小柄コンプを拗らせていた俺、魔術学校ものの異世界に飛ばされた挙句デカ男達から天使扱いされる

荒瀬竜巻

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はじまり

獲物を見つけた悪魔 ※R15

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 俺は放心状態になり、後はなすがままという感じ。保健室の目の前で出待ちしていた男生徒をJBやジョセフが返り討ちにして、食堂の利用の仕方なんかもアナに教わったが上の空。何食べたのかすら覚えてないからな。
 何故こんなことになったのか、自分の何がいけなかったのかを考えながら、遂にこの時が来た。

「えっと……シャワーの使い方は大丈夫だった?」

「う、うん。感覚的に理解できたから使いやすかったぞ」

 今現在、スターの自室にいる。部屋が準備出来ていないという名の大義名分によって連れてこられた俺は、これからコイツとセックスするらしい。ここまで来ると寧ろ他人事だぞ、寧ろ。何か悪い夢でも見てるんじゃないかとすら思ってしまう。特に詮索せずに何の気無しな対応をしてくれていた3人には心の中で感謝の言葉を述べておく。
 なんでもパスとかいうやつを魔術を使っても大丈夫なぐらい強固なものにするのが目的らしいが、最初から最後まで意味がわからんかったから聞き流してしまった。

 もう他人事も冷静も全部変えて、自暴自棄だったのかもな。

「防音魔術張って__じゃあえっと……先に今のパスを切っておくね」

 スターが指をパチンと鳴らすと、あの忌々しい、身体が重くなる謎の疲労感。いや違う、気持ちいいのを求めるあの感覚が再び襲ってくる。曰くまだ慣れてないうちは丁寧に接続し、切り離す。これが大事らしい。上書きは体の負担になるらしいがそんなのは分からないから、もうコイツの好きにしてもらおう。

「あまり自棄にならないで。……こういうのは雰囲気が大事だとか。だから、夜がもっとふけるまでこうしてゆっくりお話ししようよ」

 そう言って、スターが恥ずかしそうに座っているベッドの近くで直立するしかなかった俺を優しく抱きしめる。そしてベッドへ誘導された。
 女の子とすらこう言ったことをした事ないのに、今は俺がエスコートされる側。多分その、それ以外にも色んな意味でされる側なんだ。本来は屈辱的な事のはずなのに、高まって止まらない胸は、きっとこの熱のせいだろう。

「……ハジメくんの事、やっぱり天使様って呼んでいい?」

 ベッドに入り、俺を抱きしめて、最初に言った言葉だった。声が震えている、胸板から心臓のバクバクが伝わって来た。俺に天使な自覚もなければそんな大それた存在だと自分を誤認した経験もない。よって、自分から呼んでもいいよと答えるのはかなりハードルの高い話なのだけれど。

「子供の頃からの憧れだったんだ、空から来られる天使様。小さな御体も、吸い込まれるような黒い眼も。だから、お願いします」

「__勝手にしろ」

 素っ気ない態度かもだが、これが恥ずかしがり屋な俺にできる精一杯の肯定だった。スターも目を星のように輝かせてありがとうございますと返して来たから、多分意は伝わった。にしてもスターの考えていることはわからん。伝説に出る天使様の性格なんて知ったこっちゃないが、どうせ聖人だったり女神みたいな性格なんだろ? 普通こんなのが天使面して来たら幻滅するだろ。
 神様もこんな意地っ張りでコンプレックス拗らせたやつを連れてくる逆張りはやめて、素直で可愛いのを選べばよかったものを、神様の考えてることもわからん。

「あー……暑いから上脱ぐ」

「え!? は、はい! お手伝いします」

 ベッドに2人、しかも制服は流石に暑かった。何故か驚きながらウキウキしているスターに上着脱ぐのを手伝ってもらった。新手の百面相か。半袖のブラウスも脱ぎ、黒い無地の遊び心なんてかけらも感じないタンクトップがお目見えだ。こんな状況なのに肌を露出させるなんて、俺も何考えてるのか自分でわからん。

「わぁ……」

「何見てんだよ」

「いやあの、本当に華奢で、美しいなと……」

 喧嘩売ってんのか。こんなちんちくりんな身体な上母さんからの遺伝のせいで筋肉も付きずらいったらない。それをここに来て褒めてくるなんて、煽り検定1級かよ。んーこれは捻くれ過ぎだ、屈辱だが褒め言葉として受け取ることとしよう。

 俺を触るスターの手。掌から二の腕、そして我ながら頼りなさそうな胸板。まるで貴重品を触るかのように優しく、特に胸の辺りがちょっとくすぐったい。
 そのまま奴の手がタンクトップを超えて直になる。胸に近づき、揉み始めた辺りで思わず声を上げた。

「ま、待て待て! まだ心の準備が! 第一その、こんなん触って何が楽しいんだ」

「……すみません、我慢ができなくて。あと、天使様の表情の変化を見ながら触るのが楽しくて、つい」

 え、俺そんな顔してたの? 表情筋よ頼むから俺のいう通りに動いてくれ。そんな俺のことなどどこ吹く風、スターは揉むのを再開する。男の触ってどうする気なんだコイツは……身体に沈澱してる謎の熱のせいか、胸の感覚が妙に敏感だ。
 このままされ続けるのはまずい、具体的にはわからんが兎に角まずいと脳が発した危険信号は、確かに俺に届いた。

「んぅ……もういいだろ」

「……もう少々お待ちをまだ触っていないところがあります」

「え、あ、ま、待って__ふぁ!」

 やばいと思ったその瞬間。アイツ俺の乳首に触りやがった。しかも何て声出してんだ俺は。……昔ちょっとした好奇心で触った時はこんなに感じなくて、自分にその気はないんだとばかり思っていたのに。
 やっぱりこの世界に来てから定期的に襲われるこの熱っぽさが原因なのか。思えば熱が頭ではなく下腹部に集まってたような……俺では分かりようもないことだが。

「お、おいやめろよ、、これ以上やったらマジで打つぞ」

「__分かりました。では、下の方を失礼しますね」

「え」

 ボキャ貧な頭では静止の言葉を考えることも出来ず、力一杯ズボンを下ろされた。
 その時のスターは優等生のようなお手本爽やかイケメンスマイルではなく、初めて俺を襲った時よりも凶悪笑みを浮かべた、獲物を見つけた悪魔だった。
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