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はじまり
美しい彼
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我が校アルビオン・ロー魔法魔術学園の裏手にあるローの妖森から妙な気配を感じ、足を踏み入れた。まだ自分は明日にある入学式を控えた新一年生。少し無謀かもと思ったが、感じた力に全く邪な気配はなく、むしろ綺麗で清らかで、森を歩いているだけでもドキドキとした謎の感覚に胸を躍らせるほどのものだった。それに自分ほどの生まれながらの天才魔術師ならば……というのも少しだけあったと思う。
森を抜け、外れの草原に出る。どうした事だ、いつになく妖精たちが楽しそうだ。踊るような暖かな風が身体に伝わった。湖も美しいな。ここら辺は学園生が自主練や魔術の道具を集めるためによく入り浸っているのだけど……今日はやけに静かだね。どうしたんだろう____いや違う、ひょっとしたら、つゆ払いでもうけた?
「あの少年……は、だれだ?」
恐らく子供だろう、150ほどの小柄な身体に似つかわしくないゴテゴテとした鞄と、ぶ厚い魔導書を持っている。着ている服もおおよそこの国ものとは思えなかった。
しかし僕が1番驚いたのはそこではない。その小さな彼が、遠目から見ても美しい容姿だったのだ。
これほどの美少年が近くに住んでいるのかと感心しながら、ひょっとしたら迷子か、はたまた森の異変は彼のせいか、様々な想いを交差させながら彼に近づいた。
「、ー!!!? !?」
ゆっくり近づくも勘づかれたようだ、振り返る彼。強い声、一音一音しっかり聞こえるハッキリとした言語だったが、それを解明することはできない。ここら辺の子ではないのか?
それにしても、間近で見るとそれはそれは美しかった。白い肌と漆黒の髪の対比、吸い込まれる程に神秘的な黒い瞳はこの国の誰もが羨むだろう。少し小さめの顔のパーツと彫りの浅ささもエキゾチックな雰囲気を醸し出している。
何も容姿だけではない。おとなしそうに見えて瞳は鷹のように真っ直ぐ。小柄な身体とブカブカの服とは似つかない、今のようにあわてていても冷静さを手放さない、そんな歴戦の戦士のようなライオンハートを感じる佇まい。伝説に出てくる天使に勝るとも劣らない……いやそれ以上の絶世の美少年だ。
「ー、ッ??」
「え?」
何かを伝えようとしている、こんな言葉もわからない慣れない土地で迷子になってしまってかわいそうに。この美少年を愛でたい気持ちと無事に親元に返してあげたい心が大喧嘩をしている。今は……若干後者が優勢かも。
「、、ーー、^ーッーー^?」
「えっと、こういう時は……」
「?ー~ーーーーッ??」
「そうだ、翻訳の魔術を使えば!」
……
…………
………………
「この国の言葉がわかるようにしたよ、僕の声聞こえてるかな?」
「く、国?」
美しいだけではない、彼の言動には不自然なところがそれはそれは沢山あった。言葉は無事に通じて情報は引き出せそうだが、そもそも何から聞いたらいいのかわからない。お家はどこにあるのか? その黒くて奇妙な衣服は君の一族の装束なのか? そんな年季ものな魔導書を持っていながら何故魔術を前にそんなにびっくりしたの?
わからないというよりあれだ、聞くことが多すぎるな。しょうがない、一つ一つ潰すとしよう。
「分かるみたいだね。えっと君いくつ? お父さんとお母さんは?」
「え? どしたんだよ虎杖」
「イタドリ……? えっと、それが君のお名前かな?」
お父さんとお母さんは? という質問を投げかけて帰ってきた答えだとすると、両親のどちらかの名前ってのも考えられる。寧ろこちらの方が文脈的に筋が通っている。ここら辺には森の奥にある学園以外に家は無いけれど、名前がわかっただけ格段に探しやすくなったよね、うん。
そんな感じに呑気に考え込んで油断していた。少年が目の前で頭を抱えながら膝をついたことを気付くのに2秒もかかってしまうなんて。
「えっと、大丈夫ですか?」
「あーうん……ちょっとだるいかも」
「怠い? ちょっと失礼するよ」
体調不良か? 確かにこの国の言葉も知らない男の子が親もいない所で1人でいるとか、具合が悪くなっても仕方のない話しだ。可哀想に、ひょっとしたらもう何時間もこの森で彷徨っていたのかも。彼のでこに手を当ててみる、熱はなさそうだ。
あれ? 魔力が切れている、これが原因か。……というよりこの感じ、魔力のパスを繋げたことがない? この国、いやこの世界に住む人間は皆生まれついた時から自然との魔力パスが繋がっているはず。だから魔力が切れても時間が経てば大気から取り入れて回復ができる。
「これは、えっと……魔力のパスが外れてる? ま、まさか……」
それがないってことはつまり……彼はこの世界から来た存在じゃない? 伝説に語られる天使様のように?
「ちょ、ちょっと辛いから横になるな」
どうしてだ。魔術の知識がなさそうなのに彼の体は魔力を欲している、まるで今さっき大きな魔術や魔法を使ったかのようだ。今のまま放っておくと危ない。魔力を、つまりは誰かとのパスを求めて彷徨い、誰かを見つけ次第奉仕することになるだろう……
自然から魔力が供給されない場合、誰かとスキンシップを取ることによって一時的にだがパスをつなげることができる。そしてそのスキンシップというのが……言ってしまえば粘膜に触れるのが1番効率がいい。特に生殖器とか。だからその、魔力を欲する身体が無意識に奉仕してしまう可能性があるんだ。
駄目だ、それは駄目だ。こんな可愛い天使が公共の場でそんなことしたら、大事になるだろう。高鳴る心を抑えつけるも、自分から発せられる声は確かに低かった。
「その、結構まずい状態だからさ、早めに何とかしないと。今は応急治療しか出来ないけど……やる?」
わかった、その応急処置というやつをやってくれ。そういう彼は淫魔や愛の神にも勝るとも劣らない程に淫らだった。頬を赤く染め、僕の体に縋りつき、助けてくれと願う、それだけで意識を持っていかれそうだ。
いくら世紀の美少年相手だからって、こんな精通もしていないような幼い子にここまで興奮するとは。自分には少年愛の気があったんだ。そんな罪悪感すら背徳の悦びに変えてしまう自分が殊更恐ろしかった。
「……わかった」
自分がどんな表情をしているのかわからなかったが、彼の表情が少しだけ歪んだのを見て、ちょっぴり察してしまった。
森を抜け、外れの草原に出る。どうした事だ、いつになく妖精たちが楽しそうだ。踊るような暖かな風が身体に伝わった。湖も美しいな。ここら辺は学園生が自主練や魔術の道具を集めるためによく入り浸っているのだけど……今日はやけに静かだね。どうしたんだろう____いや違う、ひょっとしたら、つゆ払いでもうけた?
「あの少年……は、だれだ?」
恐らく子供だろう、150ほどの小柄な身体に似つかわしくないゴテゴテとした鞄と、ぶ厚い魔導書を持っている。着ている服もおおよそこの国ものとは思えなかった。
しかし僕が1番驚いたのはそこではない。その小さな彼が、遠目から見ても美しい容姿だったのだ。
これほどの美少年が近くに住んでいるのかと感心しながら、ひょっとしたら迷子か、はたまた森の異変は彼のせいか、様々な想いを交差させながら彼に近づいた。
「、ー!!!? !?」
ゆっくり近づくも勘づかれたようだ、振り返る彼。強い声、一音一音しっかり聞こえるハッキリとした言語だったが、それを解明することはできない。ここら辺の子ではないのか?
それにしても、間近で見るとそれはそれは美しかった。白い肌と漆黒の髪の対比、吸い込まれる程に神秘的な黒い瞳はこの国の誰もが羨むだろう。少し小さめの顔のパーツと彫りの浅ささもエキゾチックな雰囲気を醸し出している。
何も容姿だけではない。おとなしそうに見えて瞳は鷹のように真っ直ぐ。小柄な身体とブカブカの服とは似つかない、今のようにあわてていても冷静さを手放さない、そんな歴戦の戦士のようなライオンハートを感じる佇まい。伝説に出てくる天使に勝るとも劣らない……いやそれ以上の絶世の美少年だ。
「ー、ッ??」
「え?」
何かを伝えようとしている、こんな言葉もわからない慣れない土地で迷子になってしまってかわいそうに。この美少年を愛でたい気持ちと無事に親元に返してあげたい心が大喧嘩をしている。今は……若干後者が優勢かも。
「、、ーー、^ーッーー^?」
「えっと、こういう時は……」
「?ー~ーーーーッ??」
「そうだ、翻訳の魔術を使えば!」
……
…………
………………
「この国の言葉がわかるようにしたよ、僕の声聞こえてるかな?」
「く、国?」
美しいだけではない、彼の言動には不自然なところがそれはそれは沢山あった。言葉は無事に通じて情報は引き出せそうだが、そもそも何から聞いたらいいのかわからない。お家はどこにあるのか? その黒くて奇妙な衣服は君の一族の装束なのか? そんな年季ものな魔導書を持っていながら何故魔術を前にそんなにびっくりしたの?
わからないというよりあれだ、聞くことが多すぎるな。しょうがない、一つ一つ潰すとしよう。
「分かるみたいだね。えっと君いくつ? お父さんとお母さんは?」
「え? どしたんだよ虎杖」
「イタドリ……? えっと、それが君のお名前かな?」
お父さんとお母さんは? という質問を投げかけて帰ってきた答えだとすると、両親のどちらかの名前ってのも考えられる。寧ろこちらの方が文脈的に筋が通っている。ここら辺には森の奥にある学園以外に家は無いけれど、名前がわかっただけ格段に探しやすくなったよね、うん。
そんな感じに呑気に考え込んで油断していた。少年が目の前で頭を抱えながら膝をついたことを気付くのに2秒もかかってしまうなんて。
「えっと、大丈夫ですか?」
「あーうん……ちょっとだるいかも」
「怠い? ちょっと失礼するよ」
体調不良か? 確かにこの国の言葉も知らない男の子が親もいない所で1人でいるとか、具合が悪くなっても仕方のない話しだ。可哀想に、ひょっとしたらもう何時間もこの森で彷徨っていたのかも。彼のでこに手を当ててみる、熱はなさそうだ。
あれ? 魔力が切れている、これが原因か。……というよりこの感じ、魔力のパスを繋げたことがない? この国、いやこの世界に住む人間は皆生まれついた時から自然との魔力パスが繋がっているはず。だから魔力が切れても時間が経てば大気から取り入れて回復ができる。
「これは、えっと……魔力のパスが外れてる? ま、まさか……」
それがないってことはつまり……彼はこの世界から来た存在じゃない? 伝説に語られる天使様のように?
「ちょ、ちょっと辛いから横になるな」
どうしてだ。魔術の知識がなさそうなのに彼の体は魔力を欲している、まるで今さっき大きな魔術や魔法を使ったかのようだ。今のまま放っておくと危ない。魔力を、つまりは誰かとのパスを求めて彷徨い、誰かを見つけ次第奉仕することになるだろう……
自然から魔力が供給されない場合、誰かとスキンシップを取ることによって一時的にだがパスをつなげることができる。そしてそのスキンシップというのが……言ってしまえば粘膜に触れるのが1番効率がいい。特に生殖器とか。だからその、魔力を欲する身体が無意識に奉仕してしまう可能性があるんだ。
駄目だ、それは駄目だ。こんな可愛い天使が公共の場でそんなことしたら、大事になるだろう。高鳴る心を抑えつけるも、自分から発せられる声は確かに低かった。
「その、結構まずい状態だからさ、早めに何とかしないと。今は応急治療しか出来ないけど……やる?」
わかった、その応急処置というやつをやってくれ。そういう彼は淫魔や愛の神にも勝るとも劣らない程に淫らだった。頬を赤く染め、僕の体に縋りつき、助けてくれと願う、それだけで意識を持っていかれそうだ。
いくら世紀の美少年相手だからって、こんな精通もしていないような幼い子にここまで興奮するとは。自分には少年愛の気があったんだ。そんな罪悪感すら背徳の悦びに変えてしまう自分が殊更恐ろしかった。
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