小柄コンプを拗らせていた俺、魔術学校ものの異世界に飛ばされた挙句デカ男達から天使扱いされる

荒瀬竜巻

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いい子の反逆

ほんま学園長絶許

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 食堂の天井、雰囲気のいいステンドグラスを叩き割って学園長が降ってきた。俺が巻き起こしてしまったらしいとても朝方とは思えない世紀末な狂乱も、1人募らせていた寂しい絶望も文字どうり全てかっ飛ばしやがった。

 しかも昨日と服違う。黒い紳士服、あまりにも異質な装飾品と黒いシルクハットの上に乗った学園長とお揃いの服着たテディベアではない。白い祝辞用の服、水色とピンク色に限定した異質な外見の装飾品、白いシルクハットの上に乗ったお揃いの服着たティベアだ。
 うん、違う衣装じゃなくてただの色違いじゃねえか。またの名を2Pカラー。

「飯食ってる途中やけど学園長がやりとうなったけん入学式やるで。別にご飯食べながらでもええけん話聞いてな~」

 そして服装からもつイメージと違わない狂人ぶりを今日も今日とて発揮している。ほらみろ俺と同じ新入生らしき生徒達が動揺しまくっている。因みにこの様な蛮行に慣れてしまった上級生と、先生方は半ば呆れながら今現状が早く終わる様にと、本を読んだり食事に集中したり別のことをしている。

 生徒や先生のためいい料理を作ろうと忙しなく働いているキッチンからの調理の音が聞こえる中、入学式らしき何かが始まってしまった。

「えーまずはこの魔法魔術学校アルビオン・ロー学園へ入学した101人の生徒たちへ、おめでとう。んーこれ要らんわ。ちょっとした面白い生徒もいて今年は楽しぃなりそうな」

 おめでとうの下りは手に持っているカンペだったけど、それしか書いてないのか、はたまた突然読む気が失せたのか、突然破り捨てて普通に思いつきで話し始めた。

「この学校の入試おもろかったやろ? 魔法と魔術の才能しか見てへん入試やなって国どころか世界でも有名なんよ。お陰で他の名門校に比べたら治安悪いけどみんな強いから結果オールライトってやつや。名家のご子息から自分の名前も書けへんぐらいの田舎生まれもおる変わった校風やけど住めば都、意外と楽しいけんなー」

 ツッコミどころ多過ぎだろ。識字率99.9%以上の日本出身日本育ちのせいで自分の名前すら書けない田舎者っていうのがいまいち実感がわかない。住めば都をこれ以上ないぐらい便利な言葉として使っているな。

 俺はスターが最初に魔術をかけてくれたお陰で、喋る聞くはもちろん、書くことも読むことも問題ない。俺が書いた文字は、俺から見たらどう見ても日本語だが、この国の人間が見たらこの国の言葉に見えるらしい。逆であってもそのようになるとの事で、言葉に困ることはなさそうだ。あまり実感のない話だけど。

「でも忘れんといてよ。みんな将来有望なエリートやからね。あ、あと食堂の右奥におる天使様についてなんやけど、魔力のパスは今はスターと繋がっとるけん安心やな。じゃ、食事中に失礼したな、入学式終わり!!!」

…………………………

 いま俺、いやスターを見ている周りの目は、嫉妬、嫉妬、嫉妬。こんな状況下で呑気にプリン食ってるんだ、肝が座りすぎている。曰く嫉妬で暴走して乱闘騒ぎにならないだけマシとの事。そういや名門にしては治安悪いみたいなこと言ってたな。
 昨日といい今日といい、平和が悉く学園長の手によって踏み潰されている気がする。もうアイツ黒幕だろ。いや違う、ただただ本当に、騒ぐだけ騒いで帰る、それが得意な人間なんだろう。
 第一入学式ってこんなものの数分で終わらせて良いものなのか、周りの奇行に慣れた奴らもあーやっと終わったみたいな顔してるけど。

「そう言えば、クラス分けどうなるんだ」

「確かに話してなかったな」

「えっと、多分ごめんごめん忘れてたぁ~のノリで来ると思うけど」

 ジョセフもJBもアナも耐性出来すぎだろ。俺はあと半年ぐらい経たないと慣れる気がしないんだが。そしてアナの予測はまあまあ的中する。さっき帰っていったステンドグラスからまた入ってきた。

「ごめんごめん忘れとったわ、クラス分け決まったんよ。紙配るから、食事終わったら各々で教室行ってなぁ」

 学園長の手にあった紙の束が勝手に生徒のところへ向かう。こう言った頃はちゃんと魔法とか魔術とか使ってんだ。俺がドン引いてるだけで、普段のアレも魔術師的に見たら案外普通なのかもしれない。

「クラス分け表を……キャッチ! 一緒に見ようぜ!」

 ナイスJB。印刷っぽくないけどインクによって線も文字も綺麗に描かれている。なんだろう、版画みたいな感じで刷ってんのかな。それとも魔術かなんかで複製してんのかも。兎に角クラス分けだ。A、B、C、Dと4つに別れている感じか。でも殆ど大体90人ぐらいはABCの何処かに配属されているな。じゃあDはというと、10人ぐらいしかいない。何故。

「アレは所謂少人数クラスです。能力に尖りがあったり、問題の多い生徒を少人数で指導するための教室ですね。あとは高名な魔術師の家系が下々との接触を避けるためにわざと入れたりするケースもあります」

「あ、俺たち全員Dクラスだぞ」

 2つの考えが頭を支配する。あ、人数少ないクラスだし友達もいるし、囲まれたりする心配なさそうだ、ラッキー。って考えている楽観主義の自分。そんな問題児や個性強そうな奴らしかいないクラスとかヤバい気配しかしない。学園長絶許だわって考えている悲観主義の自分。
 担任教師はっと、デイウス・ルシエル? どっかで聞いたことある様な……

「……うん。僕のお兄さんです」

 震えながらアナが自己申告する。あ、確かに苗字が同じデイウスじゃん。片方の反応を見ただけでも兄弟仲が悪いってのがよくわかるそれに不安を抱きつつ、女がいないという絶望をすっかり忘れた俺は、まずは教室に行かねばと冷めてしまったクリームパスタを腹にかき込んだ。
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