自分の好奇心が原因で魔法学校に来たんだから卒業ぐらいしてから帰れ

荒瀬竜巻

文字の大きさ
上 下
4 / 13
好奇心は猫をも殺す 慎太郎side

選ぶ杖

しおりを挟む
「その、碓氷峠くんは杖持ってるの?」

「魔法使いなら誰でも持ってる。俺はまだ違うけど……生徒も持ってる」

そう言いながら見せてくれた、20センチぐらいの杖。持ち手が銃と同じようになってて、先端に行くにつれ細くなるそれはまるで小型のマスケット銃みたいだ。かっこいいなぁやっぱりそういうのがいいんかな?

「この杖はちょっと前にウチで買ってくれたのよ、変身術に最適なんだから!」

「……あん時はありがとうございます」

変身術に最適ってそういうのもあるのか。にわかでしか俺が選んでいいものじゃあないだろう、こういうのってどれが一番いいんだろう、ちょっと聞いてみるか。

「お前がビビッときたのがいいと思う」

「ビビって具体的にどんなん?」

「なんていうか、これがいいって直感的に思うの」

碓氷峠くんの説明が下手くそなのかそもそも杖選びってのはそういうものなのか、何も分からない。びっくりするぐらい見当もつかない。兎に角、色んな杖を見てみよう……握るのは怖いから見るだけで。持ち手のデザインか、それとも使いやすさか、検討のつかないまま適当に指差して鎹さんに聞いてみることしかできない。

「これはなんですか、なんか持ち手が青い宝石になっててカッコいいですね」

「ありがとー! これ私のおすすめよ、青くてかっこいいでしょ、光を操る魔法にもってこいなの!」

うーむ、光を操る魔法ってのがどんなのかがよく分からないな……じゃあこれはなんだろう、今度は持ち手が禍々しい、ドクロがついているそれを指差した。

「それもオススメよ! 退魔法に最適な杖なの、デザインも厨二心をくすぐるでしょ?」

退魔ってなんだろう、もっというと厨二っていうのもよく分からないな。なんのことを言ってるんだろう。……やっぱりこういうのは普通の人が決めて書き方じゃあない気がするんだ……

俺には決められませんってきちんと言おうとしたら、ふと一本の杖が目に入った。持ち手はツルが絡まっているみたいに彫られていてツヤはない、デザインのせいか少し握りにくそうだ。それなりに長くて小さい俺の手には余るだろう、それでも気になって仕方がない。あれだけ握るのを怖がりながら嫌がっていたくせに、気が付いたら握ってたもんだから驚いた。具体的に俺が一番驚いた。

「あの、この杖は一体……」

「……この杖に目をつける子は初めてね。植物がモチーフなんだけど、他のに比べて地味だし、何より大きくて殆どの新米魔法使いからは握りにくそうだって言われているの。ツヤもつけてないからかしら、こだわるベテラン魔法使いにも手に付けて貰えなくて、多分この店じゃあ最古参の杖よ」

つまり売れ残りってことか。鎹さん曰く杖は年長になればなるほど強い魔法が放てるけど、その分強かったり経験豊富じゃないと扱えないらしい。ってことはこの杖も、俺なんかに握られたんじゃあ不服だろうな。名残惜しい謎の感情をグッと堪えて元の場所に戻そうとしたら、今度はこの杖がなんだか熱を帯び始めた、どんどん温かくなってるけど、不思議と熱くはならない。

「ど、どうしよう、杖壊しちゃったかも知れません。なんか温かくなり始めて……」

「あったかく? ……ちょっと見せて」

「おい、それホントかよ」

2人とも信じられないような目をしてくる。やっぱり杖の壊しちゃったのかな、弁償っていくらぐらいなんだろう、どうしようせっかくいつかは才能のある魔法使いに渡るはずだったのに……

しかし鎹さんはその杖に少しだけ触れて、再び俺の手に戻してきた。こ、この杖はどうなるんですか?

「____これはあくまで都市伝説っていうか、古い杖や力の強い杖は持ち主を選ぶことがあるらしいわ。よっぽどスゴい杖じゃないとならないし、厳しい判断基準を乗り越えて選ばれる魔法使いも一握りなの」

「はぁ……」

「すげーな、杖が持ち主を選ぶと握ったところがあったかくなるんだってよ。あとその人以外がその杖で魔法を使おうとすると跳ね返ってくるんだとよ」

……ん? ごめんそれは何が言いたいのかわからない。いいや意味はわかってるんだけども、頭がそれを受け入れるのを嫌がってるというか、ごめん何が言いたいの?

「その杖のお金はいらないわ、いいもの見させてもらったしね。さあさあ受け取ってちょうだい!」

「え? いやその、俺魔法は」

「よかったな。こんなに古い杖に選ばれるなんて才能があるんだろう……可愛いし」

……なんで俺の杖を買ってるんだ。選ばれたのは嬉しいけど、でも俺ただの魔法オタクで肝心の魔法は全然使えないんだ。

それにしても碓氷峠くんはまだ俺に対して可愛いとか思ってるのか。こらほっぺたをぷにぷにするな、昔から弾力が自慢だったがここまで触られたのは初めてだ。ほっぺたが真っ赤になりそうなぐらいぷにぷにや引っ張りを受けている、そんなに俺のは触ってて楽しいのか?

「ほっぺ柔らかくて可愛いわね、触り心地好きなの?」

「……ウッス。めっちゃ柔らかいんですよ」

……なんかもう、手に負えない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

山奥のとある全寮制の学園にて

モコ
BL
山奥にある全寮制の学園に、珍しい季節に転校してきた1人の生徒がいた。 彼によって学園内に嵐が巻き起こされる。 これは甘やかされて育った彼やそれを取り巻く人々が学園での出来事を経て成長する物語である。 王道学園の設定を少し変更して書いています。 初めて小説を書くため至らないところがあるかと思いますがよろしくお願いいたします。 他サイトでも投稿しております。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

もういいや

ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが…… まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん! しかも男子校かよ……… ーーーーーーーー 亀更新です☆期待しないでください☆

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

ただの悪役令息の従者です

白鳩 唯斗
BL
BLゲームの推し悪役令息の従者に転生した主人公のお話。 ※たまに少しグロい描写があるかもしれません。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

処理中です...