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312話 脱走 14
しおりを挟む「で、これからどうするかってことだけど...坂北くん、脱出の方法は考えてあるの? 」
皆で机を囲んで座り、西村さんがそう切り出すと、作戦会議が始まった。
もちろん、何の勝算も無しに飛び出して来た訳ではなく、一応それなりに策を考えていた俺は、早速伝えようと口を開く。
「...西村さん達がチェックアウトする時に、荷物の中にでも紛れ込ませていただいて、一緒に外に連れ出してもらうしかないかと...。」
「に、荷物の中!? 」
うん、まぁ、当然の反応だよね...。
驚き固まっている三人の顔を見て、これがどれほど無茶なことなのかということを改めて思い知らされた。
だけど、多分これしかない。俺にはこれしか思いつかなかった。
「今のうちにこっそり逃げるとかじゃないの~? 」
ユキさんの質問に、俺はフルフルと首を左右に振った。
俺も最初はそう考えたけれど、西村さん達が一緒でもそれはできない。
「頑張れば建物からは出られるかもしれません。窓からとか...。でも正門や裏門はセキュリティーのため施錠されていて、フロントで頼まないと開けられないんです。だから、俺が坂北屋の敷地から出るためにはそれしか...。」
俺がそう説明すると、うーん...と唸って思考を巡らせてくれる三人。
「なるほどな。 けど別にチェックアウトの時じゃなくてもよくね? 今からスーツケースにでも詰めて連れ出してやろうよ。」
「いや、こんな時間にでっかい荷物持って外に出るなんて怪しすぎでしょ。それより鍵が開くまでフロントの近くに隠れてて、開いた瞬間ダッシュで正面突破の方がいいんじゃない? 」
「無理です。出られたとしても、警備の人や桂本さんに追ってこられたら俺には振り切れません。」
あまりにも無茶な俺の作戦に、他の方法は無いものかと次々に色んな案を出してくれる皆だけど、俺はそのどれにも頷くことはなかった。
それほどに、ここから逃げることは難しい。
敷地内から出ること、そして出てから逃げ切ること。これは俺一人じゃどうしたってできない。だから、西村さん達に頼ったのだ。
無理難題を押し付けてしまっている罪悪感で俯く。
「でもさ~、ここにいること桂本さんって人にもうバレてるかもしれないんでしょ? 坂北屋の大事なご子息が行方不明だっていうのに、やけに穏やかだし。だったら結局勝ち目なんて無いんじゃないの~?」
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