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弟に捧ぐ
これって洗脳?
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俺の弟がブラコンだった。その事実は俺の精神を蝕むには容易い話。あの後食事の準備が出来たと皇子様に呼ばれて夕飯を頂いたが、とてもじゃないが味を楽しむ気分にはなれなかった。昼と同じく最高級の食材とシェフが丹精込めて作ってくれただろうに、ごめんなさい、ちゃんと全部食べるからそこは許して欲しい。
「大丈夫か、食い過ぎじゃないか?」
一旦思考をリセットしようとして無理矢理食べる事に意識を向けた、満腹なんてものは頭の中には無く、ただあるだけを食べ続けた。それによっていつも常人の2倍は食べてる仁ですらも心配させるほどに食べてしまう次第だ。腹減ってると短く答えて再び米を口へ運んだ。
その後も心配する周囲の声を振り切って、食事を終えた瞬間に逃げるように俺の部屋まで走った。食べ過ぎて腹痛いし横腹も痛くなったけど今回ばかりは気にならない。言っておくが別に弟のことが気持ち悪くなったとか、ましては嫌いになったなんてのは断じて無い。ただ、家族からの愛の受け止め方がわからない俺には、こんなに大きな愛は受け止め切れない。ただそれだけの話だった。
「マジに大丈夫か? 皇子さんが医者呼ぼうかって言ってるぜ」
「え、いやいやそれはいいって……ごめん、1人にさせてくれ」
「……わかった」
仁にもいて欲しいとはほんの少し考えた。1人だと変なこといっぱい考えてしまいそうで、それが怖かったから。でもこれは俺1人の問題だ、それにブラコンの弟がいますなんて仁には口が裂けても言えない、下手したら暴動が起きる。身体が重い。今まで気がつかなかった弟からの愛が一度にのしかかっている、そうとすら思えた。
別に家族のことは嫌いじゃ無い、親が優秀な弟を可愛がるのは当然のことだと思っていたし、お婆ちゃんはなんだかんだ俺のことを可愛いと言ってくれてたから、寂しいなんて思ったことは一度もない。強いて言うなら、ちょっとだけ家族を神格化してたような気はしなくも無い。家族の愛はタダでは貰えない、期待に応えて裏切らず、それ相応の対価を支払ったものだけに送られる謂わば勲章のようなもの。少なくとも俺はそう思ってた。
弟は愛を受け取る資格があった、俺にはなかった、だだそれだけの話。無償の愛なんてのは、お婆ちゃんみたいな悟り開いた人じゃなきゃあげることなど到底できない至難の業、母親と父親が出来なかったのは悪いことじゃ無い。……あれ、俺って両親のことなんて呼んでたっけ? 頭の中では母さん父さん、いやお袋と親父? そういえばここ数年呼んでなかったな、話すだけで呼んでなかった。
「兄貴は間抜けなんだから不良に囲まれたら終わりだ、ちゃんと門限守れよ」
「兄貴は馬鹿だな、そんなことも知らないのか。そんなんじゃいつ間違った知識植え付けられるか分かったもんじゃない。今度から読む雑誌や漫画は確かめてやる。無許可で読むな、見るな」
「スマホ見せろ、ネットは間違った知識の温床だ。これからは定期的に調べるからな」
蓮はどちらかといえば、お婆ちゃん陣営だと思ってた。素直じゃ無いし兄貴のこと見下してるけど、なんだかんだ俺のこと心配してくれてる存在と感じていた。今思えばどれも理不尽で信用してないとかそんな話じゃ無い、決めつけられていたんだ。これが洗脳ってやつなのかな、家族内のモラハラみたいなもんだ。実際こうしてしばらく離れてみるまで気が付かなかった。優秀なこいつの後ろ歩いてればそれなりにマシな人間になれる、あとちょっとだけ褒めてくれる、そんなありえない思考回路が露わになる。
両親は何も言ってこなかった、お婆ちゃんは心配してたけど……あの時はなんで心配されてるのか分からなかったな。
「人を信じすぎだ、大人になっても社畜扱いされて鬱になる未来しか見えねえ。どうせなら俺が養ってやろうか?」
「俺ここの高校受ける事にしたから。倍率はクソ高いけど頑張ればいけるだろ。ずっと成績は学年1位だし。兄貴は黙ってずっと俺の後ろ歩いてろ、安全だからな」
「友達はちゃんと選ばないと後で後悔するぞ、話が合うからなんて理由でオタクと仲良くやってんだろ? 写真みしてみろ、俺が確かめてやる」
確かに今までもちょっと違和感のある話はしてたけど、してたけども。その、ブラコンって恋愛感情とかは無いのか? せいぜい行き過ぎた家族愛レベルだよな? そうじゃなきゃ困る、具体的には俺と仁のことで。今まで仁と結婚するとか抜かしても何も言われないと思ってた、穀潰しがいなくなったとか思って貰えたらそれで十分だった。でも今回の件でまさかの壁その名も蓮が現れてしまった。
「……梓、大丈夫か?」
最悪のシナリオである武力行使が頭を巡っていた時に、襖から声がした。仁では無い、このちょっとチャラ男っぽくおちゃらけてるけど子供っぽい声は……奏だ。
この状況下で人と話せるかと悩んでいたら、無遠慮に失礼するぜと部屋に入ってきた。陽キャだからそっちから話を進めてくれそうだけど……ともかく退路が塞がれた中、俺は奏を見ることもできずに俯いていることしかできなかった。
「大丈夫か、食い過ぎじゃないか?」
一旦思考をリセットしようとして無理矢理食べる事に意識を向けた、満腹なんてものは頭の中には無く、ただあるだけを食べ続けた。それによっていつも常人の2倍は食べてる仁ですらも心配させるほどに食べてしまう次第だ。腹減ってると短く答えて再び米を口へ運んだ。
その後も心配する周囲の声を振り切って、食事を終えた瞬間に逃げるように俺の部屋まで走った。食べ過ぎて腹痛いし横腹も痛くなったけど今回ばかりは気にならない。言っておくが別に弟のことが気持ち悪くなったとか、ましては嫌いになったなんてのは断じて無い。ただ、家族からの愛の受け止め方がわからない俺には、こんなに大きな愛は受け止め切れない。ただそれだけの話だった。
「マジに大丈夫か? 皇子さんが医者呼ぼうかって言ってるぜ」
「え、いやいやそれはいいって……ごめん、1人にさせてくれ」
「……わかった」
仁にもいて欲しいとはほんの少し考えた。1人だと変なこといっぱい考えてしまいそうで、それが怖かったから。でもこれは俺1人の問題だ、それにブラコンの弟がいますなんて仁には口が裂けても言えない、下手したら暴動が起きる。身体が重い。今まで気がつかなかった弟からの愛が一度にのしかかっている、そうとすら思えた。
別に家族のことは嫌いじゃ無い、親が優秀な弟を可愛がるのは当然のことだと思っていたし、お婆ちゃんはなんだかんだ俺のことを可愛いと言ってくれてたから、寂しいなんて思ったことは一度もない。強いて言うなら、ちょっとだけ家族を神格化してたような気はしなくも無い。家族の愛はタダでは貰えない、期待に応えて裏切らず、それ相応の対価を支払ったものだけに送られる謂わば勲章のようなもの。少なくとも俺はそう思ってた。
弟は愛を受け取る資格があった、俺にはなかった、だだそれだけの話。無償の愛なんてのは、お婆ちゃんみたいな悟り開いた人じゃなきゃあげることなど到底できない至難の業、母親と父親が出来なかったのは悪いことじゃ無い。……あれ、俺って両親のことなんて呼んでたっけ? 頭の中では母さん父さん、いやお袋と親父? そういえばここ数年呼んでなかったな、話すだけで呼んでなかった。
「兄貴は間抜けなんだから不良に囲まれたら終わりだ、ちゃんと門限守れよ」
「兄貴は馬鹿だな、そんなことも知らないのか。そんなんじゃいつ間違った知識植え付けられるか分かったもんじゃない。今度から読む雑誌や漫画は確かめてやる。無許可で読むな、見るな」
「スマホ見せろ、ネットは間違った知識の温床だ。これからは定期的に調べるからな」
蓮はどちらかといえば、お婆ちゃん陣営だと思ってた。素直じゃ無いし兄貴のこと見下してるけど、なんだかんだ俺のこと心配してくれてる存在と感じていた。今思えばどれも理不尽で信用してないとかそんな話じゃ無い、決めつけられていたんだ。これが洗脳ってやつなのかな、家族内のモラハラみたいなもんだ。実際こうしてしばらく離れてみるまで気が付かなかった。優秀なこいつの後ろ歩いてればそれなりにマシな人間になれる、あとちょっとだけ褒めてくれる、そんなありえない思考回路が露わになる。
両親は何も言ってこなかった、お婆ちゃんは心配してたけど……あの時はなんで心配されてるのか分からなかったな。
「人を信じすぎだ、大人になっても社畜扱いされて鬱になる未来しか見えねえ。どうせなら俺が養ってやろうか?」
「俺ここの高校受ける事にしたから。倍率はクソ高いけど頑張ればいけるだろ。ずっと成績は学年1位だし。兄貴は黙ってずっと俺の後ろ歩いてろ、安全だからな」
「友達はちゃんと選ばないと後で後悔するぞ、話が合うからなんて理由でオタクと仲良くやってんだろ? 写真みしてみろ、俺が確かめてやる」
確かに今までもちょっと違和感のある話はしてたけど、してたけども。その、ブラコンって恋愛感情とかは無いのか? せいぜい行き過ぎた家族愛レベルだよな? そうじゃなきゃ困る、具体的には俺と仁のことで。今まで仁と結婚するとか抜かしても何も言われないと思ってた、穀潰しがいなくなったとか思って貰えたらそれで十分だった。でも今回の件でまさかの壁その名も蓮が現れてしまった。
「……梓、大丈夫か?」
最悪のシナリオである武力行使が頭を巡っていた時に、襖から声がした。仁では無い、このちょっとチャラ男っぽくおちゃらけてるけど子供っぽい声は……奏だ。
この状況下で人と話せるかと悩んでいたら、無遠慮に失礼するぜと部屋に入ってきた。陽キャだからそっちから話を進めてくれそうだけど……ともかく退路が塞がれた中、俺は奏を見ることもできずに俯いていることしかできなかった。
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