57 / 216
魔王の陰謀 下
ベテランってやつです ⭐︎
しおりを挟む
化粧台に連れて行かれた俺は、俺の顔は、もう踊り子達のなすがままに色々つけられていた。
「洗顔料はよく泡立てて、そんでこすならいように洗う」
「は、はい」
「重要なのは水の温度だよ。熱すぎず、冷たすぎず。この温度覚えてね」
「タオルでゴシゴシしちゃ駄目だ、顔に優しく押し当てるように!」
「はい、すみません……」
俺はスキンケアのノウハウをたたき込まれていた。踊り子達が持参した洗顔料?は、少量でもめちゃくちゃ泡立っていて、ふわふわしていてくすぐったい。しかしまだ授業は続く。
「まだだ、油分を洗い流した肌をそのままにしとくとか踊り子のやる事じゃねえ」
「化粧水、美容液、最後に乳液な。水分が多いのが先、油分が多いのが後だ。乳液はお前まだ若いから、つけすぎは逆効果だぜ」
「なるほど……?」
「最後に日焼け止め。こいつで紫外線の侵入を許すな」
顔に日焼け止め塗るんかと思ったが多勢に無勢、顔に塗られるそれは花の香りがして、自分が女になったような変な錯覚を覚えた。鏡から見える後ろの希望とデュリオさんはというと、まるで可愛い小動物を見るかのように見つめていた。いや、見てないで助けてくれ。
「本来ならこのまま化粧をするんだけども……」
「お前にはいらねーな」
え、俺遂に化粧すんの?ギョッとしたが、踊り子達にはその意図がないようで安心した。
「化粧どころかスキンケアもしてないのにその肌かよ……」
「なんか肌の素質の差を見せつけられた」
「肌の素質……?まあ言いたい事はわかる。はっきり言って嫉妬した」
安心できるようなことでもないらしい。踊り子になってから、足も手も胴体も毛がなくなったショックで自分の肌とか見てなかった。同業者から見ればそんなすごい肌なのか。
その後も俺は囲まれ続けて、女子みたいな話に付き合い続けた。すると突然俺たちが入った入口とは違う、控え室と外界を繋ぐドアがガチャリと開いた。踊り子には見えない、至って普通の青年だった。
「デュリオ・ルティーニさん、トップバッターですよ!」
「おう、任せとけ!」
意気揚々とデュリオさんが立ち上がる。なるほど彼は裏方というわけか。ってトップバッターという事は……
「その、もう始まる感じ?」
「だろうね。デュリオさんはリーダーだから順位関係なく一番なんだ。その後に新人、中堅、ベテランや人気踊り子の順で踊っていくんだ」
ならほど。新人中堅ベテラン関係なく人気な子は最後に踊るのか。俺は、その、確か大トリなんだっけ。
「そうそう、まさに大型新人ってやつだ」
この踊り子達のなか最後に踊るとかプレッシャーや責任がとてつもない。どうしよう変な汗かいてきた。俺の心配なんてどこ吹く風、踊り子達はここからステージに立つデュリオさんが見れるよと、俺を引っ張って大きめの覗き窓まで連れて行った。
「これって外から見えているんじゃ……」
「平気だ。そこら辺はちゃんと細工されてるんでな」
原理は何もわからないが、どうやら外からは見えないらしい覗き窓からステージを見ていた。夥しいとも言えるほどの観客がいるのはゾッともしたし驚いたが、その前にその中でも負けずに手を振るデュリオさんの感情に恐れ慄いた。
「デュリオのショーは凄いから、よく見とけよ新人!」
そうなのか、ちょっと気になるな。生涯ポールダンスをしたことも見たこともなかった、後で踊るわけだし手本として見ておきたい。どんな感じなのだろう期待三割不安七割で見ることにした。ソワソワが止まらなかった俺の胸だが、デュリオさんがポールに触れた瞬間、空気が変わった。俺の胸も射止められるようにとまったのがわかる。
周りの重力を叩き潰すかのような軽やかな動き、あんな棒で身体のバランス保てるなんて信じられない。まさしく超絶技巧ってやつなんだと思う。それだけじゃないんだ、
「やっぱエロいなぁ……」
「熟練だからこその色気がいいよな」
周りが、観客が絶賛している。そのとうり、デュリオさんは体に巻かれた布から見えそうで見えない恥部をチラつかせて、されど決して下品に見えないように演出している。日に焼けた小麦色の腰を振ると、多くの観客がどよめいた。控えめに言って凄くいやらしい。
男の身体ってこんなに綺麗なんだと、見せ方一つでここまでエロくなるんだと知った。見ている客が勃起しているのが見えて、まるで未知の世界だ。
「どうよ新人、凄いだろ?」
「え、はい……なんかさっきまでと全然雰囲気が違いますね」
「それがあの人の良いところさ。若手の頃からあんなんで、小さなステージでやってた頃は興奮した客に襲われそうだったこともあるみたいだからな」
聞けば聞くほどレベルが違うな。俺もこんなことしなきゃいけないんだろうか。それを想像するとぶるりと身体が震えた。あんな熱視線を受けてしかも勃起されて、その全てが自分を対象とした時、この発情体質はどうなってしまうのだろう。自分で制御できないほど壊れてしまう自分は想像するだけで小さくああ、と声が出てしまった。
「大丈夫か?」
希望が後ろから俺を支えてくれる。そうだ、今はそのままでいてくれ。トップバッターデュリオさんのショーが終わって、身体中にチップをねじ込まれているのをボーッと見ながら、そんなことを考えていた。
「そういえば、希望は勃起しないんな」
「ん!? ま、まあな」
「なんで? 俺よりデュリオさんの方がエロいだろ?」
「……鈍感」
不貞腐られた。何か悪いことをしたかと思いながら、今は縋り付いてきた。身体の、腹の奥がムズムズするのを隠していた。
ヒント:恋は盲目
「洗顔料はよく泡立てて、そんでこすならいように洗う」
「は、はい」
「重要なのは水の温度だよ。熱すぎず、冷たすぎず。この温度覚えてね」
「タオルでゴシゴシしちゃ駄目だ、顔に優しく押し当てるように!」
「はい、すみません……」
俺はスキンケアのノウハウをたたき込まれていた。踊り子達が持参した洗顔料?は、少量でもめちゃくちゃ泡立っていて、ふわふわしていてくすぐったい。しかしまだ授業は続く。
「まだだ、油分を洗い流した肌をそのままにしとくとか踊り子のやる事じゃねえ」
「化粧水、美容液、最後に乳液な。水分が多いのが先、油分が多いのが後だ。乳液はお前まだ若いから、つけすぎは逆効果だぜ」
「なるほど……?」
「最後に日焼け止め。こいつで紫外線の侵入を許すな」
顔に日焼け止め塗るんかと思ったが多勢に無勢、顔に塗られるそれは花の香りがして、自分が女になったような変な錯覚を覚えた。鏡から見える後ろの希望とデュリオさんはというと、まるで可愛い小動物を見るかのように見つめていた。いや、見てないで助けてくれ。
「本来ならこのまま化粧をするんだけども……」
「お前にはいらねーな」
え、俺遂に化粧すんの?ギョッとしたが、踊り子達にはその意図がないようで安心した。
「化粧どころかスキンケアもしてないのにその肌かよ……」
「なんか肌の素質の差を見せつけられた」
「肌の素質……?まあ言いたい事はわかる。はっきり言って嫉妬した」
安心できるようなことでもないらしい。踊り子になってから、足も手も胴体も毛がなくなったショックで自分の肌とか見てなかった。同業者から見ればそんなすごい肌なのか。
その後も俺は囲まれ続けて、女子みたいな話に付き合い続けた。すると突然俺たちが入った入口とは違う、控え室と外界を繋ぐドアがガチャリと開いた。踊り子には見えない、至って普通の青年だった。
「デュリオ・ルティーニさん、トップバッターですよ!」
「おう、任せとけ!」
意気揚々とデュリオさんが立ち上がる。なるほど彼は裏方というわけか。ってトップバッターという事は……
「その、もう始まる感じ?」
「だろうね。デュリオさんはリーダーだから順位関係なく一番なんだ。その後に新人、中堅、ベテランや人気踊り子の順で踊っていくんだ」
ならほど。新人中堅ベテラン関係なく人気な子は最後に踊るのか。俺は、その、確か大トリなんだっけ。
「そうそう、まさに大型新人ってやつだ」
この踊り子達のなか最後に踊るとかプレッシャーや責任がとてつもない。どうしよう変な汗かいてきた。俺の心配なんてどこ吹く風、踊り子達はここからステージに立つデュリオさんが見れるよと、俺を引っ張って大きめの覗き窓まで連れて行った。
「これって外から見えているんじゃ……」
「平気だ。そこら辺はちゃんと細工されてるんでな」
原理は何もわからないが、どうやら外からは見えないらしい覗き窓からステージを見ていた。夥しいとも言えるほどの観客がいるのはゾッともしたし驚いたが、その前にその中でも負けずに手を振るデュリオさんの感情に恐れ慄いた。
「デュリオのショーは凄いから、よく見とけよ新人!」
そうなのか、ちょっと気になるな。生涯ポールダンスをしたことも見たこともなかった、後で踊るわけだし手本として見ておきたい。どんな感じなのだろう期待三割不安七割で見ることにした。ソワソワが止まらなかった俺の胸だが、デュリオさんがポールに触れた瞬間、空気が変わった。俺の胸も射止められるようにとまったのがわかる。
周りの重力を叩き潰すかのような軽やかな動き、あんな棒で身体のバランス保てるなんて信じられない。まさしく超絶技巧ってやつなんだと思う。それだけじゃないんだ、
「やっぱエロいなぁ……」
「熟練だからこその色気がいいよな」
周りが、観客が絶賛している。そのとうり、デュリオさんは体に巻かれた布から見えそうで見えない恥部をチラつかせて、されど決して下品に見えないように演出している。日に焼けた小麦色の腰を振ると、多くの観客がどよめいた。控えめに言って凄くいやらしい。
男の身体ってこんなに綺麗なんだと、見せ方一つでここまでエロくなるんだと知った。見ている客が勃起しているのが見えて、まるで未知の世界だ。
「どうよ新人、凄いだろ?」
「え、はい……なんかさっきまでと全然雰囲気が違いますね」
「それがあの人の良いところさ。若手の頃からあんなんで、小さなステージでやってた頃は興奮した客に襲われそうだったこともあるみたいだからな」
聞けば聞くほどレベルが違うな。俺もこんなことしなきゃいけないんだろうか。それを想像するとぶるりと身体が震えた。あんな熱視線を受けてしかも勃起されて、その全てが自分を対象とした時、この発情体質はどうなってしまうのだろう。自分で制御できないほど壊れてしまう自分は想像するだけで小さくああ、と声が出てしまった。
「大丈夫か?」
希望が後ろから俺を支えてくれる。そうだ、今はそのままでいてくれ。トップバッターデュリオさんのショーが終わって、身体中にチップをねじ込まれているのをボーッと見ながら、そんなことを考えていた。
「そういえば、希望は勃起しないんな」
「ん!? ま、まあな」
「なんで? 俺よりデュリオさんの方がエロいだろ?」
「……鈍感」
不貞腐られた。何か悪いことをしたかと思いながら、今は縋り付いてきた。身体の、腹の奥がムズムズするのを隠していた。
ヒント:恋は盲目
93
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中

就職するところがない俺は男用のアダルトグッズの会社に就職しました
柊香
BL
倒産で職を失った俺はアダルトグッズ開発会社に就職!?
しかも男用!?
好条件だから仕方なく入った会社だが慣れるとだんだん良くなってきて…
二作目です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる