海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~

はらくろ

文字の大きさ
上 下
7 / 56
第零章

第七話 プロローグ? そのご

しおりを挟む


「さて、さっさとやっつけちゃいますかね」

 網戸を確認して窓を開ける。すると、真夏とは思えないほど気持ちの良い風が入ってきた。さすがは十九階の高層マンションである。

(風は気持ちいいのに、空気を入れ替えても、散らかったものは直らない、っと)

 別にあれこれ置きっぱなしで食べ残しなどが腐っているとか、そういうのはない。だがたまに遭遇する、床やベッドの上へ無造作に転がっているインナーの類い。これを拾い集めるために、布手袋を填めたわけである。

(最初は恥ずかしかったけど、慣れたもんだよね。まったく……)

 いくら家族のものとはいえ、直接触られたなら千鶴でも複雑な気持ちになるだろう。そう思って一八は気を使っている。

 なんとか回収し、近隣のクリーニング店に依頼をして、できているものをもらってくる。その後、ウォークインクローゼットにある整理ダンスへ、アウターだろうとインナーであろうと気にせず収納している。これまで千鶴からクレームが来たことは、ないのも不思議であった。

(物持ちいいというか、捨てられないというか)

 洗濯かごに洗濯物を詰め込むと、床がやっとみえてきた。いつもこうなることが予想できるからか、この部屋でロボット型の掃除機の運用は諦めている。だからこうして、一八自ら掃除をすることになってしまうのだ。

(我々はこの床の色をけっして忘れないだろう、……だよねこれじゃ)

 ベッド専用のハンディ掃除機でざっと吸い取ると、新しいシーツを敷いていく。角を出したりはしない。その後、床用の優秀な掃除機で一気に掃除をする。最後に、スチームクリーナーを軽くかけて除菌も完了。

「こんなに綺麗にしてるんだけどね。どうして五日ともたないんだか……」

 テーブルの上をざっと拭き掃除して、書籍などは棚に戻していく。机の上にあるものも、全て元の場所へ戻す。上を綺麗に拭き掃除をすると、掃除は完了。

(四日もすればまた元通りーっと)

 ゴミを市指定の袋に入れて、玄関に置いておく。この部屋にキッチンがなくて心底良かったと思っていた。

 洗濯物を洗濯かごからずた袋に入れ直し、二つ抱えてゴミ袋も持つ。部屋の鍵をかけて、エレベーターで一階へ。外へ出て左折、建物の並びにあって四軒離れた、比較的低い建物の一階にそれはある。

「八重寺です。いつもお世話になっています」
「あら? 一八ちゃんじゃないの? もう戻っていたのね?」

 カウンター越しとはいえ、一八がかるく見上げてしまう相手との身長差。かるく百八十センチ以上はありそうな長髪の女性、実は仕草も柔らかな『おねぇ』である。胸元も豊かで、くびれもしっかり見える。声はハスキーヴォイスだけど、どこから見ても女性。

 優しくて面倒見も良くて、頼れるクリーニング店の店主さん。名を長谷川太一。実に男らしい名前ではあるのだが、胸元に『たいちゃん』と書いてあるネームプレートがそれを緩く感じさせてしまう。

「はい。さっき戻りました。これとこれ、お願いできますか?」
「千鶴ちゃんのね?」
「はい。僕のは自分で洗ってますから。アイロンがけもできますからね」
「千鶴ちゃんのも、一八ちゃんが洗ってしまえばいいのではなくて?」
「いえその、とんでもなく高価なインナーのはずなので、神経質になりながら洗濯するほど、マゾっ気はありませんから」
「いいわぁ。その女子力と判断力の高さ。うちのお店に欲しいくらいだわ」

 うちのお店というのは、彼女かれが経営している夜のお店。この建物自体、彼の持ち物で最上階にラウンジがあるのだ。以前から一八は、将来そこの支配人にならないかと打診を受けているのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

貴族の屋敷に勤めるメイドに自由はありません

ファンタジー
貴族屋敷に務めるメイドに自由はない。代わりに与えられたのは体の動きを制限する拘束具。常にどこかを拘束されているメイドの日常。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...