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天国のような地獄の始まり
魔法のリスク
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疲れてしまったのか、随分長い間寝てしまった気がする。そもそもいつから寝たのか分からないぐらいだ。まあその甲斐あってか快眠だった気がする。
「ン……おはよう、よく眠れたか?」
「まあ、いつも通り5、6時間睡眠って感じだけどまあ眠れたけど」
「もっと寝ろよ、ネコの睡眠時間は14時間だぞ」
猫と一緒にすんな。あの後眠れなくて教科書に載ってる魔法を色々試してたら寝るのが遅くなったんだと包み隠さず伝えた、別に悪いことじゃないだろう。すると眠そうにしていた碓氷峠くんが目をパチクリさせる。あれ、ひょっとして何かルール違反だったり?
「何回ぐらい魔法使った?」
「え? ……大体10回ぐらいだな」
「は、10回もか?」
なんだよ文句あんのか。君がいた世界とは違って俺にとって魔法は憧れだったり夢だったり、まあそんなもんだったんだよ。ちょっとやそっと魔法使うぐらい許してくれや。そんな感じで1人プンスカしていたら急に両肩をがっしりと掴まれた。……そんなにダメ?
しかしそんな呑気な俺とは打って変わり、碓氷峠くんは随分と焦っている。あんなにやる気がなさそうで気怠げだったのに一体全体どうしてしまったというんだ。
「すぐにジジイとマリオンさんに見てもらうぞ」
「え、入学式は?ってかマリオンさんって誰だよ」
「そんなん良いからさっさと行くぞ、おらよっこらせっと」
「ちょ、ちょっと!?」
よっこらせとかいうオッサンみたいな掛け声と共にその、横抱きというかお姫様抱っこ状態にされた。なんでこんなに心配されてるんだろう、学園長先生に見てもらうほどの緊急事態なの? そもそもマリオンさんって誰のことだ。情報量が多すぎてついていけない、ついていけなくても碓氷峠くんがお姫様抱っこしてくれるから問題はないけど。問題ないけど問題あるんだ。
……
…………
………………
そのまま今日は入学式のはずだったのに連行されて、お姫様抱っこをやめてもらうことなくいつのまにか校舎内の一室に来てしまった。ベットがいくつかあってあーここが保健室なんだなと思っていたけどなんか見たことのない魔女が薬作ってそうな大釜とかがあってやっぱ魔法学校の保健室だなと感心した。
「んだよ猫太ァ、初日にサボりなんざふてえ真似を……なに可愛い男連れてきてんだ」
「マリオンさんコイツのマナを診て欲しいんだ、10回も魔法を使いやがって……」
「は? 新入生が10回もだぁ!? ……仕方ねえな、そこに座らせろ」
急に荒々しい人が来たな。身長も高くてちょっと怖い、あと俺を一眼見て可愛いって言ったのもちょっと怖い。お姫様抱っこしている碓氷峠くんに恥ずかしいながら腕を回してしまった。でも俺の抵抗は虚しく診察するときに座りそうな患者用の椅子に無理やり座らされた。
「あの、一体どうすれば」
「……ちょっとコイツを咥えてくれ」
「な、ナニをですか!?」
「コレをだ」
この学園にいる人はどこかおかしい。もっというと同じ男の子相手に対する対応というんだろうか、元の世界では可愛いなんて低学年の時にちょっぴり言われただけだ。それなのにここではもう3回も言われている……警戒してしまった、ごめんなさい。
咥えてと言われたソレは体温計というか、温度計みたいだ。使ったことないけど昔の体温計ってあんなのだったって本で読んだことがある。数字が出ない感じの、赤い水が上に上がっていく体温計だ。でも肝心の水は赤じゃなくて青色。
「えっと……あ、あーん」
「あーん……」
「なんでいうんだよ、可愛いなァ」
ほらやっぱり可愛いっていうんだもん。なんなんだコイツらは、変なのにも限度がある。あと結局コレはなんなの。
ちょっとの間待つと、咥えている反対側の先っぽからシューっと湯気が噴き出る。焦る暇もなくもう大丈夫だと言われて口から外したけど、多分平熱だと思う。
「……なあさ、本当に魔法使ったんか?」
「は、はい。教科書にあるのをちょっと」
「だとしたら、なんで体内マナの消耗がこんなに少ないんだァ?」
そう言われてその体温計を見せられた。体内マナってなんだかっこいいな、魔法の世界でだけ通用する言葉って感じがする羨ましい。
体内マナ 1950/2100
「体内マナってあの、なんだっけ、自身のマナと杖のマナを同調させるってやつですか?」
「そうだァ、ちゃんと教科書読んで魔法使ったんだな。1年生の平均は2000マナぐらいだよ」
「つ、つまりド標準?」
「もともと身体の成長と共にマナは増えていくし、これから訓練で伸ばせるからな。1年生の頃のマナなんて目安にもならねえ」
マナとは俗に魔力を作るための材料、杖と魔法使いの2つのマナが必要で、使うたびに消えていくものらしい。マナがゼロになると健康に関わると言われた時はそりゃまあ震え上がったが、実のところ全然減っていない。10回使ってコレって大丈夫なんじゃぁ……
「いや、本当ならゼロに近くなっててもおかしくない」
「ああ。何が原因だ、魔法の使い方か、元住んでた世界のせいか、もしくは体質、あとは……杖だな」
「えっと……杖ならここに」
杖を差し出すと、マリオンさんにさっと奪われた。入学早々というか入学式にも出ていないのに、なんだろうこの緊張感。
「ン……おはよう、よく眠れたか?」
「まあ、いつも通り5、6時間睡眠って感じだけどまあ眠れたけど」
「もっと寝ろよ、ネコの睡眠時間は14時間だぞ」
猫と一緒にすんな。あの後眠れなくて教科書に載ってる魔法を色々試してたら寝るのが遅くなったんだと包み隠さず伝えた、別に悪いことじゃないだろう。すると眠そうにしていた碓氷峠くんが目をパチクリさせる。あれ、ひょっとして何かルール違反だったり?
「何回ぐらい魔法使った?」
「え? ……大体10回ぐらいだな」
「は、10回もか?」
なんだよ文句あんのか。君がいた世界とは違って俺にとって魔法は憧れだったり夢だったり、まあそんなもんだったんだよ。ちょっとやそっと魔法使うぐらい許してくれや。そんな感じで1人プンスカしていたら急に両肩をがっしりと掴まれた。……そんなにダメ?
しかしそんな呑気な俺とは打って変わり、碓氷峠くんは随分と焦っている。あんなにやる気がなさそうで気怠げだったのに一体全体どうしてしまったというんだ。
「すぐにジジイとマリオンさんに見てもらうぞ」
「え、入学式は?ってかマリオンさんって誰だよ」
「そんなん良いからさっさと行くぞ、おらよっこらせっと」
「ちょ、ちょっと!?」
よっこらせとかいうオッサンみたいな掛け声と共にその、横抱きというかお姫様抱っこ状態にされた。なんでこんなに心配されてるんだろう、学園長先生に見てもらうほどの緊急事態なの? そもそもマリオンさんって誰のことだ。情報量が多すぎてついていけない、ついていけなくても碓氷峠くんがお姫様抱っこしてくれるから問題はないけど。問題ないけど問題あるんだ。
……
…………
………………
そのまま今日は入学式のはずだったのに連行されて、お姫様抱っこをやめてもらうことなくいつのまにか校舎内の一室に来てしまった。ベットがいくつかあってあーここが保健室なんだなと思っていたけどなんか見たことのない魔女が薬作ってそうな大釜とかがあってやっぱ魔法学校の保健室だなと感心した。
「んだよ猫太ァ、初日にサボりなんざふてえ真似を……なに可愛い男連れてきてんだ」
「マリオンさんコイツのマナを診て欲しいんだ、10回も魔法を使いやがって……」
「は? 新入生が10回もだぁ!? ……仕方ねえな、そこに座らせろ」
急に荒々しい人が来たな。身長も高くてちょっと怖い、あと俺を一眼見て可愛いって言ったのもちょっと怖い。お姫様抱っこしている碓氷峠くんに恥ずかしいながら腕を回してしまった。でも俺の抵抗は虚しく診察するときに座りそうな患者用の椅子に無理やり座らされた。
「あの、一体どうすれば」
「……ちょっとコイツを咥えてくれ」
「な、ナニをですか!?」
「コレをだ」
この学園にいる人はどこかおかしい。もっというと同じ男の子相手に対する対応というんだろうか、元の世界では可愛いなんて低学年の時にちょっぴり言われただけだ。それなのにここではもう3回も言われている……警戒してしまった、ごめんなさい。
咥えてと言われたソレは体温計というか、温度計みたいだ。使ったことないけど昔の体温計ってあんなのだったって本で読んだことがある。数字が出ない感じの、赤い水が上に上がっていく体温計だ。でも肝心の水は赤じゃなくて青色。
「えっと……あ、あーん」
「あーん……」
「なんでいうんだよ、可愛いなァ」
ほらやっぱり可愛いっていうんだもん。なんなんだコイツらは、変なのにも限度がある。あと結局コレはなんなの。
ちょっとの間待つと、咥えている反対側の先っぽからシューっと湯気が噴き出る。焦る暇もなくもう大丈夫だと言われて口から外したけど、多分平熱だと思う。
「……なあさ、本当に魔法使ったんか?」
「は、はい。教科書にあるのをちょっと」
「だとしたら、なんで体内マナの消耗がこんなに少ないんだァ?」
そう言われてその体温計を見せられた。体内マナってなんだかっこいいな、魔法の世界でだけ通用する言葉って感じがする羨ましい。
体内マナ 1950/2100
「体内マナってあの、なんだっけ、自身のマナと杖のマナを同調させるってやつですか?」
「そうだァ、ちゃんと教科書読んで魔法使ったんだな。1年生の平均は2000マナぐらいだよ」
「つ、つまりド標準?」
「もともと身体の成長と共にマナは増えていくし、これから訓練で伸ばせるからな。1年生の頃のマナなんて目安にもならねえ」
マナとは俗に魔力を作るための材料、杖と魔法使いの2つのマナが必要で、使うたびに消えていくものらしい。マナがゼロになると健康に関わると言われた時はそりゃまあ震え上がったが、実のところ全然減っていない。10回使ってコレって大丈夫なんじゃぁ……
「いや、本当ならゼロに近くなっててもおかしくない」
「ああ。何が原因だ、魔法の使い方か、元住んでた世界のせいか、もしくは体質、あとは……杖だな」
「えっと……杖ならここに」
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