13 / 13
天国のような地獄の始まり
掌ドリル
しおりを挟む
「えっと……俺がこの1年1組の担任、天海龍之介《てんかいりゅうのすけ》だ。まあ見た目はこの通りだが、仲良くしてくれ」
しばらくして先生が来た。本当ならその程度で熱が冷めるほどのヤワな熱中具合じゃあなかったけど、今回ばかりは仕方がない何故なら先生が竜の姿で窓から来たからだ。
想像してみてほしい初めての同族(しかも自分の方がわりかし軽症)と話しているなか、突然窓からあの中国にいるという伝説の神獣龍が現れて、それだけならまだしも突然人間の姿になりさあみんな席につけって言われる気持ちを考えてみてほしい。少なくとも俺は正気を疑ったからな、自分の。しかし周りが先生が来たと普通に着席するから特に何も言わなかったけど、それでも怖いから碓氷峠くんの隣に現在陣取っている。
「あの人あんま怖い人じゃないぜ。俺昔から知り合いだけど、優しくていいお兄さんだぞ。薬草学と魔法薬学の先生しててさ、多分担任だからこのクラスは2つとも龍之介じゃねえのかな?」
「こらこら、一応猫太は今日から生徒なんだから、先生にタメ口使ったらダメだぞ? その隣にいる友達くんにも言っといてくれ……お前友達いるんか?」
「昨日出来たマブダチだ」
怖がってた俺が言っていいことじゃないけど 訳の変わらないことを言って先生を困らせるな。昨日出来たマブダチは分からないだろう俺も分からない。後ろに伸びる山羊より大きくて枝分かれしていく龍のツノはカッコよくて、フリフリと動いている龍の尻尾が可愛い。大人サイズのローブは若干ダボついている、思ったよりも小柄なのでは。
「そうかそうか、猫太お前にマブダチがねぇ……人生わかんないもんだぜ」
「何ジジイみてえなこと言ってんだ」
「学園長と同じように扱わないでくれよ、こう見えて先生まだ29歳よ?」
「うわ若いのかおじさんなのか絶妙なラインだな」
「30代もまだまだお兄さんだよ……いや1年生からしたら20代後半はおじさんおばさんか」
「そもそも大学院を一浪二留してんだからまだまだ新米教師じゃねえか、おじさんじゃねえな」
「やめろやめろバラさないでくれ……」
ってな感じで担任になった29歳の新米教師は、やたらゴロゴロした布袋をとりだす。100円ショップで売ってるビー玉が山ほど入ったあの袋を思い出した。
「今からお前らに心象化け石を配る。これはすべて学園長が魔法をかけていて、一年生が持つ人間に適性のある寮の鍵に化けるんだ」
そんな感じで寮は決められるんだ、確かに自由に決められるなんてのは一言も言ってなかったな。適性云々で決めるのか。手に乗って流れるぐらいの透明なガラス玉のような、まあ石には見えなかった。そもそも心象化け石ってなんだ、石が化けるの?
「ねえねえ化ける石って……」
「ああ。持った人間の心を移す物に変化するんだ、一回変化したら元に戻らないから、あの姿で見るのはレアだぜ。でもこれはジジイが魔法で魔改造してるから寮の鍵にしか化ねえぞ」
やっぱり隣に碓氷峠君がいると安心感が違う。出来ることなら同じ寮になりたいけど、同じ部屋とかになったら……ほっぺめちゃくちゃぷにぷにしてきそう。
「ほら、お前も石1つ待て」
先生に催促されるがまま石を握る。小さいまさしくビー玉を思わせるそれは、透明だったのに少しずつ色が変わっていった。これからこの石はどこか一つの寮へと続く鍵になるのか。どこの寮だろう、個人的に希望している寮というより6年間いても発狂しないぐらい平和で伸び伸び出来て疲れない量が一番理想だ。ちなみに碓氷峠くんは……物凄く俺の方見てくる、自分が持っている石の変化には目も暮れない。いやその、自分の見た方がいいんじゃあないの?
「どうせ俺はユキネコだろうし……」
「あ、もうやったことあるの?」
「碓氷峠の人間はみんなユキネコなんだ」
見てみると確かに碓氷峠くんの石は見る見るうちに持ち手に猫の模様が描かれている水色の石の鍵になっていった。早くない? 俺なんてまだ石が曇ってるだけで色づいてもいないしなんなら鍵の形もないんだけど。
「大体そんなもんだよ、俺の場合は血のせいで決まるのが早いのさ」
あんまりユキネコ寮に入るの好きじゃないのかな……まあ小さい頃から強制的に決まってて、楽しみを奪われたって考えたらそれだけでもこの寮を嫌う理由になるのかもしれない。そう思っているうちにも、俺の鍵は色づいて形も鍵っぽくなっていく。目の前で姿が変わるのは昨夜の変身術を思い出して再びワクワクしてしまった。水色で、持ち手の猫の柄が可愛いおしゃれな鍵に。
「その、ごめん、俺もユキネコみたいだ」
「……俺ユキネコ愛してる」
急な手のひら返しに驚きつつも、元気になってよかったなと淡白に考えてしまっていた。
しばらくして先生が来た。本当ならその程度で熱が冷めるほどのヤワな熱中具合じゃあなかったけど、今回ばかりは仕方がない何故なら先生が竜の姿で窓から来たからだ。
想像してみてほしい初めての同族(しかも自分の方がわりかし軽症)と話しているなか、突然窓からあの中国にいるという伝説の神獣龍が現れて、それだけならまだしも突然人間の姿になりさあみんな席につけって言われる気持ちを考えてみてほしい。少なくとも俺は正気を疑ったからな、自分の。しかし周りが先生が来たと普通に着席するから特に何も言わなかったけど、それでも怖いから碓氷峠くんの隣に現在陣取っている。
「あの人あんま怖い人じゃないぜ。俺昔から知り合いだけど、優しくていいお兄さんだぞ。薬草学と魔法薬学の先生しててさ、多分担任だからこのクラスは2つとも龍之介じゃねえのかな?」
「こらこら、一応猫太は今日から生徒なんだから、先生にタメ口使ったらダメだぞ? その隣にいる友達くんにも言っといてくれ……お前友達いるんか?」
「昨日出来たマブダチだ」
怖がってた俺が言っていいことじゃないけど 訳の変わらないことを言って先生を困らせるな。昨日出来たマブダチは分からないだろう俺も分からない。後ろに伸びる山羊より大きくて枝分かれしていく龍のツノはカッコよくて、フリフリと動いている龍の尻尾が可愛い。大人サイズのローブは若干ダボついている、思ったよりも小柄なのでは。
「そうかそうか、猫太お前にマブダチがねぇ……人生わかんないもんだぜ」
「何ジジイみてえなこと言ってんだ」
「学園長と同じように扱わないでくれよ、こう見えて先生まだ29歳よ?」
「うわ若いのかおじさんなのか絶妙なラインだな」
「30代もまだまだお兄さんだよ……いや1年生からしたら20代後半はおじさんおばさんか」
「そもそも大学院を一浪二留してんだからまだまだ新米教師じゃねえか、おじさんじゃねえな」
「やめろやめろバラさないでくれ……」
ってな感じで担任になった29歳の新米教師は、やたらゴロゴロした布袋をとりだす。100円ショップで売ってるビー玉が山ほど入ったあの袋を思い出した。
「今からお前らに心象化け石を配る。これはすべて学園長が魔法をかけていて、一年生が持つ人間に適性のある寮の鍵に化けるんだ」
そんな感じで寮は決められるんだ、確かに自由に決められるなんてのは一言も言ってなかったな。適性云々で決めるのか。手に乗って流れるぐらいの透明なガラス玉のような、まあ石には見えなかった。そもそも心象化け石ってなんだ、石が化けるの?
「ねえねえ化ける石って……」
「ああ。持った人間の心を移す物に変化するんだ、一回変化したら元に戻らないから、あの姿で見るのはレアだぜ。でもこれはジジイが魔法で魔改造してるから寮の鍵にしか化ねえぞ」
やっぱり隣に碓氷峠君がいると安心感が違う。出来ることなら同じ寮になりたいけど、同じ部屋とかになったら……ほっぺめちゃくちゃぷにぷにしてきそう。
「ほら、お前も石1つ待て」
先生に催促されるがまま石を握る。小さいまさしくビー玉を思わせるそれは、透明だったのに少しずつ色が変わっていった。これからこの石はどこか一つの寮へと続く鍵になるのか。どこの寮だろう、個人的に希望している寮というより6年間いても発狂しないぐらい平和で伸び伸び出来て疲れない量が一番理想だ。ちなみに碓氷峠くんは……物凄く俺の方見てくる、自分が持っている石の変化には目も暮れない。いやその、自分の見た方がいいんじゃあないの?
「どうせ俺はユキネコだろうし……」
「あ、もうやったことあるの?」
「碓氷峠の人間はみんなユキネコなんだ」
見てみると確かに碓氷峠くんの石は見る見るうちに持ち手に猫の模様が描かれている水色の石の鍵になっていった。早くない? 俺なんてまだ石が曇ってるだけで色づいてもいないしなんなら鍵の形もないんだけど。
「大体そんなもんだよ、俺の場合は血のせいで決まるのが早いのさ」
あんまりユキネコ寮に入るの好きじゃないのかな……まあ小さい頃から強制的に決まってて、楽しみを奪われたって考えたらそれだけでもこの寮を嫌う理由になるのかもしれない。そう思っているうちにも、俺の鍵は色づいて形も鍵っぽくなっていく。目の前で姿が変わるのは昨夜の変身術を思い出して再びワクワクしてしまった。水色で、持ち手の猫の柄が可愛いおしゃれな鍵に。
「その、ごめん、俺もユキネコみたいだ」
「……俺ユキネコ愛してる」
急な手のひら返しに驚きつつも、元気になってよかったなと淡白に考えてしまっていた。
0
お気に入りに追加
19
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話

僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。


過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

君なんか求めてない。
ビーバー父さん
BL
異世界ものです。
異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。
何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。
ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。
人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる