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ざわつき

愉快な優等生

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咎目雄星とがめゆうせい、多分異世界での急時的な現象つまり俺の踊り子の魅了とかそう言ったものを除けば多分1番の異端児だと思う。仁や譲治が問題児だけど、異端児も大概だと思う。区別分けするのにはれっきとした理由があって、雄星は暴力沙汰を始めとした問題行動は全くと言っていいほど起こしていない。むしろ成績はいい方だし、ノート貸してもらった事もあるけどめちゃくちゃ字が綺麗だったのを覚えている。

前情報ではかなりの優等生だと思われたかもしれない、ではそんな彼のどこが異端なのかというと……まあそこら辺は見て貰えば一目瞭然だろう。

「やっぱり僕も闇の力を習おうかな……どこで勉強できるの?」

「ふん……小さき者には荷が重いだろうよ。それよりも、汝はこれを欲していたのだろう? さあ受け取るが良い、汝に狂った海獣と鱗持つ女神を授けよう」
訳:小柄で怖がりな柿原くんにはちょっと早いかもしれません。それよりも、これを探していたのですよね? 豪勢なタコさんと見た目も美しい魚さんのウインナーを差し上げます。

「本当に! ありがとう、咎目くんみたいに優しい人に来てくれてよかったよ!」

「例には及ばぬ、しかし褒めて遣わす、大義であった。戦友の作りしその2つの魂、存分に味わうといい、お前にはその権利がある」
訳:お礼だなんてそんな……しかし嬉しいです、どういたしまして。藤屋くんが一生懸命心を込めて作ったそれは、柿原くんのような心の優しい人に食べられて幸せでしょう。

「いただきまーす!」

わかってくれただろう、この猛烈と言っても誇張などではない清々しいほどの厨二病っぷりを。別に悪いやつじゃないし一々親切なんだけど言い方が鼻につく。あの手の人間は健吾のようなおおらかな心を持って会話をするのが円滑に進むコツなのだろう、下手に深入りしては行けない、体験談だ。前に遊び半分で、どこの王国から来たんだとからかってみたことがある。目の色変えて語り始めた、まるで非オタが自分が好きなコンテンツに興味を持ってくれたかのような喜びようだった。

彼曰く雄星は今はなき最強の王国、闇の国の王家、その末裔にして最後の王の転生した姿らしい。かつて世界を牛耳った闇の力は今や雄星しか持っていない、そして闇の力を求めて数多の国家や悪の魔術師からの刺客を掻い潜る日々を過ごしているとのことだ。奴らはこの力で世界を破壊し、全宇宙を配下に置くつもりだ。しかし一族の因縁を晴らす為、そして世界の平和を守る為、そんな事はさせないと単身で戦い続けているっと言うのがあくまで彼の中での設定だ。

「おい、なんかあいつこっちに来てないか?」

「え? 闇の国が?」

「……大丈夫か、梓」

あ、ごめんよ仁、大丈夫だ。1年の頃を思い出してあの頃は平和だったなとか急にノスタルジックな考え事してたもんだから、咄嗟に対応できなくなっていた。言う通り確かにこっちにきている気がする、いつも通りの勝ち誇った顔で、黒を基調としたその格好は勲章を受け取るときの軍人の正装のような服で。そういえば職業は暗黒騎士だったな、なんというか、クラスの中でも1、2を争うぐらいの天職だと思う。甲冑着た騎士も好きだけど、こういう中世の正装感のある騎士もいいと思う。

「久しいな我が姫よ、まさか男に転生していたとは……これも神の悪戯か。しかし、たとへどんな姿であっても我はお前を愛すると、そう2000年前に約束した」
訳:久しぶりですね私の好きな人、まさか男の人に恋してしまうだなんて……こんな事もあるのですね。しかしたとへどんな姿であったとしても僕は貴方を愛します、そう決めたのです。

「ど、どうも……」

「なんかすごいやつだな」

あの番犬レベルに訓練された仁に喋ることさえ封じてしまうだなんて、これが闇の力というやつなのか? まあ言ってることはわかりにくいけど、俺が男でも愛せるよっていう宣言のようなものだろう。言い方はともかく最初に告白だなんてなかなか男らしい所あるじゃないか。意外に純愛派なのかもしれない。

多分設定的には前世結婚を約束したけど闇の国の崩壊によって引き離された王子と姫様がいて、王子が雄星、姫様が俺に転生した感じだろう。……気持ちは受け取っておくけどその前に休憩時間は長くない。早めに食事を済ませたらどうなのだろうか。

「ふむ……確かに我のつまらぬ遊戯で民を締め付けるのは些か忍びないな。姫よ、忠告感謝する」
訳:うーん……確かに僕のつまらない話のせいでクラスの皆さんを待たせてしまうのは申し訳ないですね。梓さん、忠告ありがとうございます。

雄星は近くに座り、ウインナーが抜けた弁当を食べ始めた。言動に似合わない真面目な思考回路と行動に驚くとともになんであんな言葉遣いなんだろうと不思議に思う。よく考えればあの難解な言葉が使いこなせるのは本人の元々の頭の良さのお陰なのかもしれない。掴み所のない優等生を横目に、弁当をガッと平らげた。
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