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プロローグ
魔術議員
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関根くんの回答があるまで、私は目を離さなかった。私は確信していた、こんな惨状が一つの街だけで起こっているわけがない。もっというと、政府が撒いた種は全国に広がって当然だ。きっとこの街以外にも酷いところはいっぱいある。
「……ええ。この八王子市以外にも、全国各地にこう言った被害に遭っている街は多くあります」
重い口を開いてそういった。それはそれは、苦しそうな声だった。
「そういう人全てを助けるには、どうすれば?」
「…………見据えているのは遥か先ですか」
そうだ。私は世間知らずだ、実際にここに来るまでこんな事が行われているのを何にも知らなかった。でも何が正義で何が悪かはちゃんとわかっているつもりだ。ここで苦しんでいる人を助けるのは、いい事だ。でも多分、日本中の苦しんでいる人を助けるのはもっといい事だ。
関根くんはそんな私の想いを汲んだのか、それともただ自分の知っている情報を提供しただけなのかはわからないけれど、教えてくれた。
「魔術議員になれば、恐らく」
「そ、そうですか……」
魔術議員、うんよく知っている。お姉様も魔術議員だからね。確かにそうなればお姉様だけではなく、偉い人ともお話ができるかもしれない。関根くんは話を続けた。
魔術議員になるにはまずチームを組み、そのチームで協力して日本で領地を確立し、増やしていく。他のチームの領地が欲しい場合は、魔術で戦って奪い合う。そして政府が決めた一定の領地を手に入れたチームは、ようやく魔術議員になるための試験が受けられる。それをクリアしたら晴れて魔術議員になれる。魔術議員には年齢、性別全てにおいてなんの制限もないようだ。
関根くんは丁寧に説明してくれた。なるほど確かにそれなら子供もお年寄りも、男の人も女の人も関係なく素質がある人を魔術議員にできるね。
「僕たち救済組織は八王子市の待遇改善をマニフェストにチームとして活動しているんです。その証拠にここは僕たちの領土ですからね。あの……いくのですか?」
確認するように尋ねてくる彼を前に一瞬は迷った。でも私は躊躇わない、今確実にいい事をしようとしている、なら胸を張るべきだ。
「はい!私も頑張って別のチームを作ります!」
こうして私は宣言した。関根くんとは別のチームをどうにか作ろう。まずはお母様達に報告を……っあ……
「そういえば、迷子でしたね。まずはこの路地裏から出ることに致しましょう」
「ごめんなさい……」
自分で自分が心配になった。若干急ぎ目に歩いて無事全員がいた場所まで連れて行かれた。予定の時間に30分過ぎても来ない私をクラスメイト総出で探したらしい。なんというか、本当にすみませんでした。恥ずかしさとか申し訳なさとかで一杯になり、身体が変な汗をかいている。
関根くんは猫のぬいぐるみをあいも変わらず大切そうに抱きしめながら、私に向かって深くお辞儀をした。ありがとうと言いながらぬいぐるみの頭を撫でてあげると、まるで自分のことのように喜んでくれた。
バスに乗る一歩手前でも挨拶をした。
「じゃあね関根くん!高橋くんにもよろしくね、ありがとう!」
「はい、チーム作り頑張って下さい」
バスが出るまで、いや出ても私は窓際で関根くんに手を振り続けた。関根くんは猫のぬいぐるみの左手を左右に振ってバイバイしてくれている。そのまま見えなくなるまで手を振り続け、一息着くように前に向き直ると、みんながみんな私をじっと見ていた。
どうしたのとドキドキしていたら、次の瞬間畳み掛けるように質問攻めにされた。
「ねえねえ、さっきの人誰?」
「伊藤さんのお友達?」
「もしかして彼氏!?」
全方向からされる質問に私はなす術なく押し潰された。ここにいるのはほとんど生きてる中で男の人と話す機会がなかった女の子だ。この反応は当然かもしれない。でも私達はそんなじゃない。ただ迷子から助けてくれただけだ。
迷子といえば、高橋くんは大丈夫かな。酷い目にあってなきゃいいけれど。うん、またいつか会おう。彼には会わなきゃいけない、そんな気がするんだ。
……なんて事を考えていたら、関根くんの質問に対して黙秘しているように見えると散々誤解させられたのはまた別の話。
「……ええ。この八王子市以外にも、全国各地にこう言った被害に遭っている街は多くあります」
重い口を開いてそういった。それはそれは、苦しそうな声だった。
「そういう人全てを助けるには、どうすれば?」
「…………見据えているのは遥か先ですか」
そうだ。私は世間知らずだ、実際にここに来るまでこんな事が行われているのを何にも知らなかった。でも何が正義で何が悪かはちゃんとわかっているつもりだ。ここで苦しんでいる人を助けるのは、いい事だ。でも多分、日本中の苦しんでいる人を助けるのはもっといい事だ。
関根くんはそんな私の想いを汲んだのか、それともただ自分の知っている情報を提供しただけなのかはわからないけれど、教えてくれた。
「魔術議員になれば、恐らく」
「そ、そうですか……」
魔術議員、うんよく知っている。お姉様も魔術議員だからね。確かにそうなればお姉様だけではなく、偉い人ともお話ができるかもしれない。関根くんは話を続けた。
魔術議員になるにはまずチームを組み、そのチームで協力して日本で領地を確立し、増やしていく。他のチームの領地が欲しい場合は、魔術で戦って奪い合う。そして政府が決めた一定の領地を手に入れたチームは、ようやく魔術議員になるための試験が受けられる。それをクリアしたら晴れて魔術議員になれる。魔術議員には年齢、性別全てにおいてなんの制限もないようだ。
関根くんは丁寧に説明してくれた。なるほど確かにそれなら子供もお年寄りも、男の人も女の人も関係なく素質がある人を魔術議員にできるね。
「僕たち救済組織は八王子市の待遇改善をマニフェストにチームとして活動しているんです。その証拠にここは僕たちの領土ですからね。あの……いくのですか?」
確認するように尋ねてくる彼を前に一瞬は迷った。でも私は躊躇わない、今確実にいい事をしようとしている、なら胸を張るべきだ。
「はい!私も頑張って別のチームを作ります!」
こうして私は宣言した。関根くんとは別のチームをどうにか作ろう。まずはお母様達に報告を……っあ……
「そういえば、迷子でしたね。まずはこの路地裏から出ることに致しましょう」
「ごめんなさい……」
自分で自分が心配になった。若干急ぎ目に歩いて無事全員がいた場所まで連れて行かれた。予定の時間に30分過ぎても来ない私をクラスメイト総出で探したらしい。なんというか、本当にすみませんでした。恥ずかしさとか申し訳なさとかで一杯になり、身体が変な汗をかいている。
関根くんは猫のぬいぐるみをあいも変わらず大切そうに抱きしめながら、私に向かって深くお辞儀をした。ありがとうと言いながらぬいぐるみの頭を撫でてあげると、まるで自分のことのように喜んでくれた。
バスに乗る一歩手前でも挨拶をした。
「じゃあね関根くん!高橋くんにもよろしくね、ありがとう!」
「はい、チーム作り頑張って下さい」
バスが出るまで、いや出ても私は窓際で関根くんに手を振り続けた。関根くんは猫のぬいぐるみの左手を左右に振ってバイバイしてくれている。そのまま見えなくなるまで手を振り続け、一息着くように前に向き直ると、みんながみんな私をじっと見ていた。
どうしたのとドキドキしていたら、次の瞬間畳み掛けるように質問攻めにされた。
「ねえねえ、さっきの人誰?」
「伊藤さんのお友達?」
「もしかして彼氏!?」
全方向からされる質問に私はなす術なく押し潰された。ここにいるのはほとんど生きてる中で男の人と話す機会がなかった女の子だ。この反応は当然かもしれない。でも私達はそんなじゃない。ただ迷子から助けてくれただけだ。
迷子といえば、高橋くんは大丈夫かな。酷い目にあってなきゃいいけれど。うん、またいつか会おう。彼には会わなきゃいけない、そんな気がするんだ。
……なんて事を考えていたら、関根くんの質問に対して黙秘しているように見えると散々誤解させられたのはまた別の話。
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