5 / 13
好奇心は猫をも殺す 慎太郎side
天国に近い地獄
しおりを挟む
その後テンションの高い鎹さんから杖のケア用品なんかもあらかた貰って、店を出る時も満面の笑みで手を振られた。杖を握ったままどうすることもできない俺を碓氷峠くんが手を引いてくれる。ほっぺたの次は手だ、白くて柔らかい手だなってめちゃくちゃベタ褒めしてくる。そんなに俺ってどこもかしこも柔らかいんかな……そんなこと言われたことないから信じがたいってのが本音だ。
…………
………………
……………………
「なるほど、それは良かったですね」
「で、でも俺が杖に選ばれたところで……」
「良かったなジジイ。俺の慎太郎は才能がありそうだ」
理事長室と書かれた札が飾ってあるドアの先に、学園長はいた。どうやら学園長と理事長と兼任しているみたいで、ネコなのに思ったよりも多忙みたいだ。それをいうなら碓氷峠くんも黒い耳と尻尾が生えてるし、動物みたいな人間とか人間みたいな動物って魔法の世界だとよくあるのかな……
それにしても俺はいつから碓氷峠くんのものになったんだろう。今度は頭を撫で撫でしてくる、ひゃっして頭も柔らかいのか……?
「この調子だと問題なく卒業できそうですね」
「明日から同じ学校の生徒か、楽しみだな」
……?? いや元の世界に返してくれる約束はどうなったの? 第一許可もないし、杖しか持ってないのに学校なんて通えるわけないじゃん、ないよね?
「私はこの魔ヶ峰学園の学園長にして理事長です。生徒の入学許可証なんてすぐに作れますよ、それに君が買ってきてくれた教科書や箒があれば問題なく学習することができます」
その時、鎹さんが言っていた一年生セットという言葉を思い出した。
「じゃあ俺に買い物行かせたのってもしかしてそれが理由、ってか最初からそのつもりで?」
「今更かよ。お前案外詐欺とかに引っかかりやすいタイプなんだな」
「すみませんね。貴方のことをまだまだ調べなくてはいけません、その白い宝石が埋め込まれていたという本についても……なぜあんなものが科学界に……」
学園長は1人ぶつぶつ喋り始めた、何故か今日は碓氷峠くんと一緒に学園長の部屋で寝泊まりすることになった。いやいや、納得できないだろう。
魔法オタクとしては魔法学校なんて夢のようだ、しかもそこに自分通うなんて信じがたいしその分嬉しい。でも俺はその、不登校児だぞ。学校なんて2年ぐらいずっと行っていないし図書館で永遠と本を読んでいただけだ、だいたい卒業まで通うのか? 何年間? いやそもそも家族になんて説明すれば……
「この学校は6年制です。貴方の世界の言葉で話しますと、中学生から高校生までの6年間で、魔法を学び立派な大魔法使いを目指すというわけですな」
「6年間も!? その、学校って家に帰えらないと登校できないんじゃ……」
「我が魔ヶ峰は全寮制、つまりすべての生徒は寮で生活するのを義務付けております。のでわざわざ通学するという手間はありませんよ」
どうしようどんどん外堀を埋められていく。いくら魔法が学べるとはいえ6年間も学校に通う、いやそれどころか学校に居続けなければいけないのか? この俺が?
毎日10時起きで朝ごはんも食べずにふらっと図書館まで行って、何も食べることなく閉館時間の夜9時まで入り浸り、帰ってきても親にただいまの一言も言わずに再び自室に帰って借りた魔法に関する本を読む、真夜2時頃に息抜きとして人知れず1日分のご飯を詰め込み、そして深夜4時頃に寝る。そしてまた10時に起きる。図書館に行かない日は一歩たりとも外に出ない、そんな我ながら不摂生にも限度がある生活を送ってきた俺に今更学校に行けと?
「まあまあ人生色々経験しておくものですよ、若い頃の苦労は買ってでもしろと言いますし」
「同じクラスになれるといいな……ウチの学校四大魔法学校のくせに生徒数少なくってしかも少人数制だから、一緒のクラスになれないかも……おいジジイ」
「碓氷峠くん、流石にそこまで手は回しませんよ」
小さく舌打ちが聞こえた。いいや小さくても学園長に聞こえるようにしたんだろうな、二足歩行のネコと、ちょっと変わってでかいネコみたいな碓氷峠くん、そして特にネコ成分はない(強いて言うなら脱走癖があるぐらい)俺。今更拒否権はなく、そもそも元の世界に帰ることすらもできず、魔法が学べる天国のような地獄のスクールライフが始まる。
…………
………………
……………………
「なるほど、それは良かったですね」
「で、でも俺が杖に選ばれたところで……」
「良かったなジジイ。俺の慎太郎は才能がありそうだ」
理事長室と書かれた札が飾ってあるドアの先に、学園長はいた。どうやら学園長と理事長と兼任しているみたいで、ネコなのに思ったよりも多忙みたいだ。それをいうなら碓氷峠くんも黒い耳と尻尾が生えてるし、動物みたいな人間とか人間みたいな動物って魔法の世界だとよくあるのかな……
それにしても俺はいつから碓氷峠くんのものになったんだろう。今度は頭を撫で撫でしてくる、ひゃっして頭も柔らかいのか……?
「この調子だと問題なく卒業できそうですね」
「明日から同じ学校の生徒か、楽しみだな」
……?? いや元の世界に返してくれる約束はどうなったの? 第一許可もないし、杖しか持ってないのに学校なんて通えるわけないじゃん、ないよね?
「私はこの魔ヶ峰学園の学園長にして理事長です。生徒の入学許可証なんてすぐに作れますよ、それに君が買ってきてくれた教科書や箒があれば問題なく学習することができます」
その時、鎹さんが言っていた一年生セットという言葉を思い出した。
「じゃあ俺に買い物行かせたのってもしかしてそれが理由、ってか最初からそのつもりで?」
「今更かよ。お前案外詐欺とかに引っかかりやすいタイプなんだな」
「すみませんね。貴方のことをまだまだ調べなくてはいけません、その白い宝石が埋め込まれていたという本についても……なぜあんなものが科学界に……」
学園長は1人ぶつぶつ喋り始めた、何故か今日は碓氷峠くんと一緒に学園長の部屋で寝泊まりすることになった。いやいや、納得できないだろう。
魔法オタクとしては魔法学校なんて夢のようだ、しかもそこに自分通うなんて信じがたいしその分嬉しい。でも俺はその、不登校児だぞ。学校なんて2年ぐらいずっと行っていないし図書館で永遠と本を読んでいただけだ、だいたい卒業まで通うのか? 何年間? いやそもそも家族になんて説明すれば……
「この学校は6年制です。貴方の世界の言葉で話しますと、中学生から高校生までの6年間で、魔法を学び立派な大魔法使いを目指すというわけですな」
「6年間も!? その、学校って家に帰えらないと登校できないんじゃ……」
「我が魔ヶ峰は全寮制、つまりすべての生徒は寮で生活するのを義務付けております。のでわざわざ通学するという手間はありませんよ」
どうしようどんどん外堀を埋められていく。いくら魔法が学べるとはいえ6年間も学校に通う、いやそれどころか学校に居続けなければいけないのか? この俺が?
毎日10時起きで朝ごはんも食べずにふらっと図書館まで行って、何も食べることなく閉館時間の夜9時まで入り浸り、帰ってきても親にただいまの一言も言わずに再び自室に帰って借りた魔法に関する本を読む、真夜2時頃に息抜きとして人知れず1日分のご飯を詰め込み、そして深夜4時頃に寝る。そしてまた10時に起きる。図書館に行かない日は一歩たりとも外に出ない、そんな我ながら不摂生にも限度がある生活を送ってきた俺に今更学校に行けと?
「まあまあ人生色々経験しておくものですよ、若い頃の苦労は買ってでもしろと言いますし」
「同じクラスになれるといいな……ウチの学校四大魔法学校のくせに生徒数少なくってしかも少人数制だから、一緒のクラスになれないかも……おいジジイ」
「碓氷峠くん、流石にそこまで手は回しませんよ」
小さく舌打ちが聞こえた。いいや小さくても学園長に聞こえるようにしたんだろうな、二足歩行のネコと、ちょっと変わってでかいネコみたいな碓氷峠くん、そして特にネコ成分はない(強いて言うなら脱走癖があるぐらい)俺。今更拒否権はなく、そもそも元の世界に帰ることすらもできず、魔法が学べる天国のような地獄のスクールライフが始まる。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話

僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。


過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる