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俺に出来るもの

俺に必要なこと

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あの後俺はビックリするぐらい平和そのものの空気の中部屋に戻された。もうこの部屋にいい思い出はない。しかし時間が解決してそのうち笑い話、最悪武勇伝にでもなるだろと開き直って寝る支度をした。ベットに入る事10秒で眠りについた、いつもはこんなに
寝付きは良くないのに、やはりセックスは俺が思ってる以上に体力を使うなと再確認。

そして翌朝、もう俺に怖いものはなかった。

「なんかリビングに変な紙貼ってるらしいぞ」

そんな声が増え中から聞こえてくる。俺が眠たい目を擦って必死こいて……とまではいかないけど一所懸命に書いたそれは、着実にクラス中の人の目に入っているようだ。



筋トレ仲間募集!!!



たったこれだけの言葉だが、問題は内容ではない。みんなはまだ気が付いていないが、この船中に貼らせてもらった。料理班のためにキッチン、掃除班のために風呂場や廊下にも、掃除班には洗濯機に。休憩班でも見えるようにリビングという洒落込みだ。最初はみんな眠そうな顔一点張りだったが、左下に書いている巳陽梓の名前を見て目の色が変わるのはなかなかに面白い光景だった。

「梓と筋トレ……」

「エッチな体と」

「くんずほぐれつ!」

揃いも揃って考えてることが邪すぎて恐ろしかったが、まあ筋トレ手伝ってくれる同期はこの際なんでもいいかと思った。……俺が考えた地獄のメニューに耐えられるものだけが最後に残るのだから。それに俺はまだ準備があるから、こんな場所で立ち往生している場合ではない。

俺が貼りに貼りまくったおかげで、筋トレ仲間募集中の話はあっという間にひろがった。しかしたとへ好きな人と一緒とは言え、異世界に入ってチート能力手に入れてまで、筋トレをしたがるような酔狂な人間は珍しいのはわかっていた。実際に時間、昼過ぎになって集まってくれたのは、たったの「4人」だけだった。

「……マジで誰も来ないと思ってた」

「いや実際には俺たち以外にもいるけどな」

「なんか監視されてる気分だな……」

「まああいつらも後で来てくれるだろ! とにかく筋トレしようぜ!」

「頑張ります! なにやるの?」

集まったのは梅雨明、高林暁彦、藤屋勝、そして最後に柿原健吾だ。なかなか度胸も根気もありそうな錚々たるメンツに少し感動した。仁も入ってくれるのではと期待を抱いていたが、現在仁は大河を中心に医務室で雑用係としてこき使われていた。この様子じゃあ今日仲間に入るのは難しいだろうな。

周りを見ればやっぱり俺たちが気になっているのか、所々で視線を感じた。俺達を変だと思うのは勝手だし、なんなら俺たちを見て自分もやりたいと思ってくれたらそれでいいと思う。……薫は見にきてもくれないけど、それでも少しだけ待つ事にした。まあとにかく、今はこれから始まる地獄のトレーニングにコイツらが根を上げないことを祈るしかない。話はそれからだ。

「じゃあトレーニング開始! 名前に準備体操だ。手始めにラジオ体操ハード版5回な」

「え?」

「ハード版?」

「つべこべ言わない。先ずはダンベルを手に持った状態で前に上げて大きく背伸びの運動だ!」

俺が赤魔術師の成と、錬金術師の譲治に頭を下げて作ってもらったダンベルを全員2つずつ与えた。本当は20本も作ってもらったのだけど、俺を入れてたった5人では10本も余ってしまう。まだまだ仲間を探さないとな。そしてなんとこのダンベルの重さは、1つ40kg、2つ合わせて80kgだ。これを持った状態で最初の背伸びの運動とら腕を回す運動をしてもらう。

「お、重い……」

「でもやっぱチートのおかげか耐えられるな」

「ああ。全く動かないって程じゃない、寧ろやろうと思えばできる。でも藤屋と梓はやる気が違うな」

冷静に分析している3人は、最初からクライマックスなテンションをキープしている俺とふじやんをみて恐れ慄いていた。そうだそうだ、そうやってどんどんやる気になって欲しいものだ。

その後も当たり前のようにラジオ体操ハード版は続いたが、流石集まられた精鋭は違う。ふじやんは衰えを知らず明も無心でそつなくこなしている。暁彦は根を上げるそぶりを見せながらも内なる体力はまだ残ってるとみた。一番心配だった健吾は準備体操の時点でクタクタだったが、ガッツで乗り越えるという熱意を感じたからあえて話しかけることがなかった。

しかし周りの外野はこの時点でこの地獄のトレーニングに恐れ慄いたようで、少しずつ視線が少なくなっていくのが手にとるようにわかった。しかしこの程度で振り落とされるようじゃあ異世界を救うなんてのは夢のまた夢、少なくともチート能力に癖のある俺は、人より何倍の努力が必要だと、休憩中にももう2回ハード版体操をした。

「……大丈夫か?」

「余裕だ。おらここから本番だ、まずは腕立て100回を休憩込みで3セット。1セットごとに休憩入れるから頑張るぞ」

クタクタの俺を心配する4人をよそに、まだまだだと気合を入れ直した。
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