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俺には丁度いい

45話 考察

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敵を2匹殺した程度では、暴走は止まらなかった。
今では近くを飛んでいる虫でさえ敵と感じる。
野性的勘、彼をまっすぐ動かしているのはただそれだけだ。
動いている物は全て敵。
最初に羽虫を叩き潰してから数十秒。
衝撃で動いた壁を殴り、亡骸をさらに痛めつけたり。
血肉があるもの全てを破壊しようと必死だった。
そこから数十秒後、手の甲の機械が音を立てる。
ギシギシと、何かが擦れるような音だ。
壊れているとも取れるが、今動き出したともとれる。
ようやく歯止めをかけるため、ようやく動いたと考えるのが自然か。
膨らんだ力の化け物は一転して、痩せ型の青年に姿を変えた。
変形していた機械も形を取り戻し、いつも通りの色で落ち着く。
そして彼もまた、普通のひ弱な体に戻っていた。

「痛い...」

突然襲いかかる、骨の奥で弾ける痛み。
体を酷使した代償が、脳が通常運転を始めた今になって追いかけてきたのだ。
普通に考えて、痛くないはずはない。
木の板でさえ素手で殴れ当然痛い。
彼が殴っていたのはそれよりの強度を誇る鉄板だ。
パキパキと全身の関節が悲鳴をあげている。
その中でも彼は、手足を動かしようやく立った。
壁に見える拳の跡に、自分の手を重ねてみた。
手のひらよりも大きな拳の跡、奇妙で仕方がない。
そんな呑気な事をやっていると、ふとした途端に思いが巡る。
自分がここに立っている理由もやっと思い出した。
妹を助けないと、俺のせいで捕まっているのだから。
まずは考えなくてはいけないと、久々に青を目一杯上げた。
おおよそ今回の拉致事件の全貌を把握する事が出来た。
街単位でグルになっているほど、今回の事件は大きい。
つまりそれだけ沢山の犠牲者も入るということ。
俺だけを残した事から、選ばれているのは当たりだけ。
もしくは女性か幼い子供、どちらにせよ目的はなんだろうか。
これだけの規模の人攫いなら、目的も身代金云々ではないだろう。
臓器売買...か?だとしたら何故俺は選ばれないのか。
臓器までハズレだとかは言わせない。
妹だけを狙った理由...後は容姿等しか思い付かないが。
いや、まさか...俺をおびき寄せてるのか?
その可能性も無くはない。
ハズレという存在を消したいなら、確かに効果的だ。
分からないのは何故消したいのかだが、それは置いておこう。
とにかく前者だった場合は今すぐにでも動かなくては間に合わない。
そういった俺は、青を標準にして走り出した。
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