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タイムリミット
昔? ⭐︎
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確か俺は寝たはずなんだ、実際身体がものすごく重い。なのに眠りが浅いのか夢を見ているようだ、見渡す限りの真っ暗で手が慣れるのにも一苦労だ。……あーこの夢は前にも見たことあるな、しかも今回はご丁寧に寝た時の姿つまり全裸だ。
「やあアズサ、昨日ぶりだね」
「……」
「無視かい!?」
腹がたった。目の前で飄々と笑っている魔王に対してではない、昨日のあの言葉を忘れていた俺に対してた。明日の夜に逢いにくるってのは俺の夢に出てくるぞってことだったのか。
「本当に素直で正直だね、心も読みやすくて澄んでいる」
「褒めてんのか、貶してんのか?」
「褒めているのさ。さあ今日はどんな冒険をしたんだい、答えてごらん」
「心読めるんだろ、いちいち聞くなよ」
「そんなこと言わないで、こう見えて人との会話は大好きなんだ。さて……どんな出会いや冒険をしたのかなー……」
相変わらず掴みどころのない性格だなと呆れている。……夜したこと以外は人様にバレても問題のない行動だと信じているけれど。しかしあんだけウッキウキで心読んでた魔王はしばらくすると、ふーんと言いながら真顔で俺を見下ろし始めた。やはり仁としたことがバレたのか? ……いいじゃないか、恋人なんだし。お前に一々言われる筋合いはねえよ。
「いや、そうじゃあないんだ。真田仁のことはどうでもいい、来たるべき時が来れば忘れるものだからね」
忘れねえよ何言ってんだ。……もし身体が動けたら、すぐにでも捨て身で殺しに行けるのに……!
「そんなこと言わないで。僕はアズサを傷付けたくない、今後の夫婦生活にも支障が生じるだろうし……」
「そんなもんねえから。大体なんであからさまに不機嫌になったんだよ」
「気にかけてくれてるの?」
「な訳あるかい、理由がわからんからスッキリせんだけや」
変わった喋り方だねと言われる。……方言を矯正するにはまだまだ鍛錬の積み重ねが大事なようだ。
「うーん……話しても面白くないからね。しかしアイツもしぶといな、まだ生きてんのか……悪いことじゃないけど、これは僕も知らんぷりできないね」
「おい、まだ生きてるって……」
「大丈夫大丈夫、梓が気にすることないから。それよりもぉ、僕ともいいことしない?」
「しない」
返答と共に近づいてくる手を視線で無理矢理払いのける、しかしそれで諦めることはなく、戯れ合うように俺の身体にまとわりついてきた。精神的に幼いんだよな、そのくせ呪いの指輪とか恐ろしいものを考えつくんだから訳がわからん。非力でしかも全裸な俺に対抗する手段はない。背中から腰にかけて人差し指でツゥーッと線を引くように撫でられると、これは我慢できたけど体はド派手にビクンと動いた。
「ッッ……やめろや」
「気持ちいいでしょ? 隠さなくてもいいからね、ちゃんとたっぷりイかせてあげる」
「い、いやだッ」
「うーん……気持ちいいくせに、嫌だって言うのは本心なんだから、よくわからないね」
わからんのはお前の方だ。自分から意味深な言動をしておいて、実際何がと聞かれれば答えることはしない上にこういうことしてはぐらかそうとしている。……魔王のことは興味もないし出来れば近づきたくないけど、一方的な口撃を繰り返すのもそろそろ限界が近づいてきた。
「へーやっぱり優しいね」
「ちがわい、しっくり来ないことに労力使いたくないだけだ」
突っぱねるように言ってやると、ようやく手を離してくれた。俺には何考えてんのかなんてわからんからこそ、こいつの口から聞きたい。気の所為だったらそれでいい。……なんでこんなにこいつのこと気にかけてんだよ俺は、こんなんじゃあお人好し超えて間抜けとか言われても仕方がないな。
「いやいいんだよ。よく考えたらいつかはお嫁さんになる人の前でいきなり隠し事なんていけないよね」
「あれだぞ、言っとくけどマジでならねえからな」
「今はね。まあ1つだけネタばらしするとしたら……少し昔を思い出した。それだけだよ」
ネタバラシになってないしなんなら答えどころかヒントですらないぞ。やっぱこいつハナから話す気なんてなかったんだ、散々期待させておいて……まあ俺が魔王の戯言を真剣な顔して勝手に聞き入ってただけなところあるけど。
「そうなふうに言わないで、僕は君の前だけでは絶対に嘘をつかない。また明日の夜会おうね、今度こそはエッチなことしよっか!」
しない。はよ帰れ。釈然としないままアイツが帰ると、暗闇に光が差し込める。ああこれは朝日だ、今日は生き延びたんだな……
………………
「よう梓、おはようさん」
「ん……おはよう」
仁が隣で寝ている。メチャクチャ寝顔鑑賞されてて恥ずかしい思いをしたが、やっぱ仁の胸で抱きしめられるのが1番落ち着くなと、強く抱きしめた。手のひらをチラリと見たら、もちろんのこと文字は29になっていた。
俺が仁たちを忘れるまでのタイムリミット、
あと29日。
「やあアズサ、昨日ぶりだね」
「……」
「無視かい!?」
腹がたった。目の前で飄々と笑っている魔王に対してではない、昨日のあの言葉を忘れていた俺に対してた。明日の夜に逢いにくるってのは俺の夢に出てくるぞってことだったのか。
「本当に素直で正直だね、心も読みやすくて澄んでいる」
「褒めてんのか、貶してんのか?」
「褒めているのさ。さあ今日はどんな冒険をしたんだい、答えてごらん」
「心読めるんだろ、いちいち聞くなよ」
「そんなこと言わないで、こう見えて人との会話は大好きなんだ。さて……どんな出会いや冒険をしたのかなー……」
相変わらず掴みどころのない性格だなと呆れている。……夜したこと以外は人様にバレても問題のない行動だと信じているけれど。しかしあんだけウッキウキで心読んでた魔王はしばらくすると、ふーんと言いながら真顔で俺を見下ろし始めた。やはり仁としたことがバレたのか? ……いいじゃないか、恋人なんだし。お前に一々言われる筋合いはねえよ。
「いや、そうじゃあないんだ。真田仁のことはどうでもいい、来たるべき時が来れば忘れるものだからね」
忘れねえよ何言ってんだ。……もし身体が動けたら、すぐにでも捨て身で殺しに行けるのに……!
「そんなこと言わないで。僕はアズサを傷付けたくない、今後の夫婦生活にも支障が生じるだろうし……」
「そんなもんねえから。大体なんであからさまに不機嫌になったんだよ」
「気にかけてくれてるの?」
「な訳あるかい、理由がわからんからスッキリせんだけや」
変わった喋り方だねと言われる。……方言を矯正するにはまだまだ鍛錬の積み重ねが大事なようだ。
「うーん……話しても面白くないからね。しかしアイツもしぶといな、まだ生きてんのか……悪いことじゃないけど、これは僕も知らんぷりできないね」
「おい、まだ生きてるって……」
「大丈夫大丈夫、梓が気にすることないから。それよりもぉ、僕ともいいことしない?」
「しない」
返答と共に近づいてくる手を視線で無理矢理払いのける、しかしそれで諦めることはなく、戯れ合うように俺の身体にまとわりついてきた。精神的に幼いんだよな、そのくせ呪いの指輪とか恐ろしいものを考えつくんだから訳がわからん。非力でしかも全裸な俺に対抗する手段はない。背中から腰にかけて人差し指でツゥーッと線を引くように撫でられると、これは我慢できたけど体はド派手にビクンと動いた。
「ッッ……やめろや」
「気持ちいいでしょ? 隠さなくてもいいからね、ちゃんとたっぷりイかせてあげる」
「い、いやだッ」
「うーん……気持ちいいくせに、嫌だって言うのは本心なんだから、よくわからないね」
わからんのはお前の方だ。自分から意味深な言動をしておいて、実際何がと聞かれれば答えることはしない上にこういうことしてはぐらかそうとしている。……魔王のことは興味もないし出来れば近づきたくないけど、一方的な口撃を繰り返すのもそろそろ限界が近づいてきた。
「へーやっぱり優しいね」
「ちがわい、しっくり来ないことに労力使いたくないだけだ」
突っぱねるように言ってやると、ようやく手を離してくれた。俺には何考えてんのかなんてわからんからこそ、こいつの口から聞きたい。気の所為だったらそれでいい。……なんでこんなにこいつのこと気にかけてんだよ俺は、こんなんじゃあお人好し超えて間抜けとか言われても仕方がないな。
「いやいいんだよ。よく考えたらいつかはお嫁さんになる人の前でいきなり隠し事なんていけないよね」
「あれだぞ、言っとくけどマジでならねえからな」
「今はね。まあ1つだけネタばらしするとしたら……少し昔を思い出した。それだけだよ」
ネタバラシになってないしなんなら答えどころかヒントですらないぞ。やっぱこいつハナから話す気なんてなかったんだ、散々期待させておいて……まあ俺が魔王の戯言を真剣な顔して勝手に聞き入ってただけなところあるけど。
「そうなふうに言わないで、僕は君の前だけでは絶対に嘘をつかない。また明日の夜会おうね、今度こそはエッチなことしよっか!」
しない。はよ帰れ。釈然としないままアイツが帰ると、暗闇に光が差し込める。ああこれは朝日だ、今日は生き延びたんだな……
………………
「よう梓、おはようさん」
「ん……おはよう」
仁が隣で寝ている。メチャクチャ寝顔鑑賞されてて恥ずかしい思いをしたが、やっぱ仁の胸で抱きしめられるのが1番落ち着くなと、強く抱きしめた。手のひらをチラリと見たら、もちろんのこと文字は29になっていた。
俺が仁たちを忘れるまでのタイムリミット、
あと29日。
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