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絶対氷河の侍
人間ってのは
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部屋に入る前にちょっと待っててねと言われて、その間に掃除をし始めた。ヒノマルの人達が掃除をしてくれていたとはいえ、患者の安心のために自分の手でもする姿は薬師の鏡だろう。トッカラムもそんな心遣いに胸打たれたのか、それともただの諦めの境地か、特に抵抗することなく俺に抱っこされながら待っている。……今動くと見張っている仁によからぬことを勘違いされるからかもしれないが。ほら今だって、
「おい今動いたろ、俺の恋人の目の前でおかしな事すんなよ、刺すぞ」
「ちょっと首動かしただけだっちゅーの! 自分の男大事なのは分かったから一旦落ち着け、ゴリラって言われても仕方がないぞ」
「……チッ」
「舌打ちすんな!」
「はいはい」
「返事は一回!」
こんな感じでボディーガードしてくれている。頼もしい気もするがトッカラムが可哀想だ。しかしここに来て余裕が出て来たのかいきなり年上ズラするもんで、仁も勢いを削がれたみたいだ。なんだろう、お兄さんってわけでも親父ってほどでもない、これはきっとアレだ。
「なあさ、お前って子供好き?」
「何でそんなこと聞くんだよ」
「いやその、子供のコロポックルに勉強教えたり色々面倒焼いてそうだから」
「は?」
「ああわかる。説教の仕方がセンコウみてぇだよな」
そうそうそれだ、いい言葉が見つからなくて歯痒い気持ちをしてたところ仁のナイスアシストが入った。叱り方もそうだし根がいいやつそうというか、目の前で掃除をテキパキとこなすアイツとはまた違う面倒見の良さを感じる。清志がどんな時でも見方をしてくれるタイプだとすれば、トッカラムは時に強めな激励の言葉をかけまた馬鹿な事をしようとする生徒を力尽くでも止めるみたいな、正しい道を進んで欲しい系の面倒見の良さだ。
まあそうでもなきゃたった1人で氷の妖怪とまで言われるほど戦うはずもないし、40人の勇者相手に先制攻撃や迎撃をするほど肝が座っているのはおかしな話だ。
「……子供は嫌いじゃないぜ。お前らも俺からしたらまだまだ若造だ、年長者として最低限の面倒は見てやらねえと」
「やっぱり、じゃあコロポックルの子供にも色んなこと教えてたりしたんか?」
「あと今更な気がすっけど本当にコロポックルの里を離れてよかったのかよ」
「はいはい落ち着け、質問は順番に答えるからな……それが出来るんなら俺はとっくの昔にあんなの辞めて教師になってらぁ」
それが出来る? 洞窟で少し話していた時もそうだったけど、今になって少しずつ確証が持てる、トッカラムは何か隠し事をしている。それも勇者と魔王のことは1ミリも関係していない、一応魔王なベルに対して全く感じない負い目や糸目のなさがそれを物語っている。多分その気になればスラスラと離せてしまいそうなものだ。
……それをここまで黙られたら逆に気になる。見当もつかない世界の危機に関する話より、目の前にいるやつの悩みや相談事の方が気になるってもんだ。まあそれは価値観の話だけど。どう聞き出そうか、そもそも会って間もないやつにそんなにバシバシと質問をしてもいいのだろうか。そんなことを考えながらも話は進んでいく。
「最初に会った時もそうだったけどよ、お前らは何か勘違いしてるよな」
なにを言っているのか考えているうちに、仁が何だよそれと反論して来た。速い、わからないことを無理して考えないタイプだ。
「精霊ってのはふわふわ浮いてて可愛くて、自然や人間に寄り添うものだって思ってるよな」
「うん」
「……人間と同じ思考回路してるって思ってるよな」
「そりゃそうだろ」
知能の有無に関してはトッカラム本人が証明しているようなものだ、それにコイツがこんな性格なだけで見た目は可愛いと思う。幼稚園生より小さい、多分100㎝いってないんじゃないんだろうか、身体も少しずんぐりむっくりな気がする。……言われる前に言っとくけどショタ今度はいえこんな幼児体型に欲情はしないからな、いやマジで。
するとトッカラムはあー……と複雑そうな、いいや違うなめんどくさそうな声を出した。隣の芝生は青く見るのか俺は人間になりたかったぜと言われる始末だ。そこまでコロポックルとしての生活は過酷なのだろうか、ここまでくれば知ってみたい気もする。
「えぇ……でも精霊って可愛いイメージなんだろ? 幻滅すっぞ」
「そのイメージがオレらの勘違いなら幻滅もクソもないだろ」
「仁の言い方はともかく、幻滅してもお前のことは嫌いにならないよう努力するさ」
しばらくしてようやく開いたその口からは、人間ってのは、______。
小声すぎて何を言ってんのかわからなかった。ただそれを誤魔化すように大きな声で、清志の掃除が終わったら話してやってもいいと言われた。真意なんてのは知らない、そもそも初対面に等しい精霊の感情の証明なんて出来っこない。俺ってひょっとしたら白状なんかな。いいや違うな、他人の思考に興味がないやつなら、こんなにトッカラムのことが心配になるわけがない。多分俺は優しい方、多分。
「おい今動いたろ、俺の恋人の目の前でおかしな事すんなよ、刺すぞ」
「ちょっと首動かしただけだっちゅーの! 自分の男大事なのは分かったから一旦落ち着け、ゴリラって言われても仕方がないぞ」
「……チッ」
「舌打ちすんな!」
「はいはい」
「返事は一回!」
こんな感じでボディーガードしてくれている。頼もしい気もするがトッカラムが可哀想だ。しかしここに来て余裕が出て来たのかいきなり年上ズラするもんで、仁も勢いを削がれたみたいだ。なんだろう、お兄さんってわけでも親父ってほどでもない、これはきっとアレだ。
「なあさ、お前って子供好き?」
「何でそんなこと聞くんだよ」
「いやその、子供のコロポックルに勉強教えたり色々面倒焼いてそうだから」
「は?」
「ああわかる。説教の仕方がセンコウみてぇだよな」
そうそうそれだ、いい言葉が見つからなくて歯痒い気持ちをしてたところ仁のナイスアシストが入った。叱り方もそうだし根がいいやつそうというか、目の前で掃除をテキパキとこなすアイツとはまた違う面倒見の良さを感じる。清志がどんな時でも見方をしてくれるタイプだとすれば、トッカラムは時に強めな激励の言葉をかけまた馬鹿な事をしようとする生徒を力尽くでも止めるみたいな、正しい道を進んで欲しい系の面倒見の良さだ。
まあそうでもなきゃたった1人で氷の妖怪とまで言われるほど戦うはずもないし、40人の勇者相手に先制攻撃や迎撃をするほど肝が座っているのはおかしな話だ。
「……子供は嫌いじゃないぜ。お前らも俺からしたらまだまだ若造だ、年長者として最低限の面倒は見てやらねえと」
「やっぱり、じゃあコロポックルの子供にも色んなこと教えてたりしたんか?」
「あと今更な気がすっけど本当にコロポックルの里を離れてよかったのかよ」
「はいはい落ち着け、質問は順番に答えるからな……それが出来るんなら俺はとっくの昔にあんなの辞めて教師になってらぁ」
それが出来る? 洞窟で少し話していた時もそうだったけど、今になって少しずつ確証が持てる、トッカラムは何か隠し事をしている。それも勇者と魔王のことは1ミリも関係していない、一応魔王なベルに対して全く感じない負い目や糸目のなさがそれを物語っている。多分その気になればスラスラと離せてしまいそうなものだ。
……それをここまで黙られたら逆に気になる。見当もつかない世界の危機に関する話より、目の前にいるやつの悩みや相談事の方が気になるってもんだ。まあそれは価値観の話だけど。どう聞き出そうか、そもそも会って間もないやつにそんなにバシバシと質問をしてもいいのだろうか。そんなことを考えながらも話は進んでいく。
「最初に会った時もそうだったけどよ、お前らは何か勘違いしてるよな」
なにを言っているのか考えているうちに、仁が何だよそれと反論して来た。速い、わからないことを無理して考えないタイプだ。
「精霊ってのはふわふわ浮いてて可愛くて、自然や人間に寄り添うものだって思ってるよな」
「うん」
「……人間と同じ思考回路してるって思ってるよな」
「そりゃそうだろ」
知能の有無に関してはトッカラム本人が証明しているようなものだ、それにコイツがこんな性格なだけで見た目は可愛いと思う。幼稚園生より小さい、多分100㎝いってないんじゃないんだろうか、身体も少しずんぐりむっくりな気がする。……言われる前に言っとくけどショタ今度はいえこんな幼児体型に欲情はしないからな、いやマジで。
するとトッカラムはあー……と複雑そうな、いいや違うなめんどくさそうな声を出した。隣の芝生は青く見るのか俺は人間になりたかったぜと言われる始末だ。そこまでコロポックルとしての生活は過酷なのだろうか、ここまでくれば知ってみたい気もする。
「えぇ……でも精霊って可愛いイメージなんだろ? 幻滅すっぞ」
「そのイメージがオレらの勘違いなら幻滅もクソもないだろ」
「仁の言い方はともかく、幻滅してもお前のことは嫌いにならないよう努力するさ」
しばらくしてようやく開いたその口からは、人間ってのは、______。
小声すぎて何を言ってんのかわからなかった。ただそれを誤魔化すように大きな声で、清志の掃除が終わったら話してやってもいいと言われた。真意なんてのは知らない、そもそも初対面に等しい精霊の感情の証明なんて出来っこない。俺ってひょっとしたら白状なんかな。いいや違うな、他人の思考に興味がないやつなら、こんなにトッカラムのことが心配になるわけがない。多分俺は優しい方、多分。
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