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ざわつき
昼の友達
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兎に角腹減ったから飯にしよう。そんな声もチラチラと聞こえるようになり、みんな飯の準備に取り掛かった。仁もなんだかんだ火を起こす手伝いを始めた。キャンプといっても飯盒炊爨は夜遅いからないらしい、更にキャンプファイアは魔物除けのために焚く程度で囲いもしない。やはり小学5年生の苦い思い出は払拭することは難しいようだ。
でも清志が中心となって作るシチューは美味かったし、和の国の人達が異国の文化を真似して作った米のパンとよく合う。何だろう、米粉パンより柔らかい。これは現実世界にはない技術だ、文明が中世とはいえ異世界も馬鹿には出来ない、是非ともその技術を教えて欲しいものだ。
「なあ本当にキャンプファイア囲まねーの」
「梓はキャンプファイアに随分思い入れがあるんだな」
「いや、むしろ何もないよ。本当はあるはずだったんだけど手に取れなかった」
「な、何があったんだ……」
俺のキャンプにまつわる昔話は、そういうのが趣味な人間にとっては自分で行けばよかったじゃんと論破されてしまうものだろう。しかしそうじゃないんだ。まだ若くて体力のある小学五年生がクラスみんなでやるから価値があるのであって、インドアで体力のない今の俺が1人でやったところで何も面白くない。何故あの時よりにもよっておたふくになったのか本気でわからん、弟に一緒うつって一緒に寝込んだから結果オーライかもしれないけど(俗におたふくは子供の時に引いた方がいいとされている)。
……
…………
………………
近接系の職業の人たちはなんだかんだ疲れが溜まっていたのか、それとも飯を食べる時にふざけて遊んでいたのが祟ったのか、とてつもなく寝付きが早かった。魔法系はこれからどう進むのかとか、そんなのを話していた。早ければ明日の夜にでも着くらしくそれがわかったら魔法系達も明日に備えようとさっさと寝てしまった。みんなが物資がある中の荷台での睡眠で、なかなか窮屈なものだった。
俺はというと、寝付くことすらできずに経った1人でキャンプファイアを眺めている。いざ寝るぞと思っても1人だと今まで気付かなかった色んなことが浮かんできて、おでんみたいにぎゅうぎゅう詰めなのに寒く感じてしまった。焚き火であったまっても温かくならない、これを心寒いと言うのだろうか。蓮くんはちゃんと現実世界に帰れたかな、まだ精神病んでたし勉強に支障が出ないと良いけど。大事な心配事を心にしまいながら無限に出てくるいらない悩みを炎に焚べる。
「あれ? ひょっとして梓も眠れなかったんか?」
「うん……隣どうだ、晴雄」
晴雄の声がした。ちょっと前までは偽りでも蓮くんの声だと思うことができた。飄々とした性格だから気が付かなかった、芯のある声だ。隣失礼と言いながら左隣に。ようやくタマモを寝付けさせることが出来たらしく、疲れた様子だった。
「もう寝たらどうだ? 火は俺が見とくよ」
「無理だよ夜型人間なもんでね。昔から夜の方が話せる友達多くてさ、そんなんだから気味悪がられてたんだけど」
その友達が本当に肉体あるのか云々はこの際聞かないでおこう、知らぬが仏という諺を知っている人間なら皆そうだろう。蓮くんのことを知らないタマモは、元に戻ったとか知らずに晴雄に懐いていた。様子が違うと心配されていたようだけど、何とか出来たみたいで安心した。
「その、蓮はちゃんと元の世界に帰ったよ」
「そうか、よかった。呼び出せたりしないのか?」
「えっと……魔力が戻ってないから無理かなぁ、、」
ちょっと話しづらそうだから好きな話をしても良いと言った。元々人間が好きじゃないのかな、俺との話はたどたどしいくせに夜の友達の話をしていると少し楽しそうだった。自称昼の友達の俺としては少し複雑。生憎晴雄のことに関しては現実世界にいた時よりも積極的になっている。見えないだけで確かにそこにいるであろう彼等に少し嫉妬してしまう。そうだ、多分夜の友達も聞いているだろう今このタイミングで仲良いアピールしとこ。
「そういえば蓮くんと交代してる時ってさ、記憶以外になんか共有できんの?」
「それは出来ないな。大方の俺の秘密なんてのは筒抜けだし、逆に蓮の秘密は俺にダダ漏れだけど、本当それ以外は……あ、でも流石に身体能力とかは俺のままだよ」
「それって体質とかも?」
「もちろん」
なるほどなるほど、それは良いことを聞いた。お陰で仲良しアピール用の面白い話の準備が整った、ニヤニヤしている隣の人間を奇妙に思ったのか、大丈夫かと聞いてくる。よかろうここで教えてやる。
「体質ってことはさ、その射精不全とかも勿論そのままだったって事だよな?」
「えっと、そのはずだけど……あ」
流石は記憶が筒抜け、蓮だった時に自分の身体が何をしたのかようやく思い出したようで、顔が真っ赤に染まっていた。蓮くんになったばっかの頃。なんやかんやあってセックスしてしまったあん時、ちゃんと射精してた事。あれ見た時よかった晴雄は産科に世話になることは無いと安心したもんだ。ただ本人は長らくご無沙汰だった射精のことや中身が違うとはいえはじめての童貞卒業を思い出したようで、
「……ごめん、あん時のは無かったことにして」
と短く言って俺が寝るのとは違う荷台に戻ってった。初心な反応は可愛かったし、蓮くんへの心配事も完璧とはいえないけど解消された。人生何事も60点取れば完璧だ、あんまり遠い目標掲げると努力する気が失せてしまうからな。さあ寝るぞって寝れないんだ。しょうがないから1人でキャンプファイアするかと、もう暫く満喫することにした。
__トン
…………気配を感じて今さっきまで晴雄が座っていたところを見る。誰もいないが、確かな存在感を感じる。「何もない」が強烈にそこにあるといったところ。ああやばい。いるんだそこに。
「ど、どうも、、晴雄にはいつも助けられてます。ははは……」
返事は返ってこないが寒気は感じない。寧ろさっきまでの心寒さがなくなっている。……夜の友達からは嫌われなかったと思っていいのか? いやもうそう思うことにしようか。うん。
でも清志が中心となって作るシチューは美味かったし、和の国の人達が異国の文化を真似して作った米のパンとよく合う。何だろう、米粉パンより柔らかい。これは現実世界にはない技術だ、文明が中世とはいえ異世界も馬鹿には出来ない、是非ともその技術を教えて欲しいものだ。
「なあ本当にキャンプファイア囲まねーの」
「梓はキャンプファイアに随分思い入れがあるんだな」
「いや、むしろ何もないよ。本当はあるはずだったんだけど手に取れなかった」
「な、何があったんだ……」
俺のキャンプにまつわる昔話は、そういうのが趣味な人間にとっては自分で行けばよかったじゃんと論破されてしまうものだろう。しかしそうじゃないんだ。まだ若くて体力のある小学五年生がクラスみんなでやるから価値があるのであって、インドアで体力のない今の俺が1人でやったところで何も面白くない。何故あの時よりにもよっておたふくになったのか本気でわからん、弟に一緒うつって一緒に寝込んだから結果オーライかもしれないけど(俗におたふくは子供の時に引いた方がいいとされている)。
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近接系の職業の人たちはなんだかんだ疲れが溜まっていたのか、それとも飯を食べる時にふざけて遊んでいたのが祟ったのか、とてつもなく寝付きが早かった。魔法系はこれからどう進むのかとか、そんなのを話していた。早ければ明日の夜にでも着くらしくそれがわかったら魔法系達も明日に備えようとさっさと寝てしまった。みんなが物資がある中の荷台での睡眠で、なかなか窮屈なものだった。
俺はというと、寝付くことすらできずに経った1人でキャンプファイアを眺めている。いざ寝るぞと思っても1人だと今まで気付かなかった色んなことが浮かんできて、おでんみたいにぎゅうぎゅう詰めなのに寒く感じてしまった。焚き火であったまっても温かくならない、これを心寒いと言うのだろうか。蓮くんはちゃんと現実世界に帰れたかな、まだ精神病んでたし勉強に支障が出ないと良いけど。大事な心配事を心にしまいながら無限に出てくるいらない悩みを炎に焚べる。
「あれ? ひょっとして梓も眠れなかったんか?」
「うん……隣どうだ、晴雄」
晴雄の声がした。ちょっと前までは偽りでも蓮くんの声だと思うことができた。飄々とした性格だから気が付かなかった、芯のある声だ。隣失礼と言いながら左隣に。ようやくタマモを寝付けさせることが出来たらしく、疲れた様子だった。
「もう寝たらどうだ? 火は俺が見とくよ」
「無理だよ夜型人間なもんでね。昔から夜の方が話せる友達多くてさ、そんなんだから気味悪がられてたんだけど」
その友達が本当に肉体あるのか云々はこの際聞かないでおこう、知らぬが仏という諺を知っている人間なら皆そうだろう。蓮くんのことを知らないタマモは、元に戻ったとか知らずに晴雄に懐いていた。様子が違うと心配されていたようだけど、何とか出来たみたいで安心した。
「その、蓮はちゃんと元の世界に帰ったよ」
「そうか、よかった。呼び出せたりしないのか?」
「えっと……魔力が戻ってないから無理かなぁ、、」
ちょっと話しづらそうだから好きな話をしても良いと言った。元々人間が好きじゃないのかな、俺との話はたどたどしいくせに夜の友達の話をしていると少し楽しそうだった。自称昼の友達の俺としては少し複雑。生憎晴雄のことに関しては現実世界にいた時よりも積極的になっている。見えないだけで確かにそこにいるであろう彼等に少し嫉妬してしまう。そうだ、多分夜の友達も聞いているだろう今このタイミングで仲良いアピールしとこ。
「そういえば蓮くんと交代してる時ってさ、記憶以外になんか共有できんの?」
「それは出来ないな。大方の俺の秘密なんてのは筒抜けだし、逆に蓮の秘密は俺にダダ漏れだけど、本当それ以外は……あ、でも流石に身体能力とかは俺のままだよ」
「それって体質とかも?」
「もちろん」
なるほどなるほど、それは良いことを聞いた。お陰で仲良しアピール用の面白い話の準備が整った、ニヤニヤしている隣の人間を奇妙に思ったのか、大丈夫かと聞いてくる。よかろうここで教えてやる。
「体質ってことはさ、その射精不全とかも勿論そのままだったって事だよな?」
「えっと、そのはずだけど……あ」
流石は記憶が筒抜け、蓮だった時に自分の身体が何をしたのかようやく思い出したようで、顔が真っ赤に染まっていた。蓮くんになったばっかの頃。なんやかんやあってセックスしてしまったあん時、ちゃんと射精してた事。あれ見た時よかった晴雄は産科に世話になることは無いと安心したもんだ。ただ本人は長らくご無沙汰だった射精のことや中身が違うとはいえはじめての童貞卒業を思い出したようで、
「……ごめん、あん時のは無かったことにして」
と短く言って俺が寝るのとは違う荷台に戻ってった。初心な反応は可愛かったし、蓮くんへの心配事も完璧とはいえないけど解消された。人生何事も60点取れば完璧だ、あんまり遠い目標掲げると努力する気が失せてしまうからな。さあ寝るぞって寝れないんだ。しょうがないから1人でキャンプファイアするかと、もう暫く満喫することにした。
__トン
…………気配を感じて今さっきまで晴雄が座っていたところを見る。誰もいないが、確かな存在感を感じる。「何もない」が強烈にそこにあるといったところ。ああやばい。いるんだそこに。
「ど、どうも、、晴雄にはいつも助けられてます。ははは……」
返事は返ってこないが寒気は感じない。寧ろさっきまでの心寒さがなくなっている。……夜の友達からは嫌われなかったと思っていいのか? いやもうそう思うことにしようか。うん。
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