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第一章

第十八話 申し訳ない

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 異星人である阿形と吽形は、千年ほど前にこの地球へやってきた。

『えぇ、実に堪能させていただきました。水も合って、食べ物も美味しく、しばらくはここにいよう。そう思ってあの多幸島に住むことになったのですね』
『それこそ昔に色々とあってね、邪な輩よこしまなやからを退けたことがあってね、オレたちはあのような形で奉られることになったんだよ』

 あの阿形像と吽形像にはそういう経緯があった。

(あ、それであの像に?)
『えぇそうです。今も継続して、様々な災害、障害の度にこの島を守っているのです。あっという間の千年でした』

 事故などのトラブルで帰れなくなったわけではなく、ただ単にこの地が気に入って長居しているということらしい。

(あれ? ということは、もしかして? 魚が捕れなかったのって……)
『いえ、ワタシたちは一応、長寿種でしてまだまだ長生きするんです』
(よかった。心配したんですよ?)
『ごめんなさいね。あれには色々と理由があったんです』
『そうだな。色々とあったな……』

 二人の声が、何やらため息でもつきそうなものに聞こえていた。

(どんなことがあったんですか?)
『一応、やらかした若者は二度とこの八重寺島へ近寄る気にならないほど、懲らしめてはやったんだがね……』
『まだ、多幸島が立ち入り禁止になる前でした。観光で訪れた若者たちがいましてね、彼ら彼女らは多幸島に遊びにやってきたんです』
(はい)
『飲み食いをしてゴミを持ち帰らない。花火やたき火をする者。挙げ句の果てには、缶スプレーで落書きをしようとする者まで出る始末でした……』
『まぁ全ての輩には悪夢を見させて、自首、自供しないと悪夢を見続けると吹き込んでおいたからな。皆警察署に自ら出頭しおったぞ』

 よくある『うぇい系の迷惑若者』の起こした事件。

(それはまた……。なんていうか、すみませんでした)
『いや、一八君が悪いわけではない。同じ人間だからといって、そのような輩の代わりに謝るものではないぞ?』
(あ、はい。すみませんでした……)
『いえ、いいのです。あなたが優しい子だというのは、ワタシたちは知っていますから』
『そうだ。一八君にはこちらが謝罪しなければならないんだよ』
『あぁ、そうでしたね……』

 これまでと違った意味で、阿形と吽形の声のトーンが下がっている。

(え? どういうことですか?)
『魚を捕れないほどに疲弊していた状況の中、先日一八さんに助けていただいたことに繋がるのですが』
(いえいえ。あまりにも可愛いので、連れて帰りたかっただけなんですけど、はい)
『お供え物を鳥が持って行ったのだろう、そう解釈されていると知ったワタシたちは、遠慮をしないでいただくことにしたんですね。ですが、先ほどの悪さをした若者のせいでですね、多幸島が立ち入り禁止になったのです。そのあと、記念館が作られた後には、お供え物が置かれなくなってしまったんですね……』

 ある意味食糧危機に陥った。そういうことなのだろう。

(あー、そうだったんですね)
『オレたちはね、魚を獲って食べることもできた。けれどほら、これまできちんとしたものを食べていたのに、生臭いものを食べなければならないのはどうだろう?』
(あー、タコさんじゃなく、僕たちと同じ人ですもんね)
『そうなんです。かといってワタシたちは、火を使うわけにもいかない。なので仕方なく、魚や甲殻類を獲って暮らしていたんですね』
(はい)
『生きていくという意味では十分でした。もちろん、獲れないこともありました。それでもなんとかなってはいたんです。ですが、つい先日、悪しき輩を撃退した際にですね、生命活動ではないもうひとつの大事なものが枯渇していたことに気づいたんです』
(それって何ですか?)
『物語にあるように、魔力や生命力と呼ばれるもの。ワタシたちの星では魔力エ ネルギーと呼んでいました。ただそれは、この地球にはないのです』

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