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ざわつき

弟が1番マシな感性 ⭐︎

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食事が終わったらまた手押し車で山脈を越える、これぐらいになると魔法と文化陣営は恥じることなく疲れてもいないのに荷台になっている。前衛職業の人たちも口では不平等だと言いながら、多少重量が増えるぐらいでは痛くも痒くもないようで、放り出すこともなく車を引いている。ついでに襲いかかってきたモンスターを羽虫のように追い払っている。怖い。

だが色々巻物を読む時間を貰えるから嬉しい話だ。草書だから全体的にふんわりと読むことも一苦労。長文見るだけで頭が痛くなる俺としてはこれだけである種の修行だ。煮詰めてはいけないと腕立てでもしようと思い顔を上にあげると、今更ながら周りが暗いことに気がついた。こんな所で本を読もうものなら目が悪くなってしまう。巻物を占めて懐にしまった。暗い中でもキャンプ場まで歩いてくれているんだなと、ギコギコ動いている荷台の中で考えていた。

「なあ兄貴……」

「ん、どしたんだ、タマモと遊んでたんじゃないのか?」

「もう寝た……晩飯の時間じゃないと起きないと思う」

天才だとはいえ元々は弟だ。歳上らしい対応を求められるタマモとの交流はいささか骨が折れたのだろう。友達なんて作らないタイプだし後輩育成なんて尚更だ、それにタマモはまだおとなしい方だ。子供が苦手そうな蓮くんでも面倒を見ることができたのはそれのおかげもあるだろう。……自分と同じ顔の男の子を世話するのはさぞ変な気分だろうけど。

疲れた顔で俺の隣にもたれる蓮くんの頭を撫でてあげる。周りを一瞬確認してみたけどみんな寝ている、色々はしゃいでたみたいだから疲れたのだろう。昔はしてたけど今はめっきりすることがなかったそれを今になってするのは恥ずかしい気もしたが、いつまで経っても弟は弟だなとジジイみたいな思考で正当化する。実際本人は嫌がっていないから問題なしだ……何故か金魚帯を握られているのは少し怖いけど。

「その……俺の帯そんな変か? ひょっとして色合ってない?」

「いや、それはない。流石はプロだ、色彩も完璧だしコテコテのピンクじゃないのがいいよな、兄貴には黄色が似合うって分かってる」

どうやら俺には黄色が似合うみたいだ。初めて知った、だからピンクを基調としてるけど帯は黄色なんだな、小学生みたいだと恥ずかしがっていたが、ちゃんと考えてくれていたのか。では何故握っているのか褒める気持ちはわかった、でもそれは何故しつこく握っているのかの理由にはなっていない。

「だって……解きやすくて脱がせやすいじゃん」

「え? ん!? ちょっと待て!」

「うるさい。聞こえるぞ」

聞き返す間も無く、突然金魚帯をほどき始めた。あっさりと解かれた帯で口を塞がれる、鼻はまだ平気だから呼吸はできるけど、声を出すことはできない。何が起きたんだ、というより何する気だよ、みんなに見られてもいいんか!

「や、やめ……」

「兄貴が見られるのが好きな変態ならどんどん起こしてもらって構わないし、今一生懸命車押してくれてる彼氏に助け求めてもいいよ」

やばいこいつ何がなんでもヤるつもりだ。出したんだよ急に欲求不満になって。兎に角話し合おう話せば俺たちは分かり合える。疲れからかちょっと病み気味の蓮くんの肩を揺すった。俺が怖がってるのを気が付いてくれたのか、動きが止まった。

あーなるほど。長いこと兄貴……いや家族やってたら色々わかるもんだ。なにか思い詰めてんなとか、悩み事あるんだなとか、今の蓮くんはちょうどそんな感じの顔してる。少しだけ身体をポンポンしてやると、崩れるように俺に抱きついてきた。ほらやっぱりな。

「おーおー何が合ったんだ。お兄ちゃんに話してみろ」

「……なんでアイツオレと同じ顔なの? 異世界のことも記憶はあるけど意味わかんねー」

「さあなんでだろうな」

さあって……と消えそうな声で言われるが、本当に知らない。まあ2人で話した時にだいたいの目星ならついたけど、確証に至っていないから、今の状況の蓮くんに話したら逆効果というものだ。

「魔王なんて知らねーから、2人で帰ろうぜ」

「それは出来ない。魔王の悪事はきっちり止めてから元の世界に帰ろう」

「……でもコイツの魔力が無くなったらオレだけ強制送還なんだろ?」

「そん時は晴雄のことだ、魔力が戻ってまた機会があれば呼んでくれるよ」

頭を撫でてもご機嫌斜めのままだ。元気になってもらうにはどうすればいいのだろう。ここからは俺の兄力ではどうにもならない領域まできつつある。結局独自の会見で、こういう時は何して欲しいか聞いてあげるのが1番だなと思ってしまった。

「……セックスしたい」

「それはただ性欲とかの話でやりたいだけだろ」

「ならおっぱい吸わせて」

ひょっとして蓮くんは俺のおっぱいが好きなのか? 前にも吸わせてとせがまれた時があった、俺はそれよりレベルの高い搾乳手コキまでやったことあるからそれぐらいなら怖いもの無しだけど……

「……やる。疲れたからもう話さない」

「え? ちょっと!?」

沈黙は肯定と捉えられたのか、いきなり口に含まれる。帯を取られて一張羅のような状態だったもんで乳首が晒されていたことを今になって思い出した。舌を中で動かされるだけで体が震える中、異世界転移で思った以上にやさぐれ気味の蓮くんの世話が始まった。
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