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後悔で穴だらけ

昨日はお楽しみでしたね

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「はー……おはよう」

「おはよう梓。朝から気分悪いのか?」

「魔王のやつが夢の世界にまたきた」

「……なんもされなかったか?」

目覚めると目の前に仁がいて安心した。何もされなかったとは言ったけど、仁曰くあとで委員長とかにも教えとくとの事だ。ホロケウさんが朝食の準備が出来たとの話を聞いたから身なりを整えて(やってたのがバレないように)食事処は向かった。

………………

「おはよー2人とも、梓は手のやつ数字減った?」

「うん減った。49になってたぞ」

「結構身が削られる思いだな……」

「なんでお前のほうがダメージ受けてんの」

ここまで来ると逆に冷静になるけれど、彼氏の仁が気力を削がれている。あと49日までに魔王を殺す……それが答えだ、今更とやかく言われたくはないが、それでも無理しているかと聞かれたら珍しく無理をしていると答える。いつもなら無茶しないのが俺の主義だけど、今回に関しては緊急事態だ。

「おはようございます巳陽さん。真田さんもご一緒でしたか」

ホロケウさんは昨日通りのちゃんとした学長服に似つかない家庭的なエプロンを身にまとっている。朝食は炊いた米に豚汁と白菜のおひたし……ビックリするぐらいの和食だ。

「おや、巳陽さん方……」

挨拶しにわざわざこっちまで来てくれたホロケウさんを労っていると、ふと何かに気がついたような顔をされてしまう。……まさかな、いやいやそんな訳はないだろうと思っている。身なりはちゃんとしているし、かなりすました感じで登場したはずだ。こら仁め心配そうな視線を向けてくるんじゃあない、バレはしないけど感づかれてしまうだろ。

とにかく来て早々おっぱじめるような奴らだと思われるのはなんかやだ。なんでもない風を装って適当に会話をしておかなくては。嘘を勘づくのは得意なくせにつくのは下手な仁は、俺がサポートしていけば大丈夫だろう。

「あ、あの、ベッドすごいふかふかであったかかったです!」

「そうですか、それは良かったです。疲れた皆様に休んで頂けるのは嬉しゅうございますね」

「はい本当に。めちゃくちゃ早足で雪道歩いてきた甲斐がありました……」

「いえそうではなく、もちろんその意もありましたが、もっと違う事にございます」

……嫌な予感がする。ホロケウさんは大人だし良い人だからそれで笑うことはないだろうし、若いですねだけで済まされそうなところあるけど、それでも身体中を嫌な汗が駆け巡った。

「なんと言いますか、若さとは羨ましいですよ。今晩はお楽しみでしたね」

わざと小声で言ってくれたおかげか他に聞いていた人間は誰もいない、ホロケウさんもその後特に詮索をせずすぐに朝食の準備に戻ってしまった。結果周りから見たらなんで顔赤くしてんのかわからない変な2人組という具合になっている。勘のいい者はああヤッたんだなと言った感じで鈍感な者は何か悪い者でも食べたのだろうか、そんぐらいだ。

「「「いただきます!!!」」」

いつもよりも大きく聞こえた食事の挨拶も隣の仁は声量が少ない、かくいう俺もそうだ。いくつもの考えが頭をよぎる、まず何を隠そう何故バレてしまったのかという点だ。昨日から言ってたけど俺は一度も巳陽と名乗ったことはない、もっと突き詰めればトントン拍子に俺たちを勇者御一行として向かい入れたのにも疑問が残る。

ベルトルトさんが皇子様が事前に教えていたというのも考えたけれど、それでも事実確認だのなんだなしてもう少し警戒されてもおかしくないはずだ。それなのにホロケウさんは一眼で俺たちの立場境遇だけならまだしも、誰がリーダーなのか、そして名前までも言い当ててしまった。老人の勘だろうか、いいや流石にそれはない。いくら若者では遠く及ばない長年の経験と知識があったとしても、それはもう超能力の次元だ。

「巳陽さん、昨日のことなのですが……」

「は、はい!」

「昨日は色々ありまして機会に恵まれませんでしたが……今日こそは是非2人でお話しをよろしいですか?」

普段返事で答えてしまった。仁も老人相手ならセーフなのかそれとも恥ずかしさで頭があまり回っていないのか、ボーッとしながら許可をくれた。何を話すつもりなのだろう。昨日から話したかったことだから夜のお楽しみの事ではないはずだ、リーダーでもエースでもない俺に事前から話をしたがるなんて狙いが本気で読めない。

「どうせならお茶請けを準備しましょうかね、ちょうどグルーデンの伝統的なお菓子タルトを模倣したモンブランがありますので、それにあったお茶を準備しましょう」

「あの、お気にならさず……」

タルトを模倣したモンブラン……モンブランタルトのことだろうか。仁のために一切れ残しておくように伝えておこう。ひょっとしてただ話がしたいだけなのか、たしかに俺が勇者の中で1番変な格好してるからそれで興味を持たれているのかも。そんなことを考えつつ来たるべきお茶会のため、気合を入れ直そうと食事を口に運んだ。
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