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ようこそ和の国へ!

タマモの告白

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俺が代わりに頭を下げて、ことの顛末は終了した。十二単衣を動きやすいように魔改造、もとい仕立てるのを始まるために店を閉めるらしいが、まだ少し恥ずかしそうだ。……仕事に支障が出ないことを祈るしかない。

お城に帰るときは少しワクワクしてしまった。動きやすい十二単衣ってちょっと想像つかないけど、店主の腕は確かだ。結婚どころか彼氏も作らず40歳、その道のプロと言って然るべきその腕を信じよう。明日わざわざお城に来てお披露目してくれるとのことで、もう次の日が楽しみだ。



……

…………

………………

「お疲れ様です、お夕飯までもう少々お待ちください。こちらが梓さんのお部屋ですよ」

お城に帰った俺達を待っていたのは、タマモをはじめとする城の使用人達だった。夕飯は風呂炊きの準備で大忙しなところ申し訳ないが、俺はタマモに泊まる部屋の案内をしてもらっていた。全員に個室とか本当にいいのだろうか、勇者とは言え所詮は一泊やそこらだと言うのに。

タマモの狐の尻尾と耳は大きく、後ろから見たら獣人というより妖怪みたいだ。実際コイツの似たような名前の妖狐がいたらしいけどそこら辺は管轄外だから知らない。しかもそんなタマモも振り返ると弟の蓮に瓜二つだから余計混乱してしまう。

「あの、僕の顔に何かついてますか?」

「いやいや、違うんだ。……タマモは皇子様の弟みたいなものなんだろ、仲はいいのか?」

「そんな! 皇子様と仲良しなんて恐れ多いです。でも、皇子様は優しくて公平で、獣人の僕でも家族のように接してくれます。優秀でありながら決して驕ることはなく、しかもいざと言うときは海軍司令として自ら前線に立つ勇敢さも併せ持って……」

その後もタマモによる全身全霊の皇子様へのラブコールは続いた。いいな、俺もそんな事自分の弟に言われてみたい。あーでも蓮がそんなの言ったらやっぱり気持ち悪いからいいや。でもこんなに素直で可愛い弟が羨ましくないのかと聞かれれば、羨ましいに決まってる。皇子様のように優秀だったら、蓮とももうちょっと素直に色々話せたんかな。

思えば譲治も仁の兄貴分だったな。やってる事や教えたことはお世辞にもいいことじゃなかったけど、一匹狼だった仁に色々面倒見てたのは今回の件でちゃんとわかった。面倒見も良いし堅気には親切で、なんというか、想像してたよりも良い奴だった。つまり何が言いたいかと言うと、俺の周りは優秀な兄貴もしくは兄貴ポジションが多いと言うことだ。やめろよそんなことしたら俺の無能さが際立つだけだろ。

「あ、あの……僕は梓さんも好きですよ」

「え? いや、俺王子様みたいに優秀なお兄ちゃんじゃないぞ。顔も普通だし、勇者だけど踊り子だし。全然良くねえ」

「そんな事ありませんよ! 勇者様は皆そうなのですが、獣人の僕を見ても全然差別しないじゃないですか。しかも梓さんは皇子様の話をたくさん聞いてくれます。まるでそう、初めて出会った時の皇子様のように!」

獣人って差別させる存在なの初めて知った。多分他のクラスメイトもタマモ見てビビることはあっても差別はしないと思う。詳しく聞けば、獣人はコグダム都よりも更に北に出自をもつ、蝦夷民族と呼ばれた人間の末裔。動物どころか魔物との調和にすら成功した神秘の民族、人間と魔物や動物との間に生まれた子供が獣人の祖だと言われている。しかし神秘を科学や魔術で追求するコグダム都の勢力に押し負けた結果衰退して、のちに間も無く滅んだらしい。

タマモ曰く、こんな見た目のせいでどの世界でも異端扱いされ差別されることまずさしかないようだ。獣人ってのはやっぱりレアみたいだ、俗に言う亜人扱いだろう。俺は良いと思うんだけどな、尻尾や耳があるなんてカッコいいし。

「だからこそ梓さんは良い人なのです、僕は本当に尊敬してます!」

「なるほどな……いや、ありがとう。ここまで褒め称えられるのは初めてだからさ、ちょっとびっくりしただけだよ」

「あの……もし宜しければ梓さんの事、梓ほどじゃお兄様と言ってもよろしいでしょうか?」

うんそれはちょっと困る。いやタマモの行為とか尊敬とかを踏み躙りたいわけじゃない。顔面が小さい頃の弟(クソ生意気&優秀)に瓜二つ、そしてそれが俺の事をお兄様と呼ぶわけだ。確かにタマモの目の前では良いお兄ちゃんでいたいとは再三思ってることだけど、皇子様と同じ土俵に立とうだなんて思ったことがない。

「あの、期待と尊敬を胸に抱いてるところ悪いけど俺ってそんな凄くないよ?」

「凄いですよ! 世界を救うに相応しい素晴らしい勇者様の一人です、それに……」

「それに、だしたんだ?」

「あ、梓さんって、凄く大人の色気というか、とても色っぽいと言うか……こう言うの初めてなんです!」

俺は天を仰いだ。俺はとんでもない事をしてしまった、主に第二次性徴期の入り口付近にいる少年を性に目覚めさせる程度のことをしてしまった。
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