172 / 216
ざわつき
指輪の呪い
しおりを挟む
結果炎が消える頃には流石に眠くなってきたから、楽しかったのに眠たいと言う小学生以来の楽しいジレンマを噛み締めながら毛布に入った。
……
…………
………………
随分と体が重いな、結構ぐっすり寝たはずなのに、やっぱりぎゅうぎゅう詰めでは十分に疲れが取れなかったのか。
……いや違うな、ここどこだよ。見渡す限りの真っ暗闇、さっきまで共におでんごっこのようにぎゅうぎゅうだった仲間は勿論、荷台すらもない、もっと言うと防寒機能のある一枚の毛布すらも消えていた。つまり何が言いたいかと言うと、心の底からどこだよここ。体が重すぎて持ち上がらない、首を動かすのが精一杯のこの金縛り状況をどうしたものか。
「やあ、やっと起きたね」
「……げぇ!」
人生史上最も最悪な音が聞こえた。ここ最近増えるばかりだった心配事が減って、小学生みたいな気分で眠れたのに、最悪のタイミングで邪魔者が出現した。しかもご丁寧に何が指輪のケース持ってる、そんなにこやかな顔されても何も嬉しく無いぞ、シンプルに来ないでくれ。
「ここまで拒絶されるなんて……」
そうだコイツ読心術使えるんだった、ありったけの罵詈雑言をかき集めてたらそれも無事読まれたらしく、1人傷付いていた。そうだその調子だ、その勢いでさっさと俺のことは諦めてくれ。
「そこまで言う必要あるかい!?」
「普通はないけどお前にはある」
大体コイツが絡むと碌なことがないなんてのは初回で十分にわかった。願わくばもう2度と出会いたくない、嫌いというよりなんて言うんだろうな……トラウマなんだ。顔面がいいのが更に同じ同性として苛立ってくる、こんなとんでもねえ魔王にどうしてあんなにいい顔面がついているのか、この世界は間違っている。あと此処どこだよいつの間に監禁が趣味になった、まあいつかはするだろうと思っていたけども。
「あー……此処はアズサの夢の中さ。ちょっとお邪魔させてもらったよ」
「呼んでないです」
「これは君のために作った婚約指輪なんだ。手作りしたんだよ? 装飾は勿論のこと、宝石の中に入ってる呪いだって全部僕が作ったんだ」
「捨てて下さい」
涙目になってるけど知ったこっちゃない。呪いが付与される指輪とか死んでも着けたくない。黒いケースから出てきた指輪は魔王が作ったとは思えないぐらいシンプルかつ上品なもので、真ん中に小さいながらも存在感を発揮するドス黒い宝石に目を瞑ればかなり立派な婚約指輪だ。……そういえば異世界にも婚約者に指輪を渡す習慣ってあるんな。
「気に入ってくれたようでホッととしたよ、少し地味かなと心配していたんだ。首飾りや腕輪もいいなと考えたのだけれど、梓の世界では指輪がメジャーなんだよね? 花嫁と花婿がお揃いの指輪をつけるなんて素敵な文化じゃないか」
これが魔王じゃない別の人の言葉ならいい人だなって思えたのに。そんな風に言われて悪い気は微塵もない、むしろ照れ臭く感じるぐらいだ。恥ずかしいとも言うのかもしれない。金縛りにあった俺の左手に触れたと思うと、その黒い宝石の指輪を……って待て。
「あの、要らないです」
「婚約指輪……って名前ならいずれ結婚する人に早いうちに渡しておく事もできるのだよね?」
それは知らんし言いたいのはそんな事じゃない。つけようとした瞬間の話、今まで見た目の割には静かだった黒い宝石がピカッと光り輝いた事だ。黒い光なんてはじめて見る、その小柄な図体からは考えられない発光力ではじめて見たちょっと綺麗なんて呑気な顔を考えられたのはモノの数秒だった。
教えてくれ、その指輪はどうな宝石で、どんな呪いが込められているんだ? どうせお前のことだ、心読んでんだから声に出す必要もないだろう。
「……これはね、婚約の呪いがかけられているんだ。大丈夫、人体に害はないしましては死に至るなんてのもない」
婚約の呪い。背筋が凍る思いがする、喉の奥から鉄のような味が込み上げる、こんな極限状態でも身体は一寸も動いてはくれない。震えることすらできずに嫌だ、何だよそれと薄い息の中とい続けた。
「怖がらないで、全部僕に任せていい。この指輪はね、着けたら2度と外せない。解き方はあるけど僕にも知らない。これをつけた瞬間、君の左の手のひらに30って数字が出るんだ。怖がらなくていいよ、それは1日過ぎるごとに一つずつ減っていく、そしてゼロになった時には、
君が僕の事を好きになってくれるんだ」
もう何も声が出せない、まだ身体は動かせない。嫌だ、辞めてくれ。仁、助けて……
「……そんなに悲しまないで。30日後には君の夫は僕になる、真田仁のことも忘れることができるよ。勿論仲間の連中もね」
心の中の悲鳴、動かない身体、一滴もこぼれてくれない涙、そして再び襲いくる強い眠気。
「もう時間だね……じゃあね、また明日の夜に逢おうか」
薄れゆく意識の中、俺の左手の薬指に確かな重さが加わった。
……
…………
………………
随分と体が重いな、結構ぐっすり寝たはずなのに、やっぱりぎゅうぎゅう詰めでは十分に疲れが取れなかったのか。
……いや違うな、ここどこだよ。見渡す限りの真っ暗闇、さっきまで共におでんごっこのようにぎゅうぎゅうだった仲間は勿論、荷台すらもない、もっと言うと防寒機能のある一枚の毛布すらも消えていた。つまり何が言いたいかと言うと、心の底からどこだよここ。体が重すぎて持ち上がらない、首を動かすのが精一杯のこの金縛り状況をどうしたものか。
「やあ、やっと起きたね」
「……げぇ!」
人生史上最も最悪な音が聞こえた。ここ最近増えるばかりだった心配事が減って、小学生みたいな気分で眠れたのに、最悪のタイミングで邪魔者が出現した。しかもご丁寧に何が指輪のケース持ってる、そんなにこやかな顔されても何も嬉しく無いぞ、シンプルに来ないでくれ。
「ここまで拒絶されるなんて……」
そうだコイツ読心術使えるんだった、ありったけの罵詈雑言をかき集めてたらそれも無事読まれたらしく、1人傷付いていた。そうだその調子だ、その勢いでさっさと俺のことは諦めてくれ。
「そこまで言う必要あるかい!?」
「普通はないけどお前にはある」
大体コイツが絡むと碌なことがないなんてのは初回で十分にわかった。願わくばもう2度と出会いたくない、嫌いというよりなんて言うんだろうな……トラウマなんだ。顔面がいいのが更に同じ同性として苛立ってくる、こんなとんでもねえ魔王にどうしてあんなにいい顔面がついているのか、この世界は間違っている。あと此処どこだよいつの間に監禁が趣味になった、まあいつかはするだろうと思っていたけども。
「あー……此処はアズサの夢の中さ。ちょっとお邪魔させてもらったよ」
「呼んでないです」
「これは君のために作った婚約指輪なんだ。手作りしたんだよ? 装飾は勿論のこと、宝石の中に入ってる呪いだって全部僕が作ったんだ」
「捨てて下さい」
涙目になってるけど知ったこっちゃない。呪いが付与される指輪とか死んでも着けたくない。黒いケースから出てきた指輪は魔王が作ったとは思えないぐらいシンプルかつ上品なもので、真ん中に小さいながらも存在感を発揮するドス黒い宝石に目を瞑ればかなり立派な婚約指輪だ。……そういえば異世界にも婚約者に指輪を渡す習慣ってあるんな。
「気に入ってくれたようでホッととしたよ、少し地味かなと心配していたんだ。首飾りや腕輪もいいなと考えたのだけれど、梓の世界では指輪がメジャーなんだよね? 花嫁と花婿がお揃いの指輪をつけるなんて素敵な文化じゃないか」
これが魔王じゃない別の人の言葉ならいい人だなって思えたのに。そんな風に言われて悪い気は微塵もない、むしろ照れ臭く感じるぐらいだ。恥ずかしいとも言うのかもしれない。金縛りにあった俺の左手に触れたと思うと、その黒い宝石の指輪を……って待て。
「あの、要らないです」
「婚約指輪……って名前ならいずれ結婚する人に早いうちに渡しておく事もできるのだよね?」
それは知らんし言いたいのはそんな事じゃない。つけようとした瞬間の話、今まで見た目の割には静かだった黒い宝石がピカッと光り輝いた事だ。黒い光なんてはじめて見る、その小柄な図体からは考えられない発光力ではじめて見たちょっと綺麗なんて呑気な顔を考えられたのはモノの数秒だった。
教えてくれ、その指輪はどうな宝石で、どんな呪いが込められているんだ? どうせお前のことだ、心読んでんだから声に出す必要もないだろう。
「……これはね、婚約の呪いがかけられているんだ。大丈夫、人体に害はないしましては死に至るなんてのもない」
婚約の呪い。背筋が凍る思いがする、喉の奥から鉄のような味が込み上げる、こんな極限状態でも身体は一寸も動いてはくれない。震えることすらできずに嫌だ、何だよそれと薄い息の中とい続けた。
「怖がらないで、全部僕に任せていい。この指輪はね、着けたら2度と外せない。解き方はあるけど僕にも知らない。これをつけた瞬間、君の左の手のひらに30って数字が出るんだ。怖がらなくていいよ、それは1日過ぎるごとに一つずつ減っていく、そしてゼロになった時には、
君が僕の事を好きになってくれるんだ」
もう何も声が出せない、まだ身体は動かせない。嫌だ、辞めてくれ。仁、助けて……
「……そんなに悲しまないで。30日後には君の夫は僕になる、真田仁のことも忘れることができるよ。勿論仲間の連中もね」
心の中の悲鳴、動かない身体、一滴もこぼれてくれない涙、そして再び襲いくる強い眠気。
「もう時間だね……じゃあね、また明日の夜に逢おうか」
薄れゆく意識の中、俺の左手の薬指に確かな重さが加わった。
11
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる