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絶対氷河の侍
ヒーラーは信用ならない
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ゆっくり落ちていたからか、船に着く頃にはすっかり低空飛行になっていて、なんの苦労もなしに再び床に足がつけたわけだ。高い所が嫌いな奴らは安心して少しずつ顔色を元に戻すことだろう、まあその前に……
「顔色が悪いやつ、全員医務室に組んだ今すぐに!」
「げ、錦織……いやこれ怪我とかじゃなくてシンプルに怖かっただけで……」
「そ、そうか__ならせめて何も異常がないか確かめさせてくれ、何もしないのは落ち着かない」
「えぇ……」
「暁彦頑張ってねー」
こんな感じでうちのクラスの保育士清志の手厚いサポートが待っているからな。不調がある時はもちろんなこと、どこにも問題がなくても100%のケアをしてくれる、ありがたいのか迷惑なのかは人それぞれだが、さっき連行された暁彦達は面倒なものだと思ったらしい。呑気な顔して手を振ってる薫、心の中でウケるって思っているのが隠せていないぞ。
「俺もいくぜ、さっきのトッカラムのせいで怪我してる奴がいるかもしれん。……凍傷も殴れば解決なか、それとも叩く、指で刺す?」
「あんまり痛いことはやめてあげてね。でもどれが、というか何処が一番効き目があるのかわからないから、全部試してみよっか」
「でもさ、そしたら無駄な怪我増えねえか?」
「しても僕たちがいれば治せるよ、痛みは消せるよう……努力する必要があるけど」
失念だった。ただの保育士なら無害なんだ、でもその傍には常に医療ヤクザと伏兵の僧侶が待ち構えていたんだ。患者を治療と記して遠慮なくガンガン殴る奴と、それを止めるそぶりを見せながら根本的な解決を何もせず寧ろ悪化させてる節がある僧侶。これほどまでに凶力無比なダブルコンボはそうそうないだろう。
「あ、コラお前達! 逃げるんじゃあない、ほらいい子達だから!」
「悪いな錦織、俺は、俺たちはまだ命が惜しいんだ」
「あとお前俺らの事何歳だと思ってんだ、そういうのは梓の弟やトッカラムだけにとどめとけ!」
「我が儘言うんじゃあない!」
「おい今俺のことガキ呼ばわりしただろ!」
2人の会話は遠くの連行された奴らの耳にも入ったみたいで、仕方がないと渋々清志について行ってた奴らがこりゃ堪らんと解放軍の如く反乱を起こしている。相変わらず俺たちのことを園児扱いしているみたいだし、何故だか飛び火したトッカラムが絡みに行ってとても俺が近づけるような雰囲気ではない。
逃げ出す気持ちもわかる、あのままだと医療ヤクザと伏兵の僧侶による人体実験が始まるし、それを乗り切っても保育士の清志による世話焼き地獄が待っている。食事から就寝まで赤ん坊のように世話をされて清志が母親だと徹底調教されるんだ、門限を破っちまった時の蓮くんと同じぐらい怖い。
「なんか、俺ら邪魔者?」
「そうだな。このままここにいるのもアレだし、部屋行っとくか?」
「……お前最前線で戦ってたしついでに見てもらえよ」
「やだオレ梓とイチャイチャしたい」
やっぱりな、まさかと思って鎌かけてみたがやっぱしそういう魂胆か。別に今日1日頑張ったご褒美なら上げてもいいけど、今はまだ昼だしな? せめて夜頼まれたらしてもいいけど……
「梓、平気か? 洞窟ではトッカラムのやつに執拗に襲われてたけど」
「え? うんまあ、怪我はしてないかな」
1人で仁に迫られた時のこと考えてたら、後ろから急に声がかかった。逃げた患者の捕獲を大河達に任せたのだろうか、少し落ち着いた様子の清志だ。奥で嫌だと叫びながら連行されている仲間たち、そしてまだ話は終わってないぞと明後日の方向で腹を立てているトッカラム。改めてなんだこの状況、早く喜助達帰ってこないかな。
「どうせなら医務室こいよ、腹減ってないか、お前には腰痛が付き物だけど、調子はいい感じか?」
「梓の腰はオレが鍛えてから問題ねえよ」
ここぞとばかりに世話を焼こうとしてくる清志にやはりというべきか、マウントを取ってくる。誰に向けての何の自慢なのかはさておき、清志は世話をする人間がトッカラムぐらいしか見当たらずソワソワしているみたいだ。しかもそいつは厳密にいうと人間ではない。
「あ、その……俺でよければ面倒見られる役してもいいぞ」
「ほ、本当に!? その、真田はどうだ?」
「……梓が一緒なら」
「おい人間、手を離せ」
そんなに世話をしたかったのか、もう誰でもいいんだな。警戒してんのか今度は仁が俺の腕から離れようとしない。まああの2人よりずっと安心な手当てをしてくれるだろう、あいつらと比べるのが間違いだけど。
「医務室はやめろ、いまアイツらと目を合わせたくない、主に七海アイツはダメだ」
「えぇ、あそこなら色々器具もあって助かるんだけど……じゃあ俺の部屋はどうだ、衛生状態に不備はないと思う」
「だから離せって、痛えよ!」
すっかり大河打撃療法がトラウマになった仁により、俺たち3人は清志の部屋で診てもらうこととなった。でも怪我はしてないと思う、逆に手が空いた清志のための治療だ。トッカラムの手を離さないのに執念を感じる。
ショタっ子な見た目には不釣り合いな低い男の声で叫んでいる(コロポックルは非力だから抵抗出来ない)そいつを哀れに思い、そして怯える仁の存在感をひしひしと感じつつ、清志についていった。
「顔色が悪いやつ、全員医務室に組んだ今すぐに!」
「げ、錦織……いやこれ怪我とかじゃなくてシンプルに怖かっただけで……」
「そ、そうか__ならせめて何も異常がないか確かめさせてくれ、何もしないのは落ち着かない」
「えぇ……」
「暁彦頑張ってねー」
こんな感じでうちのクラスの保育士清志の手厚いサポートが待っているからな。不調がある時はもちろんなこと、どこにも問題がなくても100%のケアをしてくれる、ありがたいのか迷惑なのかは人それぞれだが、さっき連行された暁彦達は面倒なものだと思ったらしい。呑気な顔して手を振ってる薫、心の中でウケるって思っているのが隠せていないぞ。
「俺もいくぜ、さっきのトッカラムのせいで怪我してる奴がいるかもしれん。……凍傷も殴れば解決なか、それとも叩く、指で刺す?」
「あんまり痛いことはやめてあげてね。でもどれが、というか何処が一番効き目があるのかわからないから、全部試してみよっか」
「でもさ、そしたら無駄な怪我増えねえか?」
「しても僕たちがいれば治せるよ、痛みは消せるよう……努力する必要があるけど」
失念だった。ただの保育士なら無害なんだ、でもその傍には常に医療ヤクザと伏兵の僧侶が待ち構えていたんだ。患者を治療と記して遠慮なくガンガン殴る奴と、それを止めるそぶりを見せながら根本的な解決を何もせず寧ろ悪化させてる節がある僧侶。これほどまでに凶力無比なダブルコンボはそうそうないだろう。
「あ、コラお前達! 逃げるんじゃあない、ほらいい子達だから!」
「悪いな錦織、俺は、俺たちはまだ命が惜しいんだ」
「あとお前俺らの事何歳だと思ってんだ、そういうのは梓の弟やトッカラムだけにとどめとけ!」
「我が儘言うんじゃあない!」
「おい今俺のことガキ呼ばわりしただろ!」
2人の会話は遠くの連行された奴らの耳にも入ったみたいで、仕方がないと渋々清志について行ってた奴らがこりゃ堪らんと解放軍の如く反乱を起こしている。相変わらず俺たちのことを園児扱いしているみたいだし、何故だか飛び火したトッカラムが絡みに行ってとても俺が近づけるような雰囲気ではない。
逃げ出す気持ちもわかる、あのままだと医療ヤクザと伏兵の僧侶による人体実験が始まるし、それを乗り切っても保育士の清志による世話焼き地獄が待っている。食事から就寝まで赤ん坊のように世話をされて清志が母親だと徹底調教されるんだ、門限を破っちまった時の蓮くんと同じぐらい怖い。
「なんか、俺ら邪魔者?」
「そうだな。このままここにいるのもアレだし、部屋行っとくか?」
「……お前最前線で戦ってたしついでに見てもらえよ」
「やだオレ梓とイチャイチャしたい」
やっぱりな、まさかと思って鎌かけてみたがやっぱしそういう魂胆か。別に今日1日頑張ったご褒美なら上げてもいいけど、今はまだ昼だしな? せめて夜頼まれたらしてもいいけど……
「梓、平気か? 洞窟ではトッカラムのやつに執拗に襲われてたけど」
「え? うんまあ、怪我はしてないかな」
1人で仁に迫られた時のこと考えてたら、後ろから急に声がかかった。逃げた患者の捕獲を大河達に任せたのだろうか、少し落ち着いた様子の清志だ。奥で嫌だと叫びながら連行されている仲間たち、そしてまだ話は終わってないぞと明後日の方向で腹を立てているトッカラム。改めてなんだこの状況、早く喜助達帰ってこないかな。
「どうせなら医務室こいよ、腹減ってないか、お前には腰痛が付き物だけど、調子はいい感じか?」
「梓の腰はオレが鍛えてから問題ねえよ」
ここぞとばかりに世話を焼こうとしてくる清志にやはりというべきか、マウントを取ってくる。誰に向けての何の自慢なのかはさておき、清志は世話をする人間がトッカラムぐらいしか見当たらずソワソワしているみたいだ。しかもそいつは厳密にいうと人間ではない。
「あ、その……俺でよければ面倒見られる役してもいいぞ」
「ほ、本当に!? その、真田はどうだ?」
「……梓が一緒なら」
「おい人間、手を離せ」
そんなに世話をしたかったのか、もう誰でもいいんだな。警戒してんのか今度は仁が俺の腕から離れようとしない。まああの2人よりずっと安心な手当てをしてくれるだろう、あいつらと比べるのが間違いだけど。
「医務室はやめろ、いまアイツらと目を合わせたくない、主に七海アイツはダメだ」
「えぇ、あそこなら色々器具もあって助かるんだけど……じゃあ俺の部屋はどうだ、衛生状態に不備はないと思う」
「だから離せって、痛えよ!」
すっかり大河打撃療法がトラウマになった仁により、俺たち3人は清志の部屋で診てもらうこととなった。でも怪我はしてないと思う、逆に手が空いた清志のための治療だ。トッカラムの手を離さないのに執念を感じる。
ショタっ子な見た目には不釣り合いな低い男の声で叫んでいる(コロポックルは非力だから抵抗出来ない)そいつを哀れに思い、そして怯える仁の存在感をひしひしと感じつつ、清志についていった。
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