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125話 アピール
しおりを挟む「み、南原さん! あの、せ、生徒会の仕事、何か手伝いましょうか? 」
「...は? 」
放課後。授業が終わった直後、俺は自ら南原さんに会いに来た。
南原さんの気を引きたくて、この日初めて自分から声をかける。
怪訝そうな顔をされたけど、これは想定内。
大丈夫。
「なんだ? なにも命令してないのにわざわざ来るなど、一体どういうつもりだ? 」
「っ...ただの、親切心です。」
「ふーん。まあいい。今は特に手伝って欲しいものはないよ。早く帰れ。」
「そう、ですか...。」
やっぱりダメか。
皮肉なものだ。
南原さんに恐怖の感情しかなかったときは、顔を会わせると嫌でも絡んできて、隙あらば卑猥なことをされていたのに、好きだと気づいた途端、こんな風に淡々とあしらわれるなんて。
この際、パシリでもなんでもいいから、かまって欲しい、なんて思う。
好きを自覚した今でも、南原さんに対する恐怖はまだまだある。あまり大胆なアピールはできないけれど、それでも少しずつ距離を縮めていけたらいいな、なんて。
ふと自分が初めの頃とは真逆の気持ちになっていることに気づいて、なんだか可笑しい。
南原さんも、俺に興味があった頃とは真逆の気持ちになってしまったのだろうか。
* * * * * * * * * *
それから俺は、積極的に何回も南原さんの元へ足を運んだ。
「南原さん、おはようございます! 」
「...何か用か? 」
「いえ、えっと...挨拶しに来ただけです...」
緊張するせいもあるのだろう。
上手く会話が続けられない。それでも、特に用事なんかなくても、南原さんの姿を見かけると必ず声をかけるようにした。
「南原さん! 」
「...なんだ?」
「あー...えっと...今日はいい天気...ですね...? 」
「......。」
何日かすると、南原さんも何かを感じ取ったのか、ついに俺の前に姿を現さなくなってしまった。廊下でも会わないし、南原さんの教室へ行っても滅多に顔を見ない。きっと授業が終わってすぐにどこかへ行ってしまうのだろう。
避けられてる、のかな...。
ある日のお昼休み。
屋上に向かおうとすると、珍しく廊下で南原さんを見かけた。
声、かけてみよう。
「南原さん! 良かったらお昼、一緒に...」
「はぁ...なんなんだお前は。最近よく話しかけてくるが、一体何を考えている? 呼んでもないのに、声をかけてくる必要はないよ。」
心底うっとおしそうにため息をつかれれば、必死に前向きに保っていた心が崩れそうになる。
「...はい...ごめんなさい......」
久しぶりに会えたのに、すぐに去って行ってしまう南原さんの背中に、俺は消え入りそうな声で謝罪を口にした。
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