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JBからの挑戦状
ラストターン ※R18
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生まれ持った魔法がこんなだから、喧嘩の仲裁や勝負の行末を見守るってのはしょっちゅうだ。だけどオレ自身はそれに参加できない、いつだってゲームマスター、ルーラー、そんな所だ。
言っておくがそれに対して嫌だと思ったことはない。むしろその逆で、自分が敷くルールの下みんなに楽しんでもらうのは結構楽しい。
でも、今日オレは初めて、心の底からドキドキする事となる。
「あ、ヤバ、21超えちゃった」
5ターン目始まって早々、ブルーブックが敗退した。3ターン目に配り直しを2回も宣言したのに運の良さでここまで勝ち進んだ。でもこれ以上は無理だったようだ。♢3と♤Kから再び配り直しを選び、20~21までのセーフゾーンになった状態で、♢5+♤2+♤8+♡7で合計値は22、めっちゃ惜しいな。
「……」
「はぁ……はぁ……ぐぅ……♡」
残ったのはアナとハジメだ。快楽を与えるという圧倒的ハンデを与えているのに、あまりにも骨太過ぎて内心ビビっている。そんなにオレらが嫌なのか。いや、それとも本人が気付いてないだけで元いた世界に好きな奴でもいるのか。ハジメって基本は嘘つかない正直者だけど素直じゃないから自分で気が付いてない節があるんだよなー……
ともあれハジメは4ターン目に2回、アナは2ターン目と3ターン目で1回ずつ配り直しを宣言してるから、セーフゾーンはお互い19~21。
ハジメは♡8と♧8で合計値16、アナは♢4と♡9で13。さてさて……
「配り直しでお願いします」
アナは危ない橋を渡ることを選んだようだ。1番確率の高い10を選んだら即終わるかなり際どいカードだったからな、それでもハジメよかまだ可能性のある数字だっただけに決断が早いなとは思った。これで範囲は20~21だというのに。2人のミスを願っていたのか快楽を体から逃すためなのか、不動を貫いていたハジメも少し困惑している様子だった。
いや、本当に配り直す前の方が確実だったのか? 少し思い返してみよう……この魔法をトランプゲームで使うことは珍しくない、ディーラーとしての経験は結構ある。そのせいか、ズルイカサマ防止のために配ったカードの枚数、数字、記号の全てを憶えているっていう特技を13歳の時に自覚した。そして辿りながら色々考えているうちに、アナの作戦に気がついた。
「……お前すげーな」
「えへへ、何が?」
素直な称賛は、兄貴しか騙さそうもないわざとらしい笑みで躱されるだけだった。
1ターン目にカードは30枚消費されている。2ターン目は39枚で、すでにデッキは2組目。3ターン目は38枚使われて、合計値107枚でわかる通りデッキはとうとう3組目の1枚を使っていることになる。4ターン目は20枚で残るカードは32枚。5ターン目は最初に配った計6枚と、先程敗退したブルーブックに4枚で残るは22枚だ。この時点でアナは19~21から、20~21にするという狭き門を選んだ。
「あ、アナ、大丈夫なんかよ?」
「大丈夫だよ、こっちの方が確率高いし」
今まで消費されたカードの番号を思い出す。オレの記憶が正しければ残り22枚の中でA、3、6、8のカードは既にない。先のカードの合計値が13、範囲が19~21だったアナが欲しかったであろう6、7、8はすでに2つが枯れている。
それ以外の2、4、5、7、9は計10枚ある。が、10、J、Q、Kはなんと12枚もあるんだ。この3組目のデッキで起こったたまたまの偏りをアナは把握していた。
12/22、11/21を掻い潜り10、J、Q、Kを2枚引けば成功だ。確率にして132/462、約分しまくったら2/7、アナをこれに賭けたのだろう。少なくともあと1枚しかない7を出すことに賭けるよりかは確率は遥かに高いはずだから。
そしてその賭けにアナは勝った。
「よし、♡Qと♢Kで20! セーフ!」
「凄え! めっちゃ運いいな!」
「マジかよ……」
周りからしたらアナはとてつもない豪運を発揮したと思われる、だがそれは確かに計算によって導き出した最適解だった。ある程度計算を習っていたら間違えることはない簡単な話ではある。が、自分のだけじゃなく、全ての人間に配られたカードを把握するとはな。それに多分今何組目のデッキを使っているのかも理解しているだろう、オレが思っている以上に頭が回るのかもしれない。これで自己肯定感低いんだから悪い意味で凄い話だと思う。
……さて、5ターン目でもアナはパスしてしまった。これでハジメが勝つにはこのターンを凌ぐことしか無くなった。そしてコイツのカードは♡8と♧8でクリアゾーンは19~21。かなり悩ましい数字だな、残りのデッキは半分が10な上にあいつは気が付いていないだろうが、セーフゾーンのカードも幾つか品切れしている次第だ。となるとここは、
「……く、配り直し……を」
まあそうだろうな。カードの残弾を知ってなくても仕掛けるにはあまりにリスキーだ。これで成功ゾーンは20~21になったが、ここまで10が多いとこのまま成功されてしまう可能性もある……
と思いながらカードを配ってはみたが、その心配はなかった。
♧10と♢9、今さっき来てくれれば成功だったそれだ。完璧に運に見放されたな。
「あう♡、、ぅぅ……」
さてどうする……全員が息を呑み、スターの拳は震え、アナの視線は鋭く、ジョセフは配りすぎてなくなった自らの生命線を補うべく食堂で大量に買った新しいビーフジャーキーの2袋目を開けた。
「……配り直し、しろ」
ほうまだ賭けるか。確かに、アイツは気が遠くなるほどの快楽に耐えてきたんだ、最後のチャンスぐらい縋り付かせてやろう。無言でカードを配る。これでハジメに残されたのは21ジャストのみ。
震える手でまくった瞬間に噴き出た粘液は遂にハジメの勃ち上がっていたそこにペチャリとついた。
「んんんん♡♡♡~~~」
悶絶しながら絶頂に耐えるのを見てやっぱり思う、もう無理せずこの世界で生きればいいのに。この世界ならみんながハジメの理解者になってくれるから、大切な人になってくれるから、意地っ張りでも素直じゃなくても認めてくれるから。
それでもやっぱり諦めない、今にも快楽でおかしくなりそうだと訴える顔の中でも闘志は消えない。
配られた♡4と♤Jを見て、不敵に笑う。それは気持ち一つで今にも堕ちそうなハジメを救う言葉を考えていたオレの思考を真っ向から蹴り飛ばすものだった。
「よし、あ、う♡……コレなら、勝てる!!」
言っておくがそれに対して嫌だと思ったことはない。むしろその逆で、自分が敷くルールの下みんなに楽しんでもらうのは結構楽しい。
でも、今日オレは初めて、心の底からドキドキする事となる。
「あ、ヤバ、21超えちゃった」
5ターン目始まって早々、ブルーブックが敗退した。3ターン目に配り直しを2回も宣言したのに運の良さでここまで勝ち進んだ。でもこれ以上は無理だったようだ。♢3と♤Kから再び配り直しを選び、20~21までのセーフゾーンになった状態で、♢5+♤2+♤8+♡7で合計値は22、めっちゃ惜しいな。
「……」
「はぁ……はぁ……ぐぅ……♡」
残ったのはアナとハジメだ。快楽を与えるという圧倒的ハンデを与えているのに、あまりにも骨太過ぎて内心ビビっている。そんなにオレらが嫌なのか。いや、それとも本人が気付いてないだけで元いた世界に好きな奴でもいるのか。ハジメって基本は嘘つかない正直者だけど素直じゃないから自分で気が付いてない節があるんだよなー……
ともあれハジメは4ターン目に2回、アナは2ターン目と3ターン目で1回ずつ配り直しを宣言してるから、セーフゾーンはお互い19~21。
ハジメは♡8と♧8で合計値16、アナは♢4と♡9で13。さてさて……
「配り直しでお願いします」
アナは危ない橋を渡ることを選んだようだ。1番確率の高い10を選んだら即終わるかなり際どいカードだったからな、それでもハジメよかまだ可能性のある数字だっただけに決断が早いなとは思った。これで範囲は20~21だというのに。2人のミスを願っていたのか快楽を体から逃すためなのか、不動を貫いていたハジメも少し困惑している様子だった。
いや、本当に配り直す前の方が確実だったのか? 少し思い返してみよう……この魔法をトランプゲームで使うことは珍しくない、ディーラーとしての経験は結構ある。そのせいか、ズルイカサマ防止のために配ったカードの枚数、数字、記号の全てを憶えているっていう特技を13歳の時に自覚した。そして辿りながら色々考えているうちに、アナの作戦に気がついた。
「……お前すげーな」
「えへへ、何が?」
素直な称賛は、兄貴しか騙さそうもないわざとらしい笑みで躱されるだけだった。
1ターン目にカードは30枚消費されている。2ターン目は39枚で、すでにデッキは2組目。3ターン目は38枚使われて、合計値107枚でわかる通りデッキはとうとう3組目の1枚を使っていることになる。4ターン目は20枚で残るカードは32枚。5ターン目は最初に配った計6枚と、先程敗退したブルーブックに4枚で残るは22枚だ。この時点でアナは19~21から、20~21にするという狭き門を選んだ。
「あ、アナ、大丈夫なんかよ?」
「大丈夫だよ、こっちの方が確率高いし」
今まで消費されたカードの番号を思い出す。オレの記憶が正しければ残り22枚の中でA、3、6、8のカードは既にない。先のカードの合計値が13、範囲が19~21だったアナが欲しかったであろう6、7、8はすでに2つが枯れている。
それ以外の2、4、5、7、9は計10枚ある。が、10、J、Q、Kはなんと12枚もあるんだ。この3組目のデッキで起こったたまたまの偏りをアナは把握していた。
12/22、11/21を掻い潜り10、J、Q、Kを2枚引けば成功だ。確率にして132/462、約分しまくったら2/7、アナをこれに賭けたのだろう。少なくともあと1枚しかない7を出すことに賭けるよりかは確率は遥かに高いはずだから。
そしてその賭けにアナは勝った。
「よし、♡Qと♢Kで20! セーフ!」
「凄え! めっちゃ運いいな!」
「マジかよ……」
周りからしたらアナはとてつもない豪運を発揮したと思われる、だがそれは確かに計算によって導き出した最適解だった。ある程度計算を習っていたら間違えることはない簡単な話ではある。が、自分のだけじゃなく、全ての人間に配られたカードを把握するとはな。それに多分今何組目のデッキを使っているのかも理解しているだろう、オレが思っている以上に頭が回るのかもしれない。これで自己肯定感低いんだから悪い意味で凄い話だと思う。
……さて、5ターン目でもアナはパスしてしまった。これでハジメが勝つにはこのターンを凌ぐことしか無くなった。そしてコイツのカードは♡8と♧8でクリアゾーンは19~21。かなり悩ましい数字だな、残りのデッキは半分が10な上にあいつは気が付いていないだろうが、セーフゾーンのカードも幾つか品切れしている次第だ。となるとここは、
「……く、配り直し……を」
まあそうだろうな。カードの残弾を知ってなくても仕掛けるにはあまりにリスキーだ。これで成功ゾーンは20~21になったが、ここまで10が多いとこのまま成功されてしまう可能性もある……
と思いながらカードを配ってはみたが、その心配はなかった。
♧10と♢9、今さっき来てくれれば成功だったそれだ。完璧に運に見放されたな。
「あう♡、、ぅぅ……」
さてどうする……全員が息を呑み、スターの拳は震え、アナの視線は鋭く、ジョセフは配りすぎてなくなった自らの生命線を補うべく食堂で大量に買った新しいビーフジャーキーの2袋目を開けた。
「……配り直し、しろ」
ほうまだ賭けるか。確かに、アイツは気が遠くなるほどの快楽に耐えてきたんだ、最後のチャンスぐらい縋り付かせてやろう。無言でカードを配る。これでハジメに残されたのは21ジャストのみ。
震える手でまくった瞬間に噴き出た粘液は遂にハジメの勃ち上がっていたそこにペチャリとついた。
「んんんん♡♡♡~~~」
悶絶しながら絶頂に耐えるのを見てやっぱり思う、もう無理せずこの世界で生きればいいのに。この世界ならみんながハジメの理解者になってくれるから、大切な人になってくれるから、意地っ張りでも素直じゃなくても認めてくれるから。
それでもやっぱり諦めない、今にも快楽でおかしくなりそうだと訴える顔の中でも闘志は消えない。
配られた♡4と♤Jを見て、不敵に笑う。それは気持ち一つで今にも堕ちそうなハジメを救う言葉を考えていたオレの思考を真っ向から蹴り飛ばすものだった。
「よし、あ、う♡……コレなら、勝てる!!」
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