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253話 終業式の日
しおりを挟むテストが終わってから、南原さんに怪しい人がいると聞いたこともあり、俺は、南原さんと一緒にいる時間が更に増えた毎日を過ごしていた。
「夏休みだーーー!!!! 」
「いえーーーい!!!! 」
そして、今学期最終日。終業式と一学期最後のホームルームが終わり、半日で帰れる今日は、まだ真っ昼間だがもう下校の時間だ。すると、クラスの皆はまるで小学生のようにおおはしゃぎ。
「いっぱい遊ぶぞお前らーーー!!!! 」
「おーーー!!!! 」
高橋が、元気よく皆に呼びかけ、皆もそれに元気よく答える。
沢山遊べる喜びもあるが、生徒会の支配から逃れられる一ヶ月とちょっとの期間は、きっと皆にとって、とてもありがたいものでもあるのだろう。
まぁ、俺と南原さんがくっついてから、南原さんは『お仕置き』を誰にもしていないだろうから、実質もう生徒会の支配なんてないのだけれど。学校の秩序を守るために、一応表向きには支配が続いている。
「みんなで海とか行こうぜ海! 泊まり掛けでさ! あと、夏祭りと、滑り台とかあるプールとか!」
「ナイスアイディア! さすが高橋! 」
和気あいあいと夏休みの予定を話す皆の中に、俺も入っていることが、とても嬉しい。
「もちろんお前も行くだろ坂北! 」
「っ...おう! 」
しかし、陽気に肩を組んできた高橋に、俺はぎこちない笑顔を返した。
というのも、できるなら、全部行きたいのだが...。
南原さんとも、過ごしたいから。
皆とばかり一緒にいるわけにもいかないんだよなぁ...なんて。
絶対口には出せないけど、こんな風に思ってしまうあたり、俺もあの変態鬼畜生徒会長に相当惚れ込んでしまっているようだ。
あれ、そういえば...。
「...高橋、東山さんはいいのか...? 」
「っ...! 」
こそっと耳元で呟くと、ギクリと高橋が体を強ばらせる。
この前の期末テスト。高橋はついに東山さんと上手くいったと聞いたのだが、夏休みは一緒に過ごさないのだろうか。
「ばっ、おまっ...! ま、まぁ、東山がどうしてもっていうなら...遊んでやらなくもねぇな...」
耳まで真っ赤になりながら答える高橋に、あぁ、ちゃんと東山さんとの予定も考えてるんだな、と俺は悟ってなんだか胸がほっこりした。
「けど、あんまりはしゃぎすぎて校則違反だけはしないようにしねぇとな。」
「そうだな。校則緩んだとはいえ気を付けねぇと。」
「けど最近生徒会大人しくね? 」
俺と高橋がコソコソと話しているうちに、ふと、宮野や今村の冷静な声が飛び交い、表情を引き締めたクラスメイト達。
事情を知る俺と高橋は、顔を見合わせて苦笑した。
「あー、それは言えてる。誰かがお仕置きされたっつう話、最近聞かねぇもんな。」
「いやいや、そうやって油断してる奴が二学期早々手酷いお仕置き食らうんだよ。」
「ははっ、確かに。じゃあ、罰せられない程度にはしゃぎますかー! 」
大して生徒会を怪しまないクラスメイト達にほっとしつつ、ワイワイと騒がしい教室の中で、俺も皆と同じように夏休みに心を踊らせていた。
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