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3話 初夜3

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「まあいい、こっちに来い。」

ベッドに腰をかけたヴェルド様が、側へ行くよう促して来る。
ヴェルド様も風呂上りなのか、バスローブ姿がとても妖艶だ。

「っ…ぅ…。」

足が、震える。
体が言うことを聞かない。

行かなくては行けないのに。
家族を守るために、この体を捧げなくてはならないのに。

「どうした。早くしろ。」

「っ…も、しわけ、ございません…、ヴェルド様…。私、その、そういった行為は…経験が…。」

もしかしたら、これを伝えれば今夜は許して貰えるかもしれない。そうでなくても、手加減したり、優しくして貰えるかもしれない。

そんな考えがよぎり、恥を忍んで震える声を紡いだ。

しかし。

「処女か。それはそれは。嬉しい限りだな。」

「っ…!」

ニヤリと意地悪く口元を歪めるヴェルド様に怯む。

嬉しいとは、どういうこと?
私のこの力が欲しかっただけで、婚約したと言っていたのに。

いや、期待してはいけない。
この人は私を好いてはいない。

きっと、何も知らない処女が相手なら行為を進めやすいとでも思っているのだろう。
現に私は、どうしたらいいのか、何も分からない。

人並みの知識はある、とは思うけれど…。

そういうことは、男に任せればいいからと言われて育ってきた。

「なんだ、怯えて動けないのか。」

立ち尽くしている私を見兼ねたヴェルド様が、立ち上がって近づいてくる。

逃げ出したい気持ちを必死に堪えていると、すぐ目の前までヴェルド様が来てしまった。

「や、嫌…怖い…」

後退ろうとして、力の入らない足はふらつく。

転ぶ、と思ったが、咄嗟にヴェルド様の腕が伸びてきた。

「おっと、ククッ、そんなに怖いか。」

気づいたら私は、ヴェルド様の腕の中にすっぽりと収まっている。
支えてくれたことが意外で、思わずヴェルド様の顔を見上げた。

「あ、ありがとうございます…」

「ふ、俺に礼を言うか。」

「え…いえ、支えて下さったことが、少し意外で…。」

私のこと、病気や怪我を治すだけのただの道具としか思っていないはずなのに。
家族から無理矢理引き離して、殺されたくなければ婚約しろと脅してきているのに。

どうして…?
ただの気まぐれ?

何にせよ、男の人とここまで密着したのは始めてだ。
体温、息づかい、お風呂あがりだからかいい匂いまでする。
しかも、見た目と立場だけは一級品の男だ。
美しい風貌で、サディスティックに微笑みながら見下されている。

こんなの、緊張するというか、恥ずかしいというか、とにかく心臓がかつてないほど荒ぶっている。

「顔が赤いな。」

「だ、男性の方とここまで接近したことがないので…!」

からかうように言われて、つい必死に弁明してしまった。

「ククッ、悪くないな。これは、結構楽しめそうだ。」



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