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最終章
大多喜到着
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とかくするうち、電車は大多喜駅に着いた。この駅の駅舎は大多喜城と言う地元の城をモデルにした造りにされていて、改札口を出て行きいそいそと正面口から駅舎を眺めてみれば、それは鉄道の施設としては荘厳な雰囲気を醸していた。秀男は一枚写真を撮りたくなったが、デジカメを持ってきていない事に気付き少しうなだれてしまう。秀男と共に大多喜駅で降りた観光客達はそろって正面口から写真を撮り始めていた。そういえば「鉄道ファン」でも大多喜駅の駅舎の建築的独自性が取り上げられていたような気がする。だが気付いた時にはもう後の祭りで、写真撮影機がなかったらどうしようもないのだ。秀男は足を駅から大多喜の街へ向ける事にした。
秀男はまず駅前にある街の観光案内所へ入った。この観光案内所も城のような形をした立派な建物だった。駅舎の独自性といいこの観光案内所の設計といい、大多喜が城下町である事を何となく悟った彼は大多喜城を見てみたくなっていた。観光案内所のおばさんにそれを説明すると、城までの簡単な経路を記した地図を渡された。それによればどうやら大多喜高校の傍を通り抜けて坂を上がっていくようなのである。小学校にしろ、中学校にしろ、高校にしろ、学校と名が付くものの近くには近寄りたくはなかった秀男は多少尻込みをしたものの、やっぱりここまで来た以上は行ってみる価値はあると思ったので行く事に決めた。ただ真っ先に大多喜城に向かうのではなく、しばらく城下町の街並みを見て楽しんでから行ってみる事に決めた。
大多喜の街に入り込んでみるとコンビニがない事にすぐ気が付いた。そしてこの街には瓦葺きの屋根の家がとても多いのだった。街を散策していて偶然見つけた大多喜旅館と言う旅館などは、江戸時代から続いている旅館であるらしく国の登録有形文化財にも指定されているそうである。商い資料館と言う施設は江戸時代の大多喜町の商人の道具などを展示しているところだったが、外観がこれまた江戸時代から切り取ってきたような古めかしさで「あっ」とそれは驚いてしまうような遺構そのままなのである。コンクリートの舗装道路とあまりにもはまり合っていないので妙な不気味ささえ感じさせる程だった。江戸時代にタイムスリップしたとまでは言い切れないものの、大多喜町の古風な建築物の多さには大変楽しまさせてもらえたと思う。
舗装道路さえ視界外に追いやれば大正や昭和初期の街を歩いた気分にさせられたのだから。夷隅川の流れもまた、緩やかで昭和レトロな雰囲気がある川だった。県道231号線から川底を覗いてみたら、澄んだ水の中を黒い鯉達が泳ぎ回っていた。橋から飛んで川へ飛び降りたくなるほど川が綺麗でその水質が気持ちよさそうであったので実際にやってみようと橋の欄干をよじ登ろうとしたところ、見知らぬおじいさんにいきなり怒鳴られて、秀男はひどく狼狽しそこから走り去ったのだった。そんなこんなで大多喜の街を散策しきった後、秀男は大多喜城へ向かう事にした。ひとまず大多喜駅へ戻ろうと思い、そのまま大多喜駅へと足早に歩く。
大多喜駅に戻ったのは午後二時半頃であった。早く行って戻ってこないと日帰りで帰れなくなる。そう思った彼は早々と大多喜城に向けて足を急がせた。大多喜城は長い坂の上にあるのだが、その長い坂の右横に大多喜高校があった。何だがやけに坂の右横が騒がしかったので目を横に向けてみると、大多喜高校のグラウンドがあり、そこで運動会が開催されている。クラス対抗リレーが目下行われているのだろう、ピストルの銃声と女子高生達の賑やかな声援が聞こえてきた。と同時にあの馴染みの曲が、そうZARDの「負けないで」が、彼の耳に飛び込んできたのである
。
ちょうどサビの部分であっただろうか「負けないでもう少し、最後まで走り抜けて。どんなに離れてても、心はそばにいるわ。」の歌詞が透き通った声質で聞こえてくる。秀男は坂の途中で立ち止まった。「どんなに離れてても、心はそばにいるわ。」の言葉が彼をその場に留めさせたようだった。そうだ。ZARDの坂井さんは生きてるんだ、俺の心の中で。どんなに離れてても(私が天国に行ってしまっても)、心はそばにいるわ(坂井さんの心は俺の心のそばにいてくれるんだ。)と言ってくれているんだから。秀男は嬉しかった。坂井さんはこの世から全く消えてしまった訳ではなく、歌詞に残した通りファンの心に生きてる。そんな事に今気付けた秀男はただただ嬉しかった。と同時に無性に走りたくなった。その歌詞の通り最後まで走り抜けたいと思った。この時秀男は決意した。「陸上部に戻ろう」と。退部届けを取り消してもらうように顧問の先生に掛け合ってみようと、そう決めたのだった。「負けないで」が鳴り終わり、クラス対抗リレーも終わった後秀男は坂の上まで走り抜けた。春休みに陸上部を退部して以来の全力疾走だった。
城は三十メートル位の高さがあるものだった。城の中に入ろうと思って財布の中を確認したが、城自体に入る事が出来なかった。秀男は仕方なくベンチに座った。ベンチに座って気持ちを落ち着かせて陸上部への復帰について考えてみた。やはりどうしても陸上部に戻りたかった。額ににじむ汗が非常に生々しい。そして瑞々しかった。坂井さんが亡くなってから先刻の「負けないで」を聞くまでずっと感じていた虚脱感、虚無感というような一種の無力感みたいな心の空白が坂を全力疾走した事で振り切れたためだろうか、もうなくなっていた。大多喜の街を眺めた事も関係はしているのだろうけどもその無力感がなくなった一番の契機は大多喜高校のクラス対抗リレーを観戦して「負けないで」を聞けた事だっただろう。そしてまた走りたいと思えた。要はまた学校へ行こうと思えたのだ。
夕暮れの五時過ぎ辺りまで秀男は大多喜城のベンチにただぼーっと座っていた。ただ途中四時位から雨が降ってきたので、身体は雨に濡れた。全身雨でびちょびちょになって大多喜駅へ戻る羽目になってしまった。東村山に帰ったのは午後九時を過ぎた頃だった。久米川駅で降りて秀男は空堀川伝いを歩いて帰っていた時偶然、自転車に乗ってる室井君と出会った。声は向こうから掛けてきた。
「藤田、久しぶり。」
「よっ、室井。」
「どこか行ってたの?」
「うん。覚えてるかな?大多喜の事」
「もちろん覚えてるよ。何、大多喜に行っていたの?」
「そうだよ。今日行ってきたんだ。」
「何だよ。一緒に行くはずだっただろ?」
「まぁそうだけどよ。その不登校だしな、今俺。」
「不登校だろうが関係ねぇよ。連絡くれたら一緒に行っただろうに。」
「ありがとうな。」
「どうして学校来なくなっちゃったんだよ。」
「春休みに陸上部を辞めちゃってさ。それからなんだが学校が居心地悪くなってきちゃってさ。それで始業式の後から学校へ行けなくなっちゃったんだよな。」
「そんなんだろうと思ったけど。」
「だけどよ。俺明日から学校に行くから。またよろしくな。」
「なんだよ急に。部活はどうすんだよ?」
「復帰出来るかどうか顧問の先生に聞いてみる。復帰出来たらまた陸上部で走ろうと思ってるんだ。」
「それがいいよ。藤田は足が速いんだから辞めたらもったいねぇって。」
「ありがとうな。またな。明日学校で。」
「おう。またいつか大多喜に一緒に行こな。もう夏休みが近いから行けるとしたら高校受験が終わってからだろうけどよ。」
「そうだな。」
そうして室井君は西友に行くなどと言って久米川駅の方向へ去っていった。
翌日秀男は学校へ行った。その日の放課後顧問の先生に戻りたい理由を説明し簡単に辞めてしまった事を謝罪し復帰の願いを聞いてもらった。秀男の希望は許された。秀男は翌々日の放課後から陸上部の練習に参加し始めた。陸上部の仲間達は最初は冷たい対応だったが徐々にまた打ち解けていく事が出来た。そうそう。運動会にも秀男は参加する事が出来た。クラス対抗リレーではアンカーとしてバトンをもらいコースを走り抜けた。その時の応援曲はもちろん「負けないで」であった。
秀男はまず駅前にある街の観光案内所へ入った。この観光案内所も城のような形をした立派な建物だった。駅舎の独自性といいこの観光案内所の設計といい、大多喜が城下町である事を何となく悟った彼は大多喜城を見てみたくなっていた。観光案内所のおばさんにそれを説明すると、城までの簡単な経路を記した地図を渡された。それによればどうやら大多喜高校の傍を通り抜けて坂を上がっていくようなのである。小学校にしろ、中学校にしろ、高校にしろ、学校と名が付くものの近くには近寄りたくはなかった秀男は多少尻込みをしたものの、やっぱりここまで来た以上は行ってみる価値はあると思ったので行く事に決めた。ただ真っ先に大多喜城に向かうのではなく、しばらく城下町の街並みを見て楽しんでから行ってみる事に決めた。
大多喜の街に入り込んでみるとコンビニがない事にすぐ気が付いた。そしてこの街には瓦葺きの屋根の家がとても多いのだった。街を散策していて偶然見つけた大多喜旅館と言う旅館などは、江戸時代から続いている旅館であるらしく国の登録有形文化財にも指定されているそうである。商い資料館と言う施設は江戸時代の大多喜町の商人の道具などを展示しているところだったが、外観がこれまた江戸時代から切り取ってきたような古めかしさで「あっ」とそれは驚いてしまうような遺構そのままなのである。コンクリートの舗装道路とあまりにもはまり合っていないので妙な不気味ささえ感じさせる程だった。江戸時代にタイムスリップしたとまでは言い切れないものの、大多喜町の古風な建築物の多さには大変楽しまさせてもらえたと思う。
舗装道路さえ視界外に追いやれば大正や昭和初期の街を歩いた気分にさせられたのだから。夷隅川の流れもまた、緩やかで昭和レトロな雰囲気がある川だった。県道231号線から川底を覗いてみたら、澄んだ水の中を黒い鯉達が泳ぎ回っていた。橋から飛んで川へ飛び降りたくなるほど川が綺麗でその水質が気持ちよさそうであったので実際にやってみようと橋の欄干をよじ登ろうとしたところ、見知らぬおじいさんにいきなり怒鳴られて、秀男はひどく狼狽しそこから走り去ったのだった。そんなこんなで大多喜の街を散策しきった後、秀男は大多喜城へ向かう事にした。ひとまず大多喜駅へ戻ろうと思い、そのまま大多喜駅へと足早に歩く。
大多喜駅に戻ったのは午後二時半頃であった。早く行って戻ってこないと日帰りで帰れなくなる。そう思った彼は早々と大多喜城に向けて足を急がせた。大多喜城は長い坂の上にあるのだが、その長い坂の右横に大多喜高校があった。何だがやけに坂の右横が騒がしかったので目を横に向けてみると、大多喜高校のグラウンドがあり、そこで運動会が開催されている。クラス対抗リレーが目下行われているのだろう、ピストルの銃声と女子高生達の賑やかな声援が聞こえてきた。と同時にあの馴染みの曲が、そうZARDの「負けないで」が、彼の耳に飛び込んできたのである
。
ちょうどサビの部分であっただろうか「負けないでもう少し、最後まで走り抜けて。どんなに離れてても、心はそばにいるわ。」の歌詞が透き通った声質で聞こえてくる。秀男は坂の途中で立ち止まった。「どんなに離れてても、心はそばにいるわ。」の言葉が彼をその場に留めさせたようだった。そうだ。ZARDの坂井さんは生きてるんだ、俺の心の中で。どんなに離れてても(私が天国に行ってしまっても)、心はそばにいるわ(坂井さんの心は俺の心のそばにいてくれるんだ。)と言ってくれているんだから。秀男は嬉しかった。坂井さんはこの世から全く消えてしまった訳ではなく、歌詞に残した通りファンの心に生きてる。そんな事に今気付けた秀男はただただ嬉しかった。と同時に無性に走りたくなった。その歌詞の通り最後まで走り抜けたいと思った。この時秀男は決意した。「陸上部に戻ろう」と。退部届けを取り消してもらうように顧問の先生に掛け合ってみようと、そう決めたのだった。「負けないで」が鳴り終わり、クラス対抗リレーも終わった後秀男は坂の上まで走り抜けた。春休みに陸上部を退部して以来の全力疾走だった。
城は三十メートル位の高さがあるものだった。城の中に入ろうと思って財布の中を確認したが、城自体に入る事が出来なかった。秀男は仕方なくベンチに座った。ベンチに座って気持ちを落ち着かせて陸上部への復帰について考えてみた。やはりどうしても陸上部に戻りたかった。額ににじむ汗が非常に生々しい。そして瑞々しかった。坂井さんが亡くなってから先刻の「負けないで」を聞くまでずっと感じていた虚脱感、虚無感というような一種の無力感みたいな心の空白が坂を全力疾走した事で振り切れたためだろうか、もうなくなっていた。大多喜の街を眺めた事も関係はしているのだろうけどもその無力感がなくなった一番の契機は大多喜高校のクラス対抗リレーを観戦して「負けないで」を聞けた事だっただろう。そしてまた走りたいと思えた。要はまた学校へ行こうと思えたのだ。
夕暮れの五時過ぎ辺りまで秀男は大多喜城のベンチにただぼーっと座っていた。ただ途中四時位から雨が降ってきたので、身体は雨に濡れた。全身雨でびちょびちょになって大多喜駅へ戻る羽目になってしまった。東村山に帰ったのは午後九時を過ぎた頃だった。久米川駅で降りて秀男は空堀川伝いを歩いて帰っていた時偶然、自転車に乗ってる室井君と出会った。声は向こうから掛けてきた。
「藤田、久しぶり。」
「よっ、室井。」
「どこか行ってたの?」
「うん。覚えてるかな?大多喜の事」
「もちろん覚えてるよ。何、大多喜に行っていたの?」
「そうだよ。今日行ってきたんだ。」
「何だよ。一緒に行くはずだっただろ?」
「まぁそうだけどよ。その不登校だしな、今俺。」
「不登校だろうが関係ねぇよ。連絡くれたら一緒に行っただろうに。」
「ありがとうな。」
「どうして学校来なくなっちゃったんだよ。」
「春休みに陸上部を辞めちゃってさ。それからなんだが学校が居心地悪くなってきちゃってさ。それで始業式の後から学校へ行けなくなっちゃったんだよな。」
「そんなんだろうと思ったけど。」
「だけどよ。俺明日から学校に行くから。またよろしくな。」
「なんだよ急に。部活はどうすんだよ?」
「復帰出来るかどうか顧問の先生に聞いてみる。復帰出来たらまた陸上部で走ろうと思ってるんだ。」
「それがいいよ。藤田は足が速いんだから辞めたらもったいねぇって。」
「ありがとうな。またな。明日学校で。」
「おう。またいつか大多喜に一緒に行こな。もう夏休みが近いから行けるとしたら高校受験が終わってからだろうけどよ。」
「そうだな。」
そうして室井君は西友に行くなどと言って久米川駅の方向へ去っていった。
翌日秀男は学校へ行った。その日の放課後顧問の先生に戻りたい理由を説明し簡単に辞めてしまった事を謝罪し復帰の願いを聞いてもらった。秀男の希望は許された。秀男は翌々日の放課後から陸上部の練習に参加し始めた。陸上部の仲間達は最初は冷たい対応だったが徐々にまた打ち解けていく事が出来た。そうそう。運動会にも秀男は参加する事が出来た。クラス対抗リレーではアンカーとしてバトンをもらいコースを走り抜けた。その時の応援曲はもちろん「負けないで」であった。
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