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理性を失う狼
お前は友達
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「ジョセフ……!? 天使様!!!」
「うわ、どうなってんだこりゃ」
「えっと……ごめんねジョセフくん。勝手に入る気はなかったんだけど、ドアが急に開いてさ…….」
既に人間形態になっていたおかげか3人にウォーウルフの事はバレてないみたいだ。よかった。ウォーウルフは本来絶滅したことになってるから、発見されたら大問題だ。スターはハジメが俺の腕にいることに大きく混乱し、JBは意外と冷静に状況を把握しようと質問を投げかける。アナはどうしてドアが勝手に開いたんだろうと比較的明後日の方角にものを考えていた、たぶんハジメの事をあえて触れないために。
「ごめん、みんな。全部俺のせいだから、ハジメは悪く無いから……」
お前らの顔をまともに見ることはできなかった。ハジメの方ばかりを見る。……でもきっとハジメだって、目が覚めたら俺を怖がるんだ。あの小さくとも勇ましい戦士のような真っ直ぐな瞳は、もう二度と俺を捉えてくれないのだろう。
「はいはい。そういうのはハジメの目が覚めたらゆっくり話し合おうぜ。お前がそういうことしないのわかってっからよ」
「えっと……お水と、ご飯が必要? いやその前にお風呂だよね」
「シャワールームは……高級部屋じゃないからないのか。そもそも2人で使うには狭いな……アナは風呂場に許可通して天使様とジョセフを連れて行ってくれ。JBお前は俺と一緒に部屋を片付けるぞ!」
しかし俺が想像していた手厳しい対応とは打って変わって、アイツらの対応は実直でいて優しいものだった。いやいや、俺はハジメを犯したんだぞ、スターに助けを求めていたあのハジメを。あ、あれだろ……浮気だし、強姦だし……公序良俗? 的に駄目なやつだろ。ああ、わかった。みんなハジメに気を遣ってるんだ、優しくて良い奴ばかりだもんな……。
「ああ……本当に良かったな、ハジメ……」
「……んー……」
抱きかかえていたハジメが、パチリと目を覚ました。俺はそれを見てホッとする反面、何を言われるのだろうかと戦々恐々としていた。最悪暴言だけではなく拳か足が飛んでくる。しかしそんな気持ちとは裏腹に、俺を目に入れた瞬間ホッとしたように顔を埋めた。
「よかった……ちゃんとジョセフだぁ」
「え」
ハジメはしっかりと俺を抱きしめて、うわ言のようにジョセフだ、ちゃんといる、とか呟いていた。怒ってないのか。確かにハジメは口は悪いけどなんだかんだ優しい所はあるけれど、それとこれとは話は別だ。こういう時はまず罵られるものだと思ってたんだが……。
「……心配したんだぞ」
小さな小さな、俺にしか聞こえない音声で繰り出された照れ屋なアイツらしい気遣い。酷く救われた気持ちになって、いつの間にか一粒の涙が溢れ出た。
「お、おい、大丈夫かジョセフ」
「天使様! お目覚めになられたのですね」
「うぇ!? お前らいつの間に!」
本当に俺しか目に入ってなかったみたいで、スター達に酷く驚いていた。ついでに自分がベタベタかつ全裸だということにも気付いたようだ。それでも3人から身を隠すために更に俺に密着されたもんだから心臓が飛び出るかと思った。
「ギャー!やべ! 多分俺めっちゃ変態に思われるわジョセフ悪いけどお前ちょっと壁になってくれ」
「わっわわわかった」
「な、何がどうなってらっしゃるんですか……」
「ちょっとだけ仲良くなってる……?」
ハジメは盛りのついた猿……もといファンが聞いたら発狂しそうな程可愛らしい悲鳴をあげ、全裸がバレないように隠しつつ慌てふためいている。その動きは小動物そのもので、なんだか微笑ましい。それだけでなく俺の肩をしっかり掴んで離さないのもまた、庇護欲をそそった。
「ぶぇくし」
「はいはい2人とも、いい加減シャワー浴びろ」
タオルを上から掛けられ、わちゃわちゃのなか風呂へと連行されていく俺とハジメ。俺はその間ももう大丈夫なのかとかバレずに済んだのかとか、本当に俺を心配してくれていたんだとわかって胸が暖かくなる。……やっぱり俺には勿体なさ過ぎる奴だな、ハジメは。そうだ、これだけは聞いておかなくては、俺は少し疲れ気味のハジメに質問をした。
「……なんで、怒らない? なんで、バラさない?」
「ん? なんでって、そもそも鍵かけてる部屋に勝手に入ってきたのは俺だし……お前には恩もあるし」
「……恩?」
「昼間のアレだよ。お前が作ってくれたハンデがなきゃ俺は快楽落ちコースだったからな」
……そんな、そんな些細な事を恩だと思ってくれているのか。そんなの大した事じゃないと言おうとしたところで、ハジメがもう一声お出ししてくる。
「そ、それに……お前のこと、いやお前らの事、一応友達だって思ってたり……」
……また一つ、ハジメへの信頼と愛しさが募る。顔を赤く染めながらも俺を友達だと言いきってくれた。今まで大人しいとか、静かだとかそんな評価しかされずに流されてきた俺を、コイツは受け入れてくれたのだ。それがたまらなく嬉しかった。
でも、まだ友達か。__あんな事しておいて友達……とはスターとの関係を見た後だと妙な納得感がある。多分友達との距離の取り方を把握してないんだろう、俺と同じで。友達は別にセックスとかしないしこんなベタベタな状況で友達宣言なんてしないから……まあ俺も初めての友達だし偉そうなこと言えねえけど。
これから2人で色々歩み寄って行かなくては、そしてあわよくば……というのは卑怯かな。
「うわ、どうなってんだこりゃ」
「えっと……ごめんねジョセフくん。勝手に入る気はなかったんだけど、ドアが急に開いてさ…….」
既に人間形態になっていたおかげか3人にウォーウルフの事はバレてないみたいだ。よかった。ウォーウルフは本来絶滅したことになってるから、発見されたら大問題だ。スターはハジメが俺の腕にいることに大きく混乱し、JBは意外と冷静に状況を把握しようと質問を投げかける。アナはどうしてドアが勝手に開いたんだろうと比較的明後日の方角にものを考えていた、たぶんハジメの事をあえて触れないために。
「ごめん、みんな。全部俺のせいだから、ハジメは悪く無いから……」
お前らの顔をまともに見ることはできなかった。ハジメの方ばかりを見る。……でもきっとハジメだって、目が覚めたら俺を怖がるんだ。あの小さくとも勇ましい戦士のような真っ直ぐな瞳は、もう二度と俺を捉えてくれないのだろう。
「はいはい。そういうのはハジメの目が覚めたらゆっくり話し合おうぜ。お前がそういうことしないのわかってっからよ」
「えっと……お水と、ご飯が必要? いやその前にお風呂だよね」
「シャワールームは……高級部屋じゃないからないのか。そもそも2人で使うには狭いな……アナは風呂場に許可通して天使様とジョセフを連れて行ってくれ。JBお前は俺と一緒に部屋を片付けるぞ!」
しかし俺が想像していた手厳しい対応とは打って変わって、アイツらの対応は実直でいて優しいものだった。いやいや、俺はハジメを犯したんだぞ、スターに助けを求めていたあのハジメを。あ、あれだろ……浮気だし、強姦だし……公序良俗? 的に駄目なやつだろ。ああ、わかった。みんなハジメに気を遣ってるんだ、優しくて良い奴ばかりだもんな……。
「ああ……本当に良かったな、ハジメ……」
「……んー……」
抱きかかえていたハジメが、パチリと目を覚ました。俺はそれを見てホッとする反面、何を言われるのだろうかと戦々恐々としていた。最悪暴言だけではなく拳か足が飛んでくる。しかしそんな気持ちとは裏腹に、俺を目に入れた瞬間ホッとしたように顔を埋めた。
「よかった……ちゃんとジョセフだぁ」
「え」
ハジメはしっかりと俺を抱きしめて、うわ言のようにジョセフだ、ちゃんといる、とか呟いていた。怒ってないのか。確かにハジメは口は悪いけどなんだかんだ優しい所はあるけれど、それとこれとは話は別だ。こういう時はまず罵られるものだと思ってたんだが……。
「……心配したんだぞ」
小さな小さな、俺にしか聞こえない音声で繰り出された照れ屋なアイツらしい気遣い。酷く救われた気持ちになって、いつの間にか一粒の涙が溢れ出た。
「お、おい、大丈夫かジョセフ」
「天使様! お目覚めになられたのですね」
「うぇ!? お前らいつの間に!」
本当に俺しか目に入ってなかったみたいで、スター達に酷く驚いていた。ついでに自分がベタベタかつ全裸だということにも気付いたようだ。それでも3人から身を隠すために更に俺に密着されたもんだから心臓が飛び出るかと思った。
「ギャー!やべ! 多分俺めっちゃ変態に思われるわジョセフ悪いけどお前ちょっと壁になってくれ」
「わっわわわかった」
「な、何がどうなってらっしゃるんですか……」
「ちょっとだけ仲良くなってる……?」
ハジメは盛りのついた猿……もといファンが聞いたら発狂しそうな程可愛らしい悲鳴をあげ、全裸がバレないように隠しつつ慌てふためいている。その動きは小動物そのもので、なんだか微笑ましい。それだけでなく俺の肩をしっかり掴んで離さないのもまた、庇護欲をそそった。
「ぶぇくし」
「はいはい2人とも、いい加減シャワー浴びろ」
タオルを上から掛けられ、わちゃわちゃのなか風呂へと連行されていく俺とハジメ。俺はその間ももう大丈夫なのかとかバレずに済んだのかとか、本当に俺を心配してくれていたんだとわかって胸が暖かくなる。……やっぱり俺には勿体なさ過ぎる奴だな、ハジメは。そうだ、これだけは聞いておかなくては、俺は少し疲れ気味のハジメに質問をした。
「……なんで、怒らない? なんで、バラさない?」
「ん? なんでって、そもそも鍵かけてる部屋に勝手に入ってきたのは俺だし……お前には恩もあるし」
「……恩?」
「昼間のアレだよ。お前が作ってくれたハンデがなきゃ俺は快楽落ちコースだったからな」
……そんな、そんな些細な事を恩だと思ってくれているのか。そんなの大した事じゃないと言おうとしたところで、ハジメがもう一声お出ししてくる。
「そ、それに……お前のこと、いやお前らの事、一応友達だって思ってたり……」
……また一つ、ハジメへの信頼と愛しさが募る。顔を赤く染めながらも俺を友達だと言いきってくれた。今まで大人しいとか、静かだとかそんな評価しかされずに流されてきた俺を、コイツは受け入れてくれたのだ。それがたまらなく嬉しかった。
でも、まだ友達か。__あんな事しておいて友達……とはスターとの関係を見た後だと妙な納得感がある。多分友達との距離の取り方を把握してないんだろう、俺と同じで。友達は別にセックスとかしないしこんなベタベタな状況で友達宣言なんてしないから……まあ俺も初めての友達だし偉そうなこと言えねえけど。
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