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好奇心は猫をも殺す 慎太郎side
選ぶ杖
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「その、碓氷峠くんは杖持ってるの?」
「魔法使いなら誰でも持ってる。俺はまだ違うけど……生徒も持ってる」
そう言いながら見せてくれた、20センチぐらいの杖。持ち手が銃と同じようになってて、先端に行くにつれ細くなるそれはまるで小型のマスケット銃みたいだ。かっこいいなぁやっぱりそういうのがいいんかな?
「この杖はちょっと前にウチで買ってくれたのよ、変身術に最適なんだから!」
「……あん時はありがとうございます」
変身術に最適ってそういうのもあるのか。にわかでしか俺が選んでいいものじゃあないだろう、こういうのってどれが一番いいんだろう、ちょっと聞いてみるか。
「お前がビビッときたのがいいと思う」
「ビビって具体的にどんなん?」
「なんていうか、これがいいって直感的に思うの」
碓氷峠くんの説明が下手くそなのかそもそも杖選びってのはそういうものなのか、何も分からない。びっくりするぐらい見当もつかない。兎に角、色んな杖を見てみよう……握るのは怖いから見るだけで。持ち手のデザインか、それとも使いやすさか、検討のつかないまま適当に指差して鎹さんに聞いてみることしかできない。
「これはなんですか、なんか持ち手が青い宝石になっててカッコいいですね」
「ありがとー! これ私のおすすめよ、青くてかっこいいでしょ、光を操る魔法にもってこいなの!」
うーむ、光を操る魔法ってのがどんなのかがよく分からないな……じゃあこれはなんだろう、今度は持ち手が禍々しい、ドクロがついているそれを指差した。
「それもオススメよ! 退魔法に最適な杖なの、デザインも厨二心をくすぐるでしょ?」
退魔ってなんだろう、もっというと厨二っていうのもよく分からないな。なんのことを言ってるんだろう。……やっぱりこういうのは普通の人が決めて書き方じゃあない気がするんだ……
俺には決められませんってきちんと言おうとしたら、ふと一本の杖が目に入った。持ち手はツルが絡まっているみたいに彫られていてツヤはない、デザインのせいか少し握りにくそうだ。それなりに長くて小さい俺の手には余るだろう、それでも気になって仕方がない。あれだけ握るのを怖がりながら嫌がっていたくせに、気が付いたら握ってたもんだから驚いた。具体的に俺が一番驚いた。
「あの、この杖は一体……」
「……この杖に目をつける子は初めてね。植物がモチーフなんだけど、他のに比べて地味だし、何より大きくて殆どの新米魔法使いからは握りにくそうだって言われているの。ツヤもつけてないからかしら、こだわるベテラン魔法使いにも手に付けて貰えなくて、多分この店じゃあ最古参の杖よ」
つまり売れ残りってことか。鎹さん曰く杖は年長になればなるほど強い魔法が放てるけど、その分強かったり経験豊富じゃないと扱えないらしい。ってことはこの杖も、俺なんかに握られたんじゃあ不服だろうな。名残惜しい謎の感情をグッと堪えて元の場所に戻そうとしたら、今度はこの杖がなんだか熱を帯び始めた、どんどん温かくなってるけど、不思議と熱くはならない。
「ど、どうしよう、杖壊しちゃったかも知れません。なんか温かくなり始めて……」
「あったかく? ……ちょっと見せて」
「おい、それホントかよ」
2人とも信じられないような目をしてくる。やっぱり杖の壊しちゃったのかな、弁償っていくらぐらいなんだろう、どうしようせっかくいつかは才能のある魔法使いに渡るはずだったのに……
しかし鎹さんはその杖に少しだけ触れて、再び俺の手に戻してきた。こ、この杖はどうなるんですか?
「____これはあくまで都市伝説っていうか、古い杖や力の強い杖は持ち主を選ぶことがあるらしいわ。よっぽどスゴい杖じゃないとならないし、厳しい判断基準を乗り越えて選ばれる魔法使いも一握りなの」
「はぁ……」
「すげーな、杖が持ち主を選ぶと握ったところがあったかくなるんだってよ。あとその人以外がその杖で魔法を使おうとすると跳ね返ってくるんだとよ」
……ん? ごめんそれは何が言いたいのかわからない。いいや意味はわかってるんだけども、頭がそれを受け入れるのを嫌がってるというか、ごめん何が言いたいの?
「その杖のお金はいらないわ、いいもの見させてもらったしね。さあさあ受け取ってちょうだい!」
「え? いやその、俺魔法は」
「よかったな。こんなに古い杖に選ばれるなんて才能があるんだろう……可愛いし」
……なんで俺の杖を買ってるんだ。選ばれたのは嬉しいけど、でも俺ただの魔法オタクで肝心の魔法は全然使えないんだ。
それにしても碓氷峠くんはまだ俺に対して可愛いとか思ってるのか。こらほっぺたをぷにぷにするな、昔から弾力が自慢だったがここまで触られたのは初めてだ。ほっぺたが真っ赤になりそうなぐらいぷにぷにや引っ張りを受けている、そんなに俺のは触ってて楽しいのか?
「ほっぺ柔らかくて可愛いわね、触り心地好きなの?」
「……ウッス。めっちゃ柔らかいんですよ」
……なんかもう、手に負えない。
「魔法使いなら誰でも持ってる。俺はまだ違うけど……生徒も持ってる」
そう言いながら見せてくれた、20センチぐらいの杖。持ち手が銃と同じようになってて、先端に行くにつれ細くなるそれはまるで小型のマスケット銃みたいだ。かっこいいなぁやっぱりそういうのがいいんかな?
「この杖はちょっと前にウチで買ってくれたのよ、変身術に最適なんだから!」
「……あん時はありがとうございます」
変身術に最適ってそういうのもあるのか。にわかでしか俺が選んでいいものじゃあないだろう、こういうのってどれが一番いいんだろう、ちょっと聞いてみるか。
「お前がビビッときたのがいいと思う」
「ビビって具体的にどんなん?」
「なんていうか、これがいいって直感的に思うの」
碓氷峠くんの説明が下手くそなのかそもそも杖選びってのはそういうものなのか、何も分からない。びっくりするぐらい見当もつかない。兎に角、色んな杖を見てみよう……握るのは怖いから見るだけで。持ち手のデザインか、それとも使いやすさか、検討のつかないまま適当に指差して鎹さんに聞いてみることしかできない。
「これはなんですか、なんか持ち手が青い宝石になっててカッコいいですね」
「ありがとー! これ私のおすすめよ、青くてかっこいいでしょ、光を操る魔法にもってこいなの!」
うーむ、光を操る魔法ってのがどんなのかがよく分からないな……じゃあこれはなんだろう、今度は持ち手が禍々しい、ドクロがついているそれを指差した。
「それもオススメよ! 退魔法に最適な杖なの、デザインも厨二心をくすぐるでしょ?」
退魔ってなんだろう、もっというと厨二っていうのもよく分からないな。なんのことを言ってるんだろう。……やっぱりこういうのは普通の人が決めて書き方じゃあない気がするんだ……
俺には決められませんってきちんと言おうとしたら、ふと一本の杖が目に入った。持ち手はツルが絡まっているみたいに彫られていてツヤはない、デザインのせいか少し握りにくそうだ。それなりに長くて小さい俺の手には余るだろう、それでも気になって仕方がない。あれだけ握るのを怖がりながら嫌がっていたくせに、気が付いたら握ってたもんだから驚いた。具体的に俺が一番驚いた。
「あの、この杖は一体……」
「……この杖に目をつける子は初めてね。植物がモチーフなんだけど、他のに比べて地味だし、何より大きくて殆どの新米魔法使いからは握りにくそうだって言われているの。ツヤもつけてないからかしら、こだわるベテラン魔法使いにも手に付けて貰えなくて、多分この店じゃあ最古参の杖よ」
つまり売れ残りってことか。鎹さん曰く杖は年長になればなるほど強い魔法が放てるけど、その分強かったり経験豊富じゃないと扱えないらしい。ってことはこの杖も、俺なんかに握られたんじゃあ不服だろうな。名残惜しい謎の感情をグッと堪えて元の場所に戻そうとしたら、今度はこの杖がなんだか熱を帯び始めた、どんどん温かくなってるけど、不思議と熱くはならない。
「ど、どうしよう、杖壊しちゃったかも知れません。なんか温かくなり始めて……」
「あったかく? ……ちょっと見せて」
「おい、それホントかよ」
2人とも信じられないような目をしてくる。やっぱり杖の壊しちゃったのかな、弁償っていくらぐらいなんだろう、どうしようせっかくいつかは才能のある魔法使いに渡るはずだったのに……
しかし鎹さんはその杖に少しだけ触れて、再び俺の手に戻してきた。こ、この杖はどうなるんですか?
「____これはあくまで都市伝説っていうか、古い杖や力の強い杖は持ち主を選ぶことがあるらしいわ。よっぽどスゴい杖じゃないとならないし、厳しい判断基準を乗り越えて選ばれる魔法使いも一握りなの」
「はぁ……」
「すげーな、杖が持ち主を選ぶと握ったところがあったかくなるんだってよ。あとその人以外がその杖で魔法を使おうとすると跳ね返ってくるんだとよ」
……ん? ごめんそれは何が言いたいのかわからない。いいや意味はわかってるんだけども、頭がそれを受け入れるのを嫌がってるというか、ごめん何が言いたいの?
「その杖のお金はいらないわ、いいもの見させてもらったしね。さあさあ受け取ってちょうだい!」
「え? いやその、俺魔法は」
「よかったな。こんなに古い杖に選ばれるなんて才能があるんだろう……可愛いし」
……なんで俺の杖を買ってるんだ。選ばれたのは嬉しいけど、でも俺ただの魔法オタクで肝心の魔法は全然使えないんだ。
それにしても碓氷峠くんはまだ俺に対して可愛いとか思ってるのか。こらほっぺたをぷにぷにするな、昔から弾力が自慢だったがここまで触られたのは初めてだ。ほっぺたが真っ赤になりそうなぐらいぷにぷにや引っ張りを受けている、そんなに俺のは触ってて楽しいのか?
「ほっぺ柔らかくて可愛いわね、触り心地好きなの?」
「……ウッス。めっちゃ柔らかいんですよ」
……なんかもう、手に負えない。
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