自分の好奇心が原因で魔法学校に来たんだから卒業ぐらいしてから帰れ

荒瀬竜巻

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天国のような地獄の始まり

掌ドリル

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「えっと……俺がこの1年1組の担任、天海龍之介《てんかいりゅうのすけ》だ。まあ見た目はこの通りだが、仲良くしてくれ」

しばらくして先生が来た。本当ならその程度で熱が冷めるほどのヤワな熱中具合じゃあなかったけど、今回ばかりは仕方がない何故なら先生が竜の姿で窓から来たからだ。

想像してみてほしい初めての同族(しかも自分の方がわりかし軽症)と話しているなか、突然窓からあの中国にいるという伝説の神獣龍が現れて、それだけならまだしも突然人間の姿になりさあみんな席につけって言われる気持ちを考えてみてほしい。少なくとも俺は正気を疑ったからな、自分の。しかし周りが先生が来たと普通に着席するから特に何も言わなかったけど、それでも怖いから碓氷峠くんの隣に現在陣取っている。

「あの人あんま怖い人じゃないぜ。俺昔から知り合いだけど、優しくていいお兄さんだぞ。薬草学と魔法薬学の先生しててさ、多分担任だからこのクラスは2つとも龍之介じゃねえのかな?」

「こらこら、一応猫太は今日から生徒なんだから、先生にタメ口使ったらダメだぞ? その隣にいる友達くんにも言っといてくれ……お前友達いるんか?」

「昨日出来たマブダチだ」

怖がってた俺が言っていいことじゃないけど 訳の変わらないことを言って先生を困らせるな。昨日出来たマブダチは分からないだろう俺も分からない。後ろに伸びる山羊より大きくて枝分かれしていく龍のツノはカッコよくて、フリフリと動いている龍の尻尾が可愛い。大人サイズのローブは若干ダボついている、思ったよりも小柄なのでは。

「そうかそうか、猫太お前にマブダチがねぇ……人生わかんないもんだぜ」

「何ジジイみてえなこと言ってんだ」

「学園長と同じように扱わないでくれよ、こう見えて先生まだ29歳よ?」

「うわ若いのかおじさんなのか絶妙なラインだな」

「30代もまだまだお兄さんだよ……いや1年生からしたら20代後半はおじさんおばさんか」

「そもそも大学院を一浪二留してんだからまだまだ新米教師じゃねえか、おじさんじゃねえな」

「やめろやめろバラさないでくれ……」

ってな感じで担任になった29歳の新米教師は、やたらゴロゴロした布袋をとりだす。100円ショップで売ってるビー玉が山ほど入ったあの袋を思い出した。

「今からお前らに心象化け石を配る。これはすべて学園長が魔法をかけていて、一年生が持つ人間に適性のある寮の鍵に化けるんだ」

そんな感じで寮は決められるんだ、確かに自由に決められるなんてのは一言も言ってなかったな。適性云々で決めるのか。手に乗って流れるぐらいの透明なガラス玉のような、まあ石には見えなかった。そもそも心象化け石ってなんだ、石が化けるの?

「ねえねえ化ける石って……」

「ああ。持った人間の心を移す物に変化するんだ、一回変化したら元に戻らないから、あの姿で見るのはレアだぜ。でもこれはジジイが魔法で魔改造してるから寮の鍵にしか化ねえぞ」

やっぱり隣に碓氷峠君がいると安心感が違う。出来ることなら同じ寮になりたいけど、同じ部屋とかになったら……ほっぺめちゃくちゃぷにぷにしてきそう。

「ほら、お前も石1つ待て」

先生に催促されるがまま石を握る。小さいまさしくビー玉を思わせるそれは、透明だったのに少しずつ色が変わっていった。これからこの石はどこか一つの寮へと続く鍵になるのか。どこの寮だろう、個人的に希望している寮というより6年間いても発狂しないぐらい平和で伸び伸び出来て疲れない量が一番理想だ。ちなみに碓氷峠くんは……物凄く俺の方見てくる、自分が持っている石の変化には目も暮れない。いやその、自分の見た方がいいんじゃあないの?

「どうせ俺はユキネコだろうし……」

「あ、もうやったことあるの?」

「碓氷峠の人間はみんなユキネコなんだ」

見てみると確かに碓氷峠くんの石は見る見るうちに持ち手に猫の模様が描かれている水色の石の鍵になっていった。早くない? 俺なんてまだ石が曇ってるだけで色づいてもいないしなんなら鍵の形もないんだけど。

「大体そんなもんだよ、俺の場合は血のせいで決まるのが早いのさ」

あんまりユキネコ寮に入るの好きじゃないのかな……まあ小さい頃から強制的に決まってて、楽しみを奪われたって考えたらそれだけでもこの寮を嫌う理由になるのかもしれない。そう思っているうちにも、俺の鍵は色づいて形も鍵っぽくなっていく。目の前で姿が変わるのは昨夜の変身術を思い出して再びワクワクしてしまった。水色で、持ち手の猫の柄が可愛いおしゃれな鍵に。

「その、ごめん、俺もユキネコみたいだ」

「……俺ユキネコ愛してる」

急な手のひら返しに驚きつつも、元気になってよかったなと淡白に考えてしまっていた。
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