クラスで異世界に転移するまではいい、でも175㎝の俺が踊り子って誰得だよ!

荒瀬竜巻

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魔王の陰謀 下

ベテランってやつです ⭐︎

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化粧台に連れて行かれた俺は、俺の顔は、もう踊り子達のなすがままに色々つけられていた。

「洗顔料はよく泡立てて、そんでこすならいように洗う」

「は、はい」

「重要なのは水の温度だよ。熱すぎず、冷たすぎず。この温度覚えてね」

「タオルでゴシゴシしちゃ駄目だ、顔に優しく押し当てるように!」

「はい、すみません……」

俺はスキンケアのノウハウをたたき込まれていた。踊り子達が持参した洗顔料?は、少量でもめちゃくちゃ泡立っていて、ふわふわしていてくすぐったい。しかしまだ授業は続く。

「まだだ、油分を洗い流した肌をそのままにしとくとか踊り子のやる事じゃねえ」

「化粧水、美容液、最後に乳液な。水分が多いのが先、油分が多いのが後だ。乳液はお前まだ若いから、つけすぎは逆効果だぜ」

「なるほど……?」

「最後に日焼け止め。こいつで紫外線の侵入を許すな」

顔に日焼け止め塗るんかと思ったが多勢に無勢、顔に塗られるそれは花の香りがして、自分が女になったような変な錯覚を覚えた。鏡から見える後ろの希望とデュリオさんはというと、まるで可愛い小動物を見るかのように見つめていた。いや、見てないで助けてくれ。

「本来ならこのまま化粧をするんだけども……」

「お前にはいらねーな」

え、俺遂に化粧すんの?ギョッとしたが、踊り子達にはその意図がないようで安心した。

「化粧どころかスキンケアもしてないのにその肌かよ……」

「なんか肌の素質の差を見せつけられた」

「肌の素質……?まあ言いたい事はわかる。はっきり言って嫉妬した」

安心できるようなことでもないらしい。踊り子になってから、足も手も胴体も毛がなくなったショックで自分の肌とか見てなかった。同業者から見ればそんなすごい肌なのか。

その後も俺は囲まれ続けて、女子みたいな話に付き合い続けた。すると突然俺たちが入った入口とは違う、控え室と外界を繋ぐドアがガチャリと開いた。踊り子には見えない、至って普通の青年だった。

「デュリオ・ルティーニさん、トップバッターですよ!」

「おう、任せとけ!」

意気揚々とデュリオさんが立ち上がる。なるほど彼は裏方というわけか。ってトップバッターという事は……

「その、もう始まる感じ?」

「だろうね。デュリオさんはリーダーだから順位関係なく一番なんだ。その後に新人、中堅、ベテランや人気踊り子の順で踊っていくんだ」

ならほど。新人中堅ベテラン関係なく人気な子は最後に踊るのか。俺は、その、確か大トリなんだっけ。

「そうそう、まさに大型新人ってやつだ」

この踊り子達のなか最後に踊るとかプレッシャーや責任がとてつもない。どうしよう変な汗かいてきた。俺の心配なんてどこ吹く風、踊り子達はここからステージに立つデュリオさんが見れるよと、俺を引っ張って大きめの覗き窓まで連れて行った。

「これって外から見えているんじゃ……」

「平気だ。そこら辺はちゃんと細工されてるんでな」

原理は何もわからないが、どうやら外からは見えないらしい覗き窓からステージを見ていた。夥しいとも言えるほどの観客がいるのはゾッともしたし驚いたが、その前にその中でも負けずに手を振るデュリオさんの感情に恐れ慄いた。

「デュリオのショーは凄いから、よく見とけよ新人!」

そうなのか、ちょっと気になるな。生涯ポールダンスをしたことも見たこともなかった、後で踊るわけだし手本として見ておきたい。どんな感じなのだろう期待三割不安七割で見ることにした。ソワソワが止まらなかった俺の胸だが、デュリオさんがポールに触れた瞬間、空気が変わった。俺の胸も射止められるようにとまったのがわかる。

周りの重力を叩き潰すかのような軽やかな動き、あんな棒で身体のバランス保てるなんて信じられない。まさしく超絶技巧ってやつなんだと思う。それだけじゃないんだ、

「やっぱエロいなぁ……」

「熟練だからこその色気がいいよな」

周りが、観客が絶賛している。そのとうり、デュリオさんは体に巻かれた布から見えそうで見えない恥部をチラつかせて、されど決して下品に見えないように演出している。日に焼けた小麦色の腰を振ると、多くの観客がどよめいた。控えめに言って凄くいやらしい。

男の身体ってこんなに綺麗なんだと、見せ方一つでここまでエロくなるんだと知った。見ている客が勃起しているのが見えて、まるで未知の世界だ。

「どうよ新人、凄いだろ?」

「え、はい……なんかさっきまでと全然雰囲気が違いますね」

「それがあの人の良いところさ。若手の頃からあんなんで、小さなステージでやってた頃は興奮した客に襲われそうだったこともあるみたいだからな」

聞けば聞くほどレベルが違うな。俺もこんなことしなきゃいけないんだろうか。それを想像するとぶるりと身体が震えた。あんな熱視線を受けてしかも勃起されて、その全てが自分を対象とした時、この発情体質はどうなってしまうのだろう。自分で制御できないほど壊れてしまう自分は想像するだけで小さくああ、と声が出てしまった。

「大丈夫か?」

希望が後ろから俺を支えてくれる。そうだ、今はそのままでいてくれ。トップバッターデュリオさんのショーが終わって、身体中にチップをねじ込まれているのをボーッと見ながら、そんなことを考えていた。

「そういえば、希望は勃起しないんな」

「ん!? ま、まあな」

「なんで? 俺よりデュリオさんの方がエロいだろ?」

「……鈍感」

不貞腐られた。何か悪いことをしたかと思いながら、今は縋り付いてきた。身体の、腹の奥がムズムズするのを隠していた。



ヒント:恋は盲目
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