくらい、私にさせてください」
ララは、茶色く濁った桶を見て、慌てて水に浸けた足を出して拭く。
「いいから、いいから。今日は私がやってあげるよ。ここってドアのすぐ外に水瓶が置いてあるから、取り替えるのってすぐだし……
明日からはララが水瓶に水を汲んでおいてくれたらいいからさ」
そう言うと、サリーはララの肩をポンと叩いた。ララはその手にそっと手を添える。
「わかりました。私にできることは言ってくださいね」
「ああ、明日からあたいも店作りしなくちゃいけないから、ララに家のことは頼むとするよ」
ララにウインクすると、サリーは桶を持って外に出て行った。
◇◇◇
サリーは、ひとつ括りにしていた緑の髪をとくと、ハラっと肩にかかった。
照明に照らされたサリーの髪はエメラルド色に輝いている。
「サリーの髪、とてもきれい!エメラルド石みたいで素敵……」
「おぉ、ありがとうな。よく言われるんだ。他の人はもう少し濃い色してる人が多いんだけど、あたいは母ちゃん似だからかな、淡い緑なんだなあ」
二人は、着ているものを脱いでいく。
サリーは、女同士だから気にしないが、ララは恥ずかしいのか胸を隠してサリーの裸を見ないように下を向いていた。
「せっかくだからお互いに体を洗わおうよ」
サリーはさっさと全裸になると、桶の前に座りララを見上げた。
おずおずとララが脱ぐ姿を見て、恥ずかしがらなくていいよと声をかける。
「あのー。 びっくりしないでくださいね」
「おっ、もしかして~、あたいよりおっぱいが小さいとか気にしてるの?」
サリーは自分の胸を両手ですくい上げ、寄せて谷間を作った。
ララは、シャツを脱ぐと全身にあざがいたるところにあった。
腕には掴まれたのか指の形に血が滲み、脇腹や胸の上も青紫色に腫れている。
日常的に虐待を受けていたのがわかる。
サリーは、痛ましいララの姿を見ると思わず涙ぐみ、そしてララに抱きついた。
「もう、大丈夫だからな……」
「はい……」
「あたいたち、ずっと一緒だから……」
「……はい」
「もう男なんかに、ララを触らせないから……」
「……はい」
ララの涙が頬を伝うと、憐憫の情を誘ったのかサリーの目からも大粒の涙が落ちる。
サリーは強く抱きしめ、ララの背中をさすりながら、何度も、何度も、大丈夫だと言い聞かせた。
◇
◇
「このベッド、大きめだよな。二人で寝ても全然平気だし。あっ、あたい寝相が悪いけど、ごめんな」
「私も寝相が悪い方なんです」
ララはクスッと笑うと、サリーと手をつないでベッドに寝転んだ。
「あの、助けてくださった男の人…… 明日改めてお礼が言いたいわ」
「セイヤさんな。 すげえよな、めちゃくちゃ強いわ、女に優しいわ、完璧じゃん!」
「あ、それ私も思いました!」
二人は先ほど大泣きしていた二人とは思えないくらい、笑いあっていた。
涙がすべての忘れたい出来事を洗い流してくれたかのように……
その夜はサリーは、セイヤに出会ったところからララと出会うまでの経緯を、延々と喋り尽くした。
「サリーさんったら、全部教えてくれるんですね」
「あっ、わりー。なんかさ、すごく嬉しいんだよなあ。だって、今日この街に戻ってきて、住むところも店も何も決めていなくて泊まるところも決まっていなかったのにさ。セイヤに会って、家も借りれて店も借りれたんだから」
夜、皆が寝静まった頃には二人は手をつなぎながら寝息を立てていたのだった。
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