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はじまり
アルビオン・ロー魔法魔術学園
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……
…………
……………………
そっと溜息をつく。
……や、やってしまった。
今僕の目の前にあるのは、羞恥と錯乱と快楽の前に気を失ってしまった少年。自分と手と服にベッタリとついたこの子の精液。少年は顔も体も真っ赤にさせて、じっとりと汗を滲まながら、さっきまでの声や動きの淫靡さはなりを潜めて今は可愛らしい寝息をたてている。
「君、精通しているのか?」
信じられない。まだ150とかそこらじゃないか。平均身長が180㎝前半なんだから、精通なんて普通170㎝ぐらいでようやく来るものだ。まさかとは思うが、これで成体なのか。こんなの、本当に天使様みたいじゃないか。
伝説に出てくる天使様は子供のような小柄な身体を持ちながら既に精通をしている。この国、この世界の人間は持っていない神秘的(黒とか茶色)な色の髪色や目をしていて、童顔で彫りが浅くて可愛らしい。
そして何より、天使様は異世界から来たせいでこの世界の自然と魔力のパスが繋がっておらず、誰かが支えてあげねば消えてしまう儚い存在らしい。
完璧に彼は天使様の条件を満たしているぞ……ほ、本当の本当に天使様!?
「が、学園に知らせないと! 天使様、失礼します!」
体液を拭き取り服を正し、天使様をお姫様抱っこの形で持ち上げた。この鞄と魔導書も天使様の持ち物だ、魔術で浮かせて持っていこう。初対面なのに天使様にご無体を働いてしまったという申し訳なさから逃げるように、されど手の中にある天使様を気遣いながら学園に帰った。
…………………………
「おいスター、お前なんてかわいこちゃん連れてんだよ」
「こんな子が近くに住んでたの?」
「これから自室にでもお持ち帰りすんのか?」
「すまない。今は急いでるんだ。保健室までの道を開けてくれ」
帰って早々友達? の3人にウザ絡みされてしまった。
今更ながら僕の本名はギャリック・リー・スタッフォードというのだけど、自分の名前があんまり好きじゃないとちょっと漏らしただけで、いつのまにかスターというあだ名を用意されてしまった。1週間前から新1年生の寮入りがはじまり、明日がようやく入学式なのに、仲良くなるのがいくらなんでも早すぎるだろう。それとも僕が周りと距離を置きがちなだけで、案外これが普通だったりするのか?
友達宣言もしていないのに友達として振る舞う彼等に違和感を覚えつつも、足を止めるわけにはいかないと保健室に向かった。歩く道中で野次馬が増えていくが、最低限の気が効く3人が人払いと天使様が見えないように制服を上からかけたりなど、してくれる。……無神経というわけではないのか。
おかげで保健室まで無事に連れて来れた。まだ諦め切れない外野が扉の外で屯しているけど、今はそれを気にするタイミングじゃない。
「おやおや……新1年生入試主席のギャリック・リー・スタッフォードくん。どうしたんだい? そんな可愛い子どこで攫って……」
保健室の男性の先生が揶揄ってくる。この飄々とした感じにペースを乱されると彼の話がまともにできないと思い、さっさと軌道修正する事にした。
「スターでいいです。彼、ローの妖森で迷子になってて……」
「ほーん、見た感じまだちっちぇーのにそんな危険なところにいたのか」
「ここら辺に民家というと……森の反対側にあるアルビオン魔法魔術街あたりの子なのかな」
「でも黒髪の人間なんて見たことねーよ」
「あートレーニングで疲れたぜ……」
いつの間にか入って来ているこの3人組に対しての指摘は今更思い浮かばない。1人は彼が寝られるようベッドを準備、もう1人がそれを手伝い、最後の人は割とどうでも良さそうにソファーに座った。最後のは何しに来たんだ。
「おやおやみんな見かけない顔だね。生徒名簿はっと……えーと、そうか新1年生か。そこのベッドを準備してくれてる茶色髪は、入試50位のドルレアック・ジェービーね」
「JBでいいですよ」
「あいわかった。じゃあ隣にいる同じくベッドの準備をしてくれている背が小さい金髪くんは、入試15位のデイウス・アナゼルと、」
「アナでお願いします。アナゼルなんて、僕なんかには偉大な名前過ぎて……はい」
「……最後の我が物顔でソファーに座ってビーフジャーキー食べてる色白筋肉は、入試82位のアレキンス・ジョセフレカ」
「ジョセフでいいっすよ」
揃いも揃ってあだ名で呼ばれたがるそれはなんなんだ。ほらみて先生もちょっと笑っちゃってるよ。天使様が目覚めても失礼な態度を取らないように見張らないと……って思っても最初にあんなことした自分ではとても務まらないな。気を取り戻しても真っ先に警戒させるのはきっと僕だろう。
まずは僕がしてしまったことを白状しないと。大丈夫だ、あれは正当な医療行為だった。アレがなければ今頃天使様は……色んな言い訳を頭の中で繰り返しつつ、事情を説明した。この3人も……まあいいや。僕も意外とこの3人を贔屓していたのだなと今思い知る。
…………………………
「そ、そんなことが……いや、いいんだ。本来なら家族や恋人などの近しい人間がやる事ではある。しかしその時はスタッフォード、いやスターくんしか居なかったのだろ? 咎める真似はしないさ」
「で、でもでもこの子この身体でもう大人ななの?」
「小学生かと思ってた」
「たまたま発育が良かった……いやどんだけ早くても160ぐらいが関の山だよな」
三者三様な答えだ。実際アレのおかげで一時的にとはいえ今は僕とパスがつながっている状態で、容体は安定している。説明中にベットに寝かせたが、魘されている様には見えない。
今は鞄と魔導書を先生が物色しながら僕ら4人が寝ている天使様を取り囲んでいる状況だ。
小さな体の細い曲線を隠す黒い装束、下を見ればそこからでもわかる細い脚、上を見ればあどけなさが残る小さな掌。思えば自分は最初一眼見た時から彼に対して艶めかしさを感じていたのだとようやく理解できた。
天使様は異世界からこのような下界に来てさぞ混乱されているに違いない。それでも最初に見つけられたのが僕でよかった。もう大丈夫です、必ずやこの学園にいるハイエナどもから、命にかけてお守りいたします__
「う、うぅん……」
当然の事に身体が固まる、全員だ。先生が冷静に目が覚めたんだなという頃には正気を取り戻し、全員がベッドから一歩離れた。
…………
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そっと溜息をつく。
……や、やってしまった。
今僕の目の前にあるのは、羞恥と錯乱と快楽の前に気を失ってしまった少年。自分と手と服にベッタリとついたこの子の精液。少年は顔も体も真っ赤にさせて、じっとりと汗を滲まながら、さっきまでの声や動きの淫靡さはなりを潜めて今は可愛らしい寝息をたてている。
「君、精通しているのか?」
信じられない。まだ150とかそこらじゃないか。平均身長が180㎝前半なんだから、精通なんて普通170㎝ぐらいでようやく来るものだ。まさかとは思うが、これで成体なのか。こんなの、本当に天使様みたいじゃないか。
伝説に出てくる天使様は子供のような小柄な身体を持ちながら既に精通をしている。この国、この世界の人間は持っていない神秘的(黒とか茶色)な色の髪色や目をしていて、童顔で彫りが浅くて可愛らしい。
そして何より、天使様は異世界から来たせいでこの世界の自然と魔力のパスが繋がっておらず、誰かが支えてあげねば消えてしまう儚い存在らしい。
完璧に彼は天使様の条件を満たしているぞ……ほ、本当の本当に天使様!?
「が、学園に知らせないと! 天使様、失礼します!」
体液を拭き取り服を正し、天使様をお姫様抱っこの形で持ち上げた。この鞄と魔導書も天使様の持ち物だ、魔術で浮かせて持っていこう。初対面なのに天使様にご無体を働いてしまったという申し訳なさから逃げるように、されど手の中にある天使様を気遣いながら学園に帰った。
…………………………
「おいスター、お前なんてかわいこちゃん連れてんだよ」
「こんな子が近くに住んでたの?」
「これから自室にでもお持ち帰りすんのか?」
「すまない。今は急いでるんだ。保健室までの道を開けてくれ」
帰って早々友達? の3人にウザ絡みされてしまった。
今更ながら僕の本名はギャリック・リー・スタッフォードというのだけど、自分の名前があんまり好きじゃないとちょっと漏らしただけで、いつのまにかスターというあだ名を用意されてしまった。1週間前から新1年生の寮入りがはじまり、明日がようやく入学式なのに、仲良くなるのがいくらなんでも早すぎるだろう。それとも僕が周りと距離を置きがちなだけで、案外これが普通だったりするのか?
友達宣言もしていないのに友達として振る舞う彼等に違和感を覚えつつも、足を止めるわけにはいかないと保健室に向かった。歩く道中で野次馬が増えていくが、最低限の気が効く3人が人払いと天使様が見えないように制服を上からかけたりなど、してくれる。……無神経というわけではないのか。
おかげで保健室まで無事に連れて来れた。まだ諦め切れない外野が扉の外で屯しているけど、今はそれを気にするタイミングじゃない。
「おやおや……新1年生入試主席のギャリック・リー・スタッフォードくん。どうしたんだい? そんな可愛い子どこで攫って……」
保健室の男性の先生が揶揄ってくる。この飄々とした感じにペースを乱されると彼の話がまともにできないと思い、さっさと軌道修正する事にした。
「スターでいいです。彼、ローの妖森で迷子になってて……」
「ほーん、見た感じまだちっちぇーのにそんな危険なところにいたのか」
「ここら辺に民家というと……森の反対側にあるアルビオン魔法魔術街あたりの子なのかな」
「でも黒髪の人間なんて見たことねーよ」
「あートレーニングで疲れたぜ……」
いつの間にか入って来ているこの3人組に対しての指摘は今更思い浮かばない。1人は彼が寝られるようベッドを準備、もう1人がそれを手伝い、最後の人は割とどうでも良さそうにソファーに座った。最後のは何しに来たんだ。
「おやおやみんな見かけない顔だね。生徒名簿はっと……えーと、そうか新1年生か。そこのベッドを準備してくれてる茶色髪は、入試50位のドルレアック・ジェービーね」
「JBでいいですよ」
「あいわかった。じゃあ隣にいる同じくベッドの準備をしてくれている背が小さい金髪くんは、入試15位のデイウス・アナゼルと、」
「アナでお願いします。アナゼルなんて、僕なんかには偉大な名前過ぎて……はい」
「……最後の我が物顔でソファーに座ってビーフジャーキー食べてる色白筋肉は、入試82位のアレキンス・ジョセフレカ」
「ジョセフでいいっすよ」
揃いも揃ってあだ名で呼ばれたがるそれはなんなんだ。ほらみて先生もちょっと笑っちゃってるよ。天使様が目覚めても失礼な態度を取らないように見張らないと……って思っても最初にあんなことした自分ではとても務まらないな。気を取り戻しても真っ先に警戒させるのはきっと僕だろう。
まずは僕がしてしまったことを白状しないと。大丈夫だ、あれは正当な医療行為だった。アレがなければ今頃天使様は……色んな言い訳を頭の中で繰り返しつつ、事情を説明した。この3人も……まあいいや。僕も意外とこの3人を贔屓していたのだなと今思い知る。
…………………………
「そ、そんなことが……いや、いいんだ。本来なら家族や恋人などの近しい人間がやる事ではある。しかしその時はスタッフォード、いやスターくんしか居なかったのだろ? 咎める真似はしないさ」
「で、でもでもこの子この身体でもう大人ななの?」
「小学生かと思ってた」
「たまたま発育が良かった……いやどんだけ早くても160ぐらいが関の山だよな」
三者三様な答えだ。実際アレのおかげで一時的にとはいえ今は僕とパスがつながっている状態で、容体は安定している。説明中にベットに寝かせたが、魘されている様には見えない。
今は鞄と魔導書を先生が物色しながら僕ら4人が寝ている天使様を取り囲んでいる状況だ。
小さな体の細い曲線を隠す黒い装束、下を見ればそこからでもわかる細い脚、上を見ればあどけなさが残る小さな掌。思えば自分は最初一眼見た時から彼に対して艶めかしさを感じていたのだとようやく理解できた。
天使様は異世界からこのような下界に来てさぞ混乱されているに違いない。それでも最初に見つけられたのが僕でよかった。もう大丈夫です、必ずやこの学園にいるハイエナどもから、命にかけてお守りいたします__
「う、うぅん……」
当然の事に身体が固まる、全員だ。先生が冷静に目が覚めたんだなという頃には正気を取り戻し、全員がベッドから一歩離れた。
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