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タイムリミット
お誘い
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朝食が終わり一刻を争う様になった勇者たちはいざコグダム都を目指そうという時、ある一人の人間がストライキを起こした。
「みんなお前のこと待ってんだから、このペースで行くと夕方には着くみたいだし……」
「嫌だ。梓と一緒じゃなきゃやだ、オレのことギュッてして……」
「仁様、一体どうなさったのですか?」
こんな甘えん坊な仁は初めて見た。今までもある種の甘えん坊だった気もしないけど、ここまで露骨な駄々っ子モードな仁はなかったと思う。朝食中も赤ちゃんプレイを強要してくるだけじゃなく意味もなく抱きついてきたり膝に乗る様に強要したりと、嫌じゃないけど落ち着かない。和の国に伝わるのを恐れて敢えて起こさなかったタマモがみんなより少しだけ遅れた朝食を食べながら混乱している。晴雄がついてるから大丈夫だとは思うけど……ハッキリ言って尊敬してくれているタマモに魔王の呪いかけられたなんてのは言いたくない。隠し通せるだろうか……
「おい真田。これはアレだ、一番辛いのは梓なのにって奴だぜ」
「そんなん知らん。もっとくっつきたい、イチャイチャしたい……セックスしたい」
よくある現象で、他人が自分より精神的に参っていると同じように消耗していても頑張らないとと思う事があるだろう。名前の知らないその現象を今ここで経験した。今日までにゴグダム都まで辿り着くには肉体派職業の人全員の助けが必要だ。仁も勿論例外じゃあないのだけれど……こうなったら俺が荷台を引くしかないか……そしたら同じ様に手伝ってくれるはず。
「あーえっと、俺も荷台引くよ。この状態の仁をそのままにさせておくのもちょっと可哀想だしな」
「ならやる。梓に無理させない、さっさとコグダムまで行って余った時間イチャイチャする」
急に覚醒するな。しないよりかはずっと良いけど、情緒が不安定なのもそれはそれで心配だ。
「お前ら行くぞ! コグダムまであと……どれくらいだ?」
「え、えっと……そこまで長くはない。頑張り次第では夕方ぐらいに着くはずだ」
「そうか。じゃあ夕方前を目指すぞ! ぼさっとしてんじゃあねえ!」
急はスイッチの入りように驚いたり、さっきまでストライキしてた人間にチンタラすんなと言われるのを不満に持つ者もいただろう。しかしあえてや何も言ってこないのは有り難かった。こうなったのは魔王のせいだし、ここまでオレのためにいつものヤンキーキャラ崩壊させて駄々っ子にまでなってしまったのは仁だけだ。恋人としてここはサポートしたいし、悪口を言われようもんなら一緒に謝ってやりたかった。
ドカドカとかっ飛ばしているようだが、流石に肉体派チートは狼狽えないな。昨日の倍ぐらいのスピードで移動をしているのに、最初から非肉体派職業の仲間は荷台にいるのに、怪我人が出る事なく昼食の時間まで歩き続けた。実際疲労困憊に近い人はいても途中で倒れるようなことがなくてよかった。
「お前たちは休んでろ、昼は俺たちが作るから」
昨日より息が切れているからこりゃ休ませないとと思い。荷台に乗っていた人達が昼食を作ることとなった。俺もその一環で、疲れた肉体派全員に飲み物を配っている。
「大丈夫だからな梓、絶対に30日までに魔王のところへ辿り着けるよう頑張るから」
「あんがと、でも無理するなよ」
「この調子じゃあ夕方までには余裕で着くよな!」
「まあそうだろうな。……実際ちょこっとだけ見え始めてるし」
昼食を取る高台は、コグダム都が見えるところだ。数時間で行けそうな距離にひとまず胸を撫で下ろす、あとは下山するのみ……まあとにかく着いたら肉体派を休ませることが第一になりそうだけど。
都を名乗るだけはあって、大きな時計塔を中心に館や家がずらりと並び、遠くからでもなにか和の国より進んだ技術を持っているなとわかる。なんだっけ、確か研究都市や学生都市とまで言われているんだっけ。確かにここだと当初の目的である荒波と台風に耐えられる船の設計を任せられるはずだ。昼間なのにやけに静かな街並みを観察しながら、お茶配りを再開した。
最後が仁だ。派手に動き回りすぎて荷台のものがひっくり返っていないかチェックしていたようで、ようやく一息ついたと言った顔だ。お茶を差し出すと隣座れよと一言。精神的に異常がないか確かめるためだと思い、お邪魔させたらった。
「もう平気か?」
「……まだ平気じゃない。荷台はひっくり返ってなかったけど、あいつら怒ってるだろうな」
うん、理性は少しずつ取り戻していると見た。まあそれでも願望に関してはそのままなようで、
「コグダム言ったらセックスしよう……」
なんの捻りもない誘いだ。あんな寒い所でおっぱじめるとか正気かよ、風邪が怖くないのだろうか。
「風邪ひいても戦える、お前がひいたら守る。だから、な?」
……弟がいたせいなのか、ショタコンの気があるせいなのか、お願いされると弱いんだよ。まさか仁にお兄ちゃん心をくすぐられるなんてと驚きだけど、まあ今のこいつにとっては精神的な緊急事態だ、それぐらいだったら構えてやりたい。……俺も久々に恋人とやりたいと思ってもバチは当たらないはずだ。
「コグダム着いたら……な? それまで我慢」
「……わかった」
久々に、大きなドーベルマンに好かれている気分を味わった。
「みんなお前のこと待ってんだから、このペースで行くと夕方には着くみたいだし……」
「嫌だ。梓と一緒じゃなきゃやだ、オレのことギュッてして……」
「仁様、一体どうなさったのですか?」
こんな甘えん坊な仁は初めて見た。今までもある種の甘えん坊だった気もしないけど、ここまで露骨な駄々っ子モードな仁はなかったと思う。朝食中も赤ちゃんプレイを強要してくるだけじゃなく意味もなく抱きついてきたり膝に乗る様に強要したりと、嫌じゃないけど落ち着かない。和の国に伝わるのを恐れて敢えて起こさなかったタマモがみんなより少しだけ遅れた朝食を食べながら混乱している。晴雄がついてるから大丈夫だとは思うけど……ハッキリ言って尊敬してくれているタマモに魔王の呪いかけられたなんてのは言いたくない。隠し通せるだろうか……
「おい真田。これはアレだ、一番辛いのは梓なのにって奴だぜ」
「そんなん知らん。もっとくっつきたい、イチャイチャしたい……セックスしたい」
よくある現象で、他人が自分より精神的に参っていると同じように消耗していても頑張らないとと思う事があるだろう。名前の知らないその現象を今ここで経験した。今日までにゴグダム都まで辿り着くには肉体派職業の人全員の助けが必要だ。仁も勿論例外じゃあないのだけれど……こうなったら俺が荷台を引くしかないか……そしたら同じ様に手伝ってくれるはず。
「あーえっと、俺も荷台引くよ。この状態の仁をそのままにさせておくのもちょっと可哀想だしな」
「ならやる。梓に無理させない、さっさとコグダムまで行って余った時間イチャイチャする」
急に覚醒するな。しないよりかはずっと良いけど、情緒が不安定なのもそれはそれで心配だ。
「お前ら行くぞ! コグダムまであと……どれくらいだ?」
「え、えっと……そこまで長くはない。頑張り次第では夕方ぐらいに着くはずだ」
「そうか。じゃあ夕方前を目指すぞ! ぼさっとしてんじゃあねえ!」
急はスイッチの入りように驚いたり、さっきまでストライキしてた人間にチンタラすんなと言われるのを不満に持つ者もいただろう。しかしあえてや何も言ってこないのは有り難かった。こうなったのは魔王のせいだし、ここまでオレのためにいつものヤンキーキャラ崩壊させて駄々っ子にまでなってしまったのは仁だけだ。恋人としてここはサポートしたいし、悪口を言われようもんなら一緒に謝ってやりたかった。
ドカドカとかっ飛ばしているようだが、流石に肉体派チートは狼狽えないな。昨日の倍ぐらいのスピードで移動をしているのに、最初から非肉体派職業の仲間は荷台にいるのに、怪我人が出る事なく昼食の時間まで歩き続けた。実際疲労困憊に近い人はいても途中で倒れるようなことがなくてよかった。
「お前たちは休んでろ、昼は俺たちが作るから」
昨日より息が切れているからこりゃ休ませないとと思い。荷台に乗っていた人達が昼食を作ることとなった。俺もその一環で、疲れた肉体派全員に飲み物を配っている。
「大丈夫だからな梓、絶対に30日までに魔王のところへ辿り着けるよう頑張るから」
「あんがと、でも無理するなよ」
「この調子じゃあ夕方までには余裕で着くよな!」
「まあそうだろうな。……実際ちょこっとだけ見え始めてるし」
昼食を取る高台は、コグダム都が見えるところだ。数時間で行けそうな距離にひとまず胸を撫で下ろす、あとは下山するのみ……まあとにかく着いたら肉体派を休ませることが第一になりそうだけど。
都を名乗るだけはあって、大きな時計塔を中心に館や家がずらりと並び、遠くからでもなにか和の国より進んだ技術を持っているなとわかる。なんだっけ、確か研究都市や学生都市とまで言われているんだっけ。確かにここだと当初の目的である荒波と台風に耐えられる船の設計を任せられるはずだ。昼間なのにやけに静かな街並みを観察しながら、お茶配りを再開した。
最後が仁だ。派手に動き回りすぎて荷台のものがひっくり返っていないかチェックしていたようで、ようやく一息ついたと言った顔だ。お茶を差し出すと隣座れよと一言。精神的に異常がないか確かめるためだと思い、お邪魔させたらった。
「もう平気か?」
「……まだ平気じゃない。荷台はひっくり返ってなかったけど、あいつら怒ってるだろうな」
うん、理性は少しずつ取り戻していると見た。まあそれでも願望に関してはそのままなようで、
「コグダム言ったらセックスしよう……」
なんの捻りもない誘いだ。あんな寒い所でおっぱじめるとか正気かよ、風邪が怖くないのだろうか。
「風邪ひいても戦える、お前がひいたら守る。だから、な?」
……弟がいたせいなのか、ショタコンの気があるせいなのか、お願いされると弱いんだよ。まさか仁にお兄ちゃん心をくすぐられるなんてと驚きだけど、まあ今のこいつにとっては精神的な緊急事態だ、それぐらいだったら構えてやりたい。……俺も久々に恋人とやりたいと思ってもバチは当たらないはずだ。
「コグダム着いたら……な? それまで我慢」
「……わかった」
久々に、大きなドーベルマンに好かれている気分を味わった。
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