性格悪い社長候補達に求婚されてます

2話 出会い2

「宮木優花さん、ね。いい名前だ。」

「あ、ありがとうございます…？」

「歳は？いくつだい？」

「16歳…ですけど…？」

一体何だというのだろう。
突然イケおじ様がグイグイ質問してくるので、なんとなく怪訝な目を向けてしまう。

「よし。宮木優花さん、私の所でバイトをしないかい？」

「え…？」

ば、バイト？
この人のところで？

…あ、怪しい…。

普通、初対面の人をこんなすぐに雇おうとしたりするだろうか。
いきなりそんなことを言われても、返答に困ってしまう。

新手の詐欺か何かなのでは…。

「私、実はこういうものでしてね。」

スッと優雅な動作で胸元から取り出されたのは名刺のようだ。
名刺を受け取るなんて経験、高校生の私にはあまり無く、恐る恐る両手で受け取る。

八雲健二。

このダンディなイケおじ様の名前はそういうらしい。
そして名前の隣には、経済に疎い私でも知ってるほどの大財閥、八雲グループと書いてある。

役職は…。

「だ…代表取締役会長、兼社長…グループ代表！？」

「とにかく、場所をうつして話そう。」

「えっ…えっ…！？」

とんでもない文字列が連なる名刺に目を白黒させていると、腕を引かれて強引に図書館の出口に向かわされる。

こ、この人、八雲グループの社長さんだったんだ…。

そんな凄い人と会話をして、なぜかバイトに誘われて腕を引かれているなんて。
この状況は一体なんだ。

「あ、あの、そ、そんな急に…ちょっと待ってくださ…」

懸命に声を掛けているのに、手を放そうとも足を止めようともせず、ズンズン進んでゆくイケおじ様…八雲健二さんに焦る。

ど、どうしよう…。

「私だ。車をまわせ、今すぐだ。場所はいつもの図書館。ああ、頼む。念の為護衛も一人。いや、有能そうな娘を見つけてね。この娘ならもしかしたら息子たちを…ん？あー、まぁ…多少強引でも…な。」

空いている片方の手でスマホを操作し、少し低い声で誰かにそう指示をする八雲さん。
優しかった微笑みが、少し黒い空気を纏ったような気がしてしまい、必死に気のせいだと自分に言い聞かせる。

なんだか少し怖くなってきた…。

だけど、八雲グループの社長さんに失礼なことなんてできない。
手を無理矢理振りほどいたり、声を荒げたりする勇気は私にはなかった。

図書館を出て少しすると、一際目立つ高級車が目の前に停車する。

「社長、お迎えに上がりました。」

「ああ。ありがとう。」

車から出てきたのは、30代くらいの長身な男性。
ピシリとスーツを着込み、所作や佇まいに品性が感じられる。

秘書さん…とかなのかな。

恭しく礼をする様を見て、私の隣に立つこの人はやはり本当に八雲グループの社長さんなのだと思い知らされる。

「それで、有能そうな娘、というのはそちらの方ですか。」

ちらりとこちらに視線を向けられ、私はビクリと怯んでしまった。