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絶対氷河の侍
合法ショタ
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なんで氷の妖怪が通りすがりの民間人や俺達に牙を向いたのか、魔王の命令なのか、それでも他に理由があるのか定かではない。謎は残るものの、少しずつ和の国に向けて前進していた。何度か疲れて早歩きになったりしながら(俺は仁にずっとおぶられている)洞窟を前進していると、背後から声がかかった。
「ねえねえ、妖怪さん目が覚めたよ!」
「おい怪力人間め、手を離せ!」
喜んで再び妖怪を振り回す健吾と、それに全力で抵抗を示す氷の妖怪。妖怪は見た感じ3歳から4歳ぐらいの男の子に見えるが、話し方からしてもっと大人なんだと思う。対する健吾は実年齢は俺と同じはずなのに姿と言動が幼い、なんだこのコンビ。もうこいつは無力化したも同然だし、これ以上すると少し可哀想だからやめておけと一言言っておいた。
素直な健吾はそれだけでもやめてくれる。九死に一生を得たような顔色になってしまっている妖怪を不憫に思いつつ、会話が出来るのか様子を伺った。ぜえぜえと苦しそうな呼吸が治った所で、こいつは顔を上げた。
「おいそこの!」
「ん? ……俺?」
「そうだ。そこのエロいの、この怪力男から助けてくれ!」
エロいの。一瞬頭が真っ白になったけどなんとか落ち着きをとり戻りた。妖怪から見ても魅了は通用するのだろうか、そしてさっき自分が倒した(トドメ刺したのは健吾)奴に対して威嚇している仁はどうやって宥めるべきなんだろう。
「妖怪の分際で梓の魅力を知った口で語るとは……」
「どーどー落ち着け。一度倒した奴に対して怒るな」
「わかってる……」
倒したっていうなと大声で注意される。そのやりとりでクラスメイトが全員氷の妖怪の目覚めに気がついたみたいで、全員が後ろに注目していた。随分と小さいことに驚いているのは俺だけじゃなかった、一部の人間はそれ以外のもっと根本的なことが気になってたみたいだけど。
「おい妖怪、人を襲う。お前達の王である魔王を阻む俺達を攻撃するのはこの際目を瞑るとして、なんで罪もない一般人も襲う?」
高松が俺の疑問を全部言葉にしてくれた。そもそもなんで俺たちはベルが悪さしてるのかすらも知らない。殆どの仲間にとっては興味があることではないと思うが、俺はその、ホロケウさんの事で色々あったし気にはなってる。ベルから人間を攻撃しろといった命令があるのなら納得はしないけど理解できる、そうではないとしたら、いったいお前はなんの恨みで人を攻撃するのかということだ。
「……そこの暴力男から離してくれたら説明してやる」
「うーん、柿原手を離してくれ」
「あとそこの妙にエロい男が抱っこしてくれるならもっと色々離してやる」
「なんだァテメェ……」
落ち着くんだ仁。そんな阿吽の相みたいな顔しながら俺は落ち着いてるとか説得力が秒で消し飛ぶことをいうんじゃあない。……そこまで悪い子じゃなさそうだからという理由で承諾する、おぶってくれている仁の怒る声を知らんぷりしながら、健吾から受け取ったその少年を抱っこした。思ったよりも軽いな、多分同じぐらいの人間の男の子よりかは幾分軽いと思う。
「ふん、なかなか悪くない特等席だな。暴力もしてこないし、エロいし」
「あ、ありがとう? でもあんまエロいって言わない方がいいと思うけど……」
「ほうほう照れているのか、ういやつめ」
いやいやそういうことではなくって。お前がエロいって単語使うたびに俺の下にいるやつが怒りで震えているんだ、それが怖くて仕方がないというのが理由なんだけども。ほら今さっき小声で変態エロ親父がって言ったぞ俺には聞こえた。しかしそれには屈さない氷の妖精は話をようやく始めてくれた。
「俺は氷の妖怪なんて言われてるが、その正体は今はなきフキの下の者、コロポックルの末裔なんだ」
コロポックル、主にアイヌで信仰されてる精霊のようなもの。やっぱり獣人と言いホロケウさんと言い、コグダムにはアイヌ関連の共通点が多いな。
コロポックルと獣人はゴグダムに流れてきた学者達に居場所を奪われた、特に獣人とは違い人間という括りではなかったコロポックルの扱いはひどいものだったようだ。住んでいたフキ畑は燃やされ、元々魔力頼みで力が弱いせいで魔物世界にも馴染めず、寒さに強いという利点を生かしてこのように洞窟で細々と暮らすしか術がなかったという。
「それはその、大変だったな……」
「まあな。まあそのおかげであのよくわからん新入りの魔王にも目をつけられてないし、ただあそこで他のコロポックルを守るのに専念できたさ」
他のコロポックルのために戦っていたのも新情報だ。なんだよ全然悪いやつじゃないじゃん、その言葉を信じるならベルとの繋がりもないみたいだし。
「しっかしたまには人間に負けてみるもんだな。こんなべっぴんさんそういないぜ、誰もう少し……」
「うわ、どこ入って! ひゃう!」
これを皮切りに仁が暴れ始めて、総司に取り押さえられたのはそう遠くない数分後の話。
「ねえねえ、妖怪さん目が覚めたよ!」
「おい怪力人間め、手を離せ!」
喜んで再び妖怪を振り回す健吾と、それに全力で抵抗を示す氷の妖怪。妖怪は見た感じ3歳から4歳ぐらいの男の子に見えるが、話し方からしてもっと大人なんだと思う。対する健吾は実年齢は俺と同じはずなのに姿と言動が幼い、なんだこのコンビ。もうこいつは無力化したも同然だし、これ以上すると少し可哀想だからやめておけと一言言っておいた。
素直な健吾はそれだけでもやめてくれる。九死に一生を得たような顔色になってしまっている妖怪を不憫に思いつつ、会話が出来るのか様子を伺った。ぜえぜえと苦しそうな呼吸が治った所で、こいつは顔を上げた。
「おいそこの!」
「ん? ……俺?」
「そうだ。そこのエロいの、この怪力男から助けてくれ!」
エロいの。一瞬頭が真っ白になったけどなんとか落ち着きをとり戻りた。妖怪から見ても魅了は通用するのだろうか、そしてさっき自分が倒した(トドメ刺したのは健吾)奴に対して威嚇している仁はどうやって宥めるべきなんだろう。
「妖怪の分際で梓の魅力を知った口で語るとは……」
「どーどー落ち着け。一度倒した奴に対して怒るな」
「わかってる……」
倒したっていうなと大声で注意される。そのやりとりでクラスメイトが全員氷の妖怪の目覚めに気がついたみたいで、全員が後ろに注目していた。随分と小さいことに驚いているのは俺だけじゃなかった、一部の人間はそれ以外のもっと根本的なことが気になってたみたいだけど。
「おい妖怪、人を襲う。お前達の王である魔王を阻む俺達を攻撃するのはこの際目を瞑るとして、なんで罪もない一般人も襲う?」
高松が俺の疑問を全部言葉にしてくれた。そもそもなんで俺たちはベルが悪さしてるのかすらも知らない。殆どの仲間にとっては興味があることではないと思うが、俺はその、ホロケウさんの事で色々あったし気にはなってる。ベルから人間を攻撃しろといった命令があるのなら納得はしないけど理解できる、そうではないとしたら、いったいお前はなんの恨みで人を攻撃するのかということだ。
「……そこの暴力男から離してくれたら説明してやる」
「うーん、柿原手を離してくれ」
「あとそこの妙にエロい男が抱っこしてくれるならもっと色々離してやる」
「なんだァテメェ……」
落ち着くんだ仁。そんな阿吽の相みたいな顔しながら俺は落ち着いてるとか説得力が秒で消し飛ぶことをいうんじゃあない。……そこまで悪い子じゃなさそうだからという理由で承諾する、おぶってくれている仁の怒る声を知らんぷりしながら、健吾から受け取ったその少年を抱っこした。思ったよりも軽いな、多分同じぐらいの人間の男の子よりかは幾分軽いと思う。
「ふん、なかなか悪くない特等席だな。暴力もしてこないし、エロいし」
「あ、ありがとう? でもあんまエロいって言わない方がいいと思うけど……」
「ほうほう照れているのか、ういやつめ」
いやいやそういうことではなくって。お前がエロいって単語使うたびに俺の下にいるやつが怒りで震えているんだ、それが怖くて仕方がないというのが理由なんだけども。ほら今さっき小声で変態エロ親父がって言ったぞ俺には聞こえた。しかしそれには屈さない氷の妖精は話をようやく始めてくれた。
「俺は氷の妖怪なんて言われてるが、その正体は今はなきフキの下の者、コロポックルの末裔なんだ」
コロポックル、主にアイヌで信仰されてる精霊のようなもの。やっぱり獣人と言いホロケウさんと言い、コグダムにはアイヌ関連の共通点が多いな。
コロポックルと獣人はゴグダムに流れてきた学者達に居場所を奪われた、特に獣人とは違い人間という括りではなかったコロポックルの扱いはひどいものだったようだ。住んでいたフキ畑は燃やされ、元々魔力頼みで力が弱いせいで魔物世界にも馴染めず、寒さに強いという利点を生かしてこのように洞窟で細々と暮らすしか術がなかったという。
「それはその、大変だったな……」
「まあな。まあそのおかげであのよくわからん新入りの魔王にも目をつけられてないし、ただあそこで他のコロポックルを守るのに専念できたさ」
他のコロポックルのために戦っていたのも新情報だ。なんだよ全然悪いやつじゃないじゃん、その言葉を信じるならベルとの繋がりもないみたいだし。
「しっかしたまには人間に負けてみるもんだな。こんなべっぴんさんそういないぜ、誰もう少し……」
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これを皮切りに仁が暴れ始めて、総司に取り押さえられたのはそう遠くない数分後の話。
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