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絶対氷河の侍
まさかの結末
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いきなり外堀を埋めることなく直球で攻撃が来たもんだから、流石に驚いている。隠れている人の中に己が苦手とする炎の魔術が使える者がいることが分かったのだから、あえてそれを避けたのは考えたら当然の話なのだけど。能力は強いが戦い慣れていない俺たちからすれば大きな衝撃だ。
しかしその中でも抜きん出て能力が高いのがいる。来ることがわかっていたように落ち着いているのが1人、常に出たとこ勝負だからどっから来ても驚いたりしないのが1人。
その2人が、刀と剣を抜く。
「風竜の鎌鼬《ドラゴ・ゲール》!!」
「連極双舞《れんきょくそうまい》!!!」
つぶてなんぞこれだけで十分じゃあと言わんばかりと突風。全方位に放ったそれは最も簡単に無数の氷を吹っ飛ばした。俺達は氷の影に隠れていたから事なきを得たけど……その大きな氷は痛々しいつぶてがぶつかって砕けた跡がある。
「__この程度の有象無象、ものの数ではない」
「あ、はは! お前そんな言葉使えるほど頭良くないだろ、別人になっちゃった?」
「んだと羽原! ……この刀抜くとなんかその、頭良くなる気がするだけだ、そんなんじゃねえよ」
「そうそうそれが普段の真田だよね~語彙力皆無でアホ面で蛆虫も餓死しそうな正直者って感じー」
……あの2人強いな。他の仲間が迎撃しようと武器を構えたその時には既に技が決まっていた。実際俺も一瞬過ぎて何が思っているのかわからなかった。しかもなんかカッコいいな。仁お前さっきの粉砕突きはどこいったなんだよ連極双舞ってカッコいいな、オリジナル以外にもちゃんとそういう技あるんだったら最初から使ってくれ。
そして薫なんであんなに強いのに今まで戦わなかったんだよ。ドラゴンがいないから思うようにいかないとか言っておきながら普通に戦ってるし、なんなら後ろに緑のドラゴンっぽい陰が見えるのはなんなんだ。普通にカッコよくて羨ましいなんで俺って踊り子なんだろうと改めて思ってしまうぐらいには。
「しっかしお前魔法なんか使えたんか、騎士って付いてんのに」
「竜騎士だよ。今回竜がいなかったから魔力で模造品作ってみたけど、やっぱたかが知れてるねーそこら辺でドラゴン拾えないかな~」
「それは……無理なんじゃねえの?」
ドラゴンがどれだけ珍しいかわからない素人の俺でも中々の無茶振りをしているんだなとわかる。その模造品も十分カッコよくて強いと思うけど、それでもモノホンが1番か、ドラゴンが強いという俺たちの世界の認識は間違っていなかったみたいだ。
「おや、彼処に凶星の導きを感じ深淵の繋がりを得た妖者が一人と……」
訳:おや、あそこに負けを確信して絶望している妖怪が一人いますよ。
ふと横を見れば確かに困り果てた顔をしてある妖怪1人。まさか全身全霊のつぶて攻撃がたった2人でやり過ごされるなんて思ってもなかったんだろう。毛皮みたいなものをかぶっていて姿は見えないけど、ずいぶん小さく見える。相当驚いているようで今にも泳いでいる状態を投げ出して飛んで逃げてきそうな……
「あ、逃げた」
「逃すかよ。ちょっと弱めな翼襲断剣《つばさしゅうだんけん》!」
ちょっと弱めの名の通り、さっきの技に比べたら威力は低くなっている。しかしそれでも妖怪が被っている毛皮を吹き飛ばして地面に落とすぐらいは容易い話だ。自らを隠す最後の砦も無くした妖怪は、俺たちの方をまっすぐ見る。黒い髪に白い肌わ、まるで人間のようなその姿、妖怪だと言われなかったらただの可愛い男の子だと勘違いしてしまう。
もちろんその容姿に驚いたのは俺だけじゃない。妖怪というともっと禍々しいのを想像していただけに、全員が頭に思い浮かんだ言葉はただ一つ、想像してたんと違う。こうなったら玉砕と覚悟した顔もまた愛らしかった。
「わー! 君可愛いね、妖怪さんなの?」
「うわ、何をする人間が!」
しかも人間の言葉を使ってやがる、ますます人間みたいだな。健吾が抱っこして飛び跳ねているが本人からしたらたまったものではないだろう、もちろんのことだが抵抗している。ぶんぶんと振り回されて少し可哀想だ。
「柿原くん、これ以上したら妖怪の目が回っちゃうよ」
「ん? あわわー! ごめんなさい! どうしようみんな妖精さんぐったりしてるよ!」
「えっと……とにかく俺らの勝ち?」
「まさかトドメを刺したのが柿原の抱擁とはな」
「久々に柿原社長が出て来たな……」
まさかの形で勝利を収めたものの、目を回す妖怪をいたく気に入った健吾が離してくれない。洞窟に出るまでと約束して、健吾が抱えることになった。……何故か俺も引き続き仁におぶられている。さっきまであんなに派手にバトルしてたのになんで元気なんだ。
「氷の妖怪ってのは大したことなかったな」
「あんなのに他の人たちは手こずってたんだろ、やっぱ俺たち最強?」
チート能力の強さを体感して調子に乗っているメンバーもちらほらいて気の緩みが気になったが、今は走るのを再開した。
しかしその中でも抜きん出て能力が高いのがいる。来ることがわかっていたように落ち着いているのが1人、常に出たとこ勝負だからどっから来ても驚いたりしないのが1人。
その2人が、刀と剣を抜く。
「風竜の鎌鼬《ドラゴ・ゲール》!!」
「連極双舞《れんきょくそうまい》!!!」
つぶてなんぞこれだけで十分じゃあと言わんばかりと突風。全方位に放ったそれは最も簡単に無数の氷を吹っ飛ばした。俺達は氷の影に隠れていたから事なきを得たけど……その大きな氷は痛々しいつぶてがぶつかって砕けた跡がある。
「__この程度の有象無象、ものの数ではない」
「あ、はは! お前そんな言葉使えるほど頭良くないだろ、別人になっちゃった?」
「んだと羽原! ……この刀抜くとなんかその、頭良くなる気がするだけだ、そんなんじゃねえよ」
「そうそうそれが普段の真田だよね~語彙力皆無でアホ面で蛆虫も餓死しそうな正直者って感じー」
……あの2人強いな。他の仲間が迎撃しようと武器を構えたその時には既に技が決まっていた。実際俺も一瞬過ぎて何が思っているのかわからなかった。しかもなんかカッコいいな。仁お前さっきの粉砕突きはどこいったなんだよ連極双舞ってカッコいいな、オリジナル以外にもちゃんとそういう技あるんだったら最初から使ってくれ。
そして薫なんであんなに強いのに今まで戦わなかったんだよ。ドラゴンがいないから思うようにいかないとか言っておきながら普通に戦ってるし、なんなら後ろに緑のドラゴンっぽい陰が見えるのはなんなんだ。普通にカッコよくて羨ましいなんで俺って踊り子なんだろうと改めて思ってしまうぐらいには。
「しっかしお前魔法なんか使えたんか、騎士って付いてんのに」
「竜騎士だよ。今回竜がいなかったから魔力で模造品作ってみたけど、やっぱたかが知れてるねーそこら辺でドラゴン拾えないかな~」
「それは……無理なんじゃねえの?」
ドラゴンがどれだけ珍しいかわからない素人の俺でも中々の無茶振りをしているんだなとわかる。その模造品も十分カッコよくて強いと思うけど、それでもモノホンが1番か、ドラゴンが強いという俺たちの世界の認識は間違っていなかったみたいだ。
「おや、彼処に凶星の導きを感じ深淵の繋がりを得た妖者が一人と……」
訳:おや、あそこに負けを確信して絶望している妖怪が一人いますよ。
ふと横を見れば確かに困り果てた顔をしてある妖怪1人。まさか全身全霊のつぶて攻撃がたった2人でやり過ごされるなんて思ってもなかったんだろう。毛皮みたいなものをかぶっていて姿は見えないけど、ずいぶん小さく見える。相当驚いているようで今にも泳いでいる状態を投げ出して飛んで逃げてきそうな……
「あ、逃げた」
「逃すかよ。ちょっと弱めな翼襲断剣《つばさしゅうだんけん》!」
ちょっと弱めの名の通り、さっきの技に比べたら威力は低くなっている。しかしそれでも妖怪が被っている毛皮を吹き飛ばして地面に落とすぐらいは容易い話だ。自らを隠す最後の砦も無くした妖怪は、俺たちの方をまっすぐ見る。黒い髪に白い肌わ、まるで人間のようなその姿、妖怪だと言われなかったらただの可愛い男の子だと勘違いしてしまう。
もちろんその容姿に驚いたのは俺だけじゃない。妖怪というともっと禍々しいのを想像していただけに、全員が頭に思い浮かんだ言葉はただ一つ、想像してたんと違う。こうなったら玉砕と覚悟した顔もまた愛らしかった。
「わー! 君可愛いね、妖怪さんなの?」
「うわ、何をする人間が!」
しかも人間の言葉を使ってやがる、ますます人間みたいだな。健吾が抱っこして飛び跳ねているが本人からしたらたまったものではないだろう、もちろんのことだが抵抗している。ぶんぶんと振り回されて少し可哀想だ。
「柿原くん、これ以上したら妖怪の目が回っちゃうよ」
「ん? あわわー! ごめんなさい! どうしようみんな妖精さんぐったりしてるよ!」
「えっと……とにかく俺らの勝ち?」
「まさかトドメを刺したのが柿原の抱擁とはな」
「久々に柿原社長が出て来たな……」
まさかの形で勝利を収めたものの、目を回す妖怪をいたく気に入った健吾が離してくれない。洞窟に出るまでと約束して、健吾が抱えることになった。……何故か俺も引き続き仁におぶられている。さっきまであんなに派手にバトルしてたのになんで元気なんだ。
「氷の妖怪ってのは大したことなかったな」
「あんなのに他の人たちは手こずってたんだろ、やっぱ俺たち最強?」
チート能力の強さを体感して調子に乗っているメンバーもちらほらいて気の緩みが気になったが、今は走るのを再開した。
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