上 下
155 / 216
弟に捧ぐ

隠す気ない ⭐︎

しおりを挟む
弟が異世界にやってきた、正しくは一時的に呼び出しただけど。こんな場所に来てしまってかわいそうにと思う気持ちが5割、どんな形でも家族と再会できて嬉しいと思う気持ちが5割。そうだ、この状況をきっと理解していないはず。一からしっかり教えてあげないと。

「あの、あのな蓮、信じられないかもだけどこの世界は異世界で……」

「ああそれは知ってる。兄弟世界で魔法があって、魔物もいる世界なんだろ?」

「あれ?」

なんで知ってんの、兄ちゃんがいない間に知らないことを知れる特殊能力でも得たの? 更には俺が踊り子になってるのも仁に処女を奪われたことも、魔王にまで狙われてることすら色々と知られてるみたいだ。冷や汗がドバドバ出る、これから時間をかけてゆっくり受け入れてもらおうと考えていたものが既に受け入れられている。

俺を見る目が冷たかったり、何か軽蔑を感じるものだったらどうしようとゆっくりチラチラと視線を移したが、どうやらそんな目ではない。いつも通りのしかめっ面に戻ってるから何も問題はない。一応視線は感じているけどこの際好奇の目は気にしないと決めた、失望されないだけ万々歳。まあ天才からしたら俺には失う望みすらなかったのかもしれないけど。

「……真田仁、お灸は後で据えておく」

あ、仁頑張れよ。多分俺にはどうにもならない大激闘に寒気を覚えた。

「そういえばなんで知ってたの? もしかして長谷部に色々教えてもらった?」

「……羽原薫、貴方とも後でゆっくりお話ししたいですね。主に兄に対するレイプに関して」

「おー怖い」

おいそんな風に甘く見てるとやばいぞ。こう見えて柔道も合気道も全て習得済みの文武両道人間だ、薫が勝てるビジョンが浮かばない。ってかやっぱり知識があるんだな。しかも表面上ではない、ベルトルトさん達にも言ってないであろう内輪ネタまで知ってるとは。まるで蓮も俺達の旅に同行してたかのような博識ぶりだ。

「……あの、どうしてそんなに知ってるんだ?」

「長谷部って人のおかげだと思う。その人とは技能の共有は出来ないけど、代わりに記憶の共有はできるみたいだ。だから既にオレのモノじゃない記憶を頼りに話してる」

「蓮のものじゃない記憶って事は、やっぱ全部晴雄視点なのか?」

「そうだな、全部その人の視点からの記憶しかないと思う。……あとその名前呼びも後で矯正する必要があるな」

ごめんなさい。急にマジになるなよと薫が宥めているけど、多分無意味だ。寧ろ親の仇のような憎悪しか向けられてないのに平然としてる薫の方が問題だと思う。どうしようか、今更元の苗字呼びにしたところでクラスメイト達が納得出来るわけないし、なにか蓮だけの新しい呼び方とかがあるといいんかな。

「その、下の名前はもう勘弁して。ハッキリ言ってこっちの方が慣れた。だから蓮のことは……蓮くんって呼ぶ」

「…………わかったそれで手を打とう」

「チョロいな弟くん」

思った以上の快諾を貰った。その後は晴雄にフェラしたことあるだろとかレイプされた時他に何されたとか、今までの弟いや蓮くんでは考えられないようなものすごい心配をされ続けた。今まではアレだ、世間帯のせいなのかもしれない。今はそれが通用しないと悟ったのか、ひょっとしたら長谷部の記憶辿ってブラコンだとバレたのがわかってもう開き直ってるのか、とてつもない可愛い弟アピールしてくる。

こんな蓮くん初めて見た、どうすればいいんだろう。俺に甘える弟なんて小学校時代から随分とご無沙汰だったもんで、昔は出来ていたお兄ちゃん感を忘れてしまっている自分が少し恐ろしく感じた。とにかく先ずは……頭でも撫でてみようか。

「よ、よしよーし、可愛いなぁ~」

「お母さんじゃないんだから」

「兄貴のおっぱい飲みたい」

「弟くん結構面白いね!?」

薫が進んでツッコミをしないとどうにもならない無法地帯。いつもの1番の問題児感はどこへやら、やっぱりそこら辺は根が陽キャなだけあってバランスの取り方が身に染み付いてるんだろう。

あと残念かもしれないけどいくら踊り子とはいえ母乳は出ないからな、頑張れば出るかもしれないけど頑張る気にならないから気が向くのを待ってほしい。その前にもう1つ聞きたいことがある、この脚というか、太もも辺りにさっきから擦り付けられてる硬いそれ、もう何なのかはいう必要がないだろう。それに俺が聞きたいのはさらにその先、何故勃起している?

「……なんか異世界の兄貴想像以上にエロくなってるから興奮した」

「正直に言えばなんでも許されたりはしないぞ。あ、こら! 胸を揉むな!」

まるでマッサージするかのように絶妙な力で揉んでくるから一瞬腰が抜けそうだった。その反応が気に入ったのか、更にと更にと弄ってくる。一応それ借り物の身体なんだから、そんな風に使うな、兄ちゃん怒るぞ。

「怒ってもいいよ、可愛いからな。不良とかショタとかに散々ヤラれて来たんだから、今更弟ぐらいでビビるな」

「あーお盛んだねー近親相姦ってやつだよ」

まるで他人事のような台詞を吐いているところなんだが、お前もにじり寄ってくるのやめろや怖い、どうせ来るならもっとバシッとこい、バシッと。

「え、もっと大胆に来ていいの?」

「……そんな煽り文句どこで覚えた」

や、ちょっとやばいこと言ったかも。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

処理中です...