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309話 脱走 11
しおりを挟む「だーかーらー。その子の彼氏、すげー怖いんだよ。俺も坂北くんには興味あるし襲ったこともあるけど、今はリスクが大き過ぎるから手は出さない。」
「は? なんだお前、彼氏いんの? 生徒会長って彼氏のことかよ。」
二人を宥める西村さんが彼氏という単語を出した途端にがっくりと肩を落としたアキさん。西村さんの後ろをを覗き込まれ、俺は「ひっ...」と小さく悲鳴を上げた。
「でもさぁ、この子俺達の助けがなきゃここから出られないんでしょ? だったら協力する代わりってことでちょっと楽しませて貰おうよ~。 彼氏にはナイショでさ。」
「こら、ユキ。」
っ...!?
協力する代わりにって...。
俺にはもう頼れる人なんていない。
ここから出るためにはどうしたって西村さんと、同じ部屋に泊まっていたアキさんユキさんの協力が必要不可欠なのに。
西村さんの背後に隠すように庇われ三人の話を聞いていると、まるでなんでもない事のように、サラリと脅迫まがいのことまで言われ、身がすくんだ。
でも...そうだ...。
今の俺は、一人じゃ何もできない...。
「っ...そんな...さ、さっきは、優しくしてくれたのに...。それに俺、男なんですけど...。」
「可愛いに男も女も関係ないよ~。言うこと聞いてくれたら、また優しくしてあげるから。」
「っ...! 」
震える声で反論しても、全く聞く耳を持たず、にこやかに脅してくるユキさんが怖くて、俺はぎゅっと目を瞑る。
流石、西村さんの従弟なだけあって一癖も二癖もある双子に、翻弄されて目が回りそうだった。
桂本さんの元に戻ることは絶対できない。だけど、二人に従うことも絶対できない...。
「なぁ、協力して欲しいんだろ? 」
「だったらほら、こっちにおいで? 」
「っ...だけど...だけど俺...そんな、できな...」
どうしようっ...。
一人じゃ何もできない自分が悔しくて情けなくて。つくづく無力な自分が嫌になる。
どうして俺はいつも...。
二人に迫られ、じわりと涙が滲み、ネックレスを握りしめた。
そんな俺を見兼ねたらしい西村さんは、いつの間にか肩から滑り落ちていた毛布を拾って再び掛けてくれると、困ったように笑った。
「あーあー...ただでさえ怯えてた子を更に怯えさせてどうすんの。ごめんね、こいつら本気じゃないと思うから安心して。坂北くんの反応があまりにも可愛いから調子に乗ってるだけで、根は悪いやつらじゃないんだよ。」
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