14 / 34
第一章 わたしもね、弟が欲しかったの
第4話 贈り物を求めて。
しおりを挟む
東海岸駅からモノレールに乗って、那覇空港駅方面へ。途中にある、久茂地駅で降りて徒歩二分。そこにあるのが、沖縄で唯一残る老舗百貨店のりうぼう、別名パレット久茂地。地下一階、地上九階で、地下街のない沖縄には珍しい地下を持つ建物。同じ場所なら、自転車でゆったりと、……と勇次郎はそんな予定をたてていた。
つい昨日までは、そんな風に勇次郎ひとり、そこに行くつもりだったが、結局違うルートで行くことになった。そうなった主な要因は、部屋から直通でかけた、麻乃へのホットラインからだった。
元々『何かお困りの際は、どんな些細なことでもご相談くださいね』と言われていた。かなり長い間、杏奈と過ごしてきている幼なじみでもあると聞く。絶対に彼女へ秘密にしてくれると約束をした上で、『お姉ちゃんへのプレゼントは何がいいか教えて欲しい』と相談したのだ。
すると麻乃は、『明日も杏奈お嬢様は、理事長代行として執務のような用事がありとのこと。朝食後すぐに、お出かけになるご予定とうかがっております。ですので、私が一緒にお買い物へ同行させていただきまして、その場でアドバイスをして差し上げることもできますが、いかがいたしましょうか?』と言ってくれたではないか?
気心の知れた文庫や鈴子へのプレゼントとは勝手が違う。勇次郎には渡りに船だと思えたからこそ、その提案に飛びついてしまった。
翌日、朝食を終えると、杏奈は勇次郎に『いってらっしゃい、お姉ちゃん』という言葉と一緒にお見送りされる。そのような、素敵イベントが嬉しかったのか、杏奈は終始ニコニコした笑顔だった。付き添いは大浜父、本名を大浜宗右衛門。彼が運転をするリムジンで発っていった。
勇次郎は、宗右衛門の名前を知って納得したことがあった。麻乃という、珍しくも古風な名前を娘につけたの、はなるほどとそういうつながりがあったのかと思った。ちなみに、麻乃の母の名は、夜という文字をふたつ並べて夜夜というのだそうだ。とても珍しい名前だが、確かにこちらも古風だと思っただろう。
春先の沖縄とはいえ、最高気温が二十度を超えそうな感じ、汗ばむほどの陽気になりそうだった。本来なら、自転車で出かける予定だったので、『背中にアニメのキャラクターがプリントされたTシャツを着て、下は踝までのインナー、その上にハーフパンツでいいかな?』と思っていた勇次郎だった。
自転車に乗る際は、車の運転手に視認されやすいように『なるべく目立つ格好』をする必要がある。背中に書かれたイラストを目にして、ドライバーが生暖かく笑うなり、萎えるなりするくらいが、認識されていて丁度良いと思っている。だが今日は、麻乃から『なるべく目立たない格好でご準備ください』と言われた。
仕方なく、なるべく地味なチョイス。ライトグレーの綿パンツに、無地でダークブラウンの七分袖シャツの裾を外に出す感じで着る。そこにシマノのサイクリングキャップを深めに被った。これなら目立つことはないだろう、勇次郎はそう思った。
あらかじめ、麻乃から『私も準備がございますので、お屋敷の裏手でお待ちください』と言われていた。一階の厨房横から通用口があり、おそらく麻乃が言っていた裏手とは、ここのことだろうと勇次郎は思った。
待つこと数分、するとそこに訪れたのは、ブルーのスバルレヴォーグだった。
(うっそ、シマノのニュートラルサポートカーと同じ車種だ……)
ニュートラルサポートカー、自転車のプロレースなどでは本来、各チームごとにサポートカーが準備している。チーム側が想定している以外の、突然起きるだろうトラブルになるべく対応し、レース全体をサポートするために、出場している選手の誰に対しても公平にケアをするため、用意された車のことである。
自転車オタクでもある勇次郎は、思わず声に出してしまいそうになったのをぐっと堪えた。それは、かなりマニアックな知識だと思ってしまったからだ。
後部座席のスモークがかったウィンドウが降りる。
「お待たせいたしました」
顔を出したのは、麻乃だった。けれど、ヘッドドレスをつけてない。そう思っていたら、ドアが開いた。
「はい、乗ってくださいな」
「あ、ありがとうございます」
右奥へ詰めた麻乃の横に座る。ドアを閉めて、前を向くと、見知らぬ女性が運転席にいた。年の頃二十代半ばくらいだろうか? 凜々しい表情の、ベリーショートの女性。
「初めまして。東比嘉警備保障、警備部の山城景子と申します。本日の運転手を任されました。一日、よろしくお願いいたします」
「あ、はい。勇次郎です。よろしくお願いいたします」
「ご丁寧に、ありがとうございます。では、シートベルトをお締めください」
「は、はい」
「では、出発いたします」
ゆっくりと、車が出て行く。なるほど、買い物だからか、杏奈のようなリムジンで行くわけにはいかない。それにあのような車では、余計に目立ってしまう。だから、このような感じにしたのだろう。
「勇次郎様、今日のお召し物は、私がお願いしたように少々地味でございますが、よく似合っておいでですね」
「あ、はい。ありがとう――あ」
麻乃に褒められて、勇次郎が横を向いたときに、先ほどの疑問が晴れた瞬間だった。いつもはスタンダードなメイド服を着用している彼女。今日は実に年相応、いや、大人っぽい姿とも言えるだろう。
スリムな踝丈のデニムのパンツに、上は少々ゆったりした、薄手のニット。色味もそれなりに地味な濃いめのグレー。
「麻乃さんも、いつもと違って似合ってると思いますよ」
「ありがとうございます。この姿、杏奈お嬢様には見せたことないかもしれません。おそらくは、勇次郎様が初めてかと思います」
「そ、そうなんですね」
ルームミラーに映る、山城の目が微笑んでいるかのようだった。
モノレール近くの幹線道路を走っていたかと思えば、北側へ進路が変わっていた。この界隈は、勇次郎自信も自転車でよく走ることがあるから、道は熟知している。
「麻乃さん。あの、僕、りうぼうへ行こうかなっって――」
「あのですね、勇次郎様」
「はい」
「久茂地りうぼうは、百貨店だけあって確かに良いものが揃っています」
「うん」
「ですが、ターゲットとしている年齢層が比較的高く設定されており、杏奈お嬢様には少しずれているというか……」
「あ、うん。僕、その辺よくわからないです。りうぼうなら百貨店だし、悩んだときは間違いないかなって思ってただけで」
「はい。二十代くらいからなら、良いかと思います。ただ、中高生には少々ですね」
「うん。そうだったんだ。それなら、どこに向かってるんです?」
おおよそ方角的にどのような施設があるかはわかる。ただ、女性向けのアイテムがどこに売ってるか、勇次郎には予想ができるわけがない。一応、勇次郎も男なのだから。
「おそらく『そう』だと思っておりました。ときに勇次郎様」
「はい?」
「ご予算は、いかほどまで考えておられますか?」
「僕、アルバイトはある場所でだけで、それなりにもらえていたんです」
勇次郎がどこでアルバイトをしっていたかは、麻乃ならばある程度予想はしていただろう。
「えっとね。これくらい、です」
勇次郎は、麻乃に向けて右手の人差し指を伸ばして見せる。
「なるほど。一万円まで――」
「いえ、桁、間違っています」
「まさか、千円でございますか?」
「そうじゃなく、これだけです」
勇次郎は、両手の指を広げてみせた。
「そ、そこまでとは思いませんでした」
「はい。鈴子お姉ちゃんは、時給これだけくれるもので……」
勇次郎は先ほどのように、指数本を立ててみせる。
「なるほどなるほど、……『あの方』はそれだけ稼いでいらっしゃるわけですね。もしや、勇次郎様の自転車は、そうして買われたのでしょうか?」
「んっと、完成車は母さんに買ってもらいました。後付けの交換パーツはアルバイトですね」
国道三百三十号線を突っ切り、国道五十八号線を通り抜け、西海岸側へ出てきた。そのまま右折し、北へ向かうと開けた場所に、やたらと大きな建物が見えてくる。
「あ、そっか。パルコシティね」
つい昨日までは、そんな風に勇次郎ひとり、そこに行くつもりだったが、結局違うルートで行くことになった。そうなった主な要因は、部屋から直通でかけた、麻乃へのホットラインからだった。
元々『何かお困りの際は、どんな些細なことでもご相談くださいね』と言われていた。かなり長い間、杏奈と過ごしてきている幼なじみでもあると聞く。絶対に彼女へ秘密にしてくれると約束をした上で、『お姉ちゃんへのプレゼントは何がいいか教えて欲しい』と相談したのだ。
すると麻乃は、『明日も杏奈お嬢様は、理事長代行として執務のような用事がありとのこと。朝食後すぐに、お出かけになるご予定とうかがっております。ですので、私が一緒にお買い物へ同行させていただきまして、その場でアドバイスをして差し上げることもできますが、いかがいたしましょうか?』と言ってくれたではないか?
気心の知れた文庫や鈴子へのプレゼントとは勝手が違う。勇次郎には渡りに船だと思えたからこそ、その提案に飛びついてしまった。
翌日、朝食を終えると、杏奈は勇次郎に『いってらっしゃい、お姉ちゃん』という言葉と一緒にお見送りされる。そのような、素敵イベントが嬉しかったのか、杏奈は終始ニコニコした笑顔だった。付き添いは大浜父、本名を大浜宗右衛門。彼が運転をするリムジンで発っていった。
勇次郎は、宗右衛門の名前を知って納得したことがあった。麻乃という、珍しくも古風な名前を娘につけたの、はなるほどとそういうつながりがあったのかと思った。ちなみに、麻乃の母の名は、夜という文字をふたつ並べて夜夜というのだそうだ。とても珍しい名前だが、確かにこちらも古風だと思っただろう。
春先の沖縄とはいえ、最高気温が二十度を超えそうな感じ、汗ばむほどの陽気になりそうだった。本来なら、自転車で出かける予定だったので、『背中にアニメのキャラクターがプリントされたTシャツを着て、下は踝までのインナー、その上にハーフパンツでいいかな?』と思っていた勇次郎だった。
自転車に乗る際は、車の運転手に視認されやすいように『なるべく目立つ格好』をする必要がある。背中に書かれたイラストを目にして、ドライバーが生暖かく笑うなり、萎えるなりするくらいが、認識されていて丁度良いと思っている。だが今日は、麻乃から『なるべく目立たない格好でご準備ください』と言われた。
仕方なく、なるべく地味なチョイス。ライトグレーの綿パンツに、無地でダークブラウンの七分袖シャツの裾を外に出す感じで着る。そこにシマノのサイクリングキャップを深めに被った。これなら目立つことはないだろう、勇次郎はそう思った。
あらかじめ、麻乃から『私も準備がございますので、お屋敷の裏手でお待ちください』と言われていた。一階の厨房横から通用口があり、おそらく麻乃が言っていた裏手とは、ここのことだろうと勇次郎は思った。
待つこと数分、するとそこに訪れたのは、ブルーのスバルレヴォーグだった。
(うっそ、シマノのニュートラルサポートカーと同じ車種だ……)
ニュートラルサポートカー、自転車のプロレースなどでは本来、各チームごとにサポートカーが準備している。チーム側が想定している以外の、突然起きるだろうトラブルになるべく対応し、レース全体をサポートするために、出場している選手の誰に対しても公平にケアをするため、用意された車のことである。
自転車オタクでもある勇次郎は、思わず声に出してしまいそうになったのをぐっと堪えた。それは、かなりマニアックな知識だと思ってしまったからだ。
後部座席のスモークがかったウィンドウが降りる。
「お待たせいたしました」
顔を出したのは、麻乃だった。けれど、ヘッドドレスをつけてない。そう思っていたら、ドアが開いた。
「はい、乗ってくださいな」
「あ、ありがとうございます」
右奥へ詰めた麻乃の横に座る。ドアを閉めて、前を向くと、見知らぬ女性が運転席にいた。年の頃二十代半ばくらいだろうか? 凜々しい表情の、ベリーショートの女性。
「初めまして。東比嘉警備保障、警備部の山城景子と申します。本日の運転手を任されました。一日、よろしくお願いいたします」
「あ、はい。勇次郎です。よろしくお願いいたします」
「ご丁寧に、ありがとうございます。では、シートベルトをお締めください」
「は、はい」
「では、出発いたします」
ゆっくりと、車が出て行く。なるほど、買い物だからか、杏奈のようなリムジンで行くわけにはいかない。それにあのような車では、余計に目立ってしまう。だから、このような感じにしたのだろう。
「勇次郎様、今日のお召し物は、私がお願いしたように少々地味でございますが、よく似合っておいでですね」
「あ、はい。ありがとう――あ」
麻乃に褒められて、勇次郎が横を向いたときに、先ほどの疑問が晴れた瞬間だった。いつもはスタンダードなメイド服を着用している彼女。今日は実に年相応、いや、大人っぽい姿とも言えるだろう。
スリムな踝丈のデニムのパンツに、上は少々ゆったりした、薄手のニット。色味もそれなりに地味な濃いめのグレー。
「麻乃さんも、いつもと違って似合ってると思いますよ」
「ありがとうございます。この姿、杏奈お嬢様には見せたことないかもしれません。おそらくは、勇次郎様が初めてかと思います」
「そ、そうなんですね」
ルームミラーに映る、山城の目が微笑んでいるかのようだった。
モノレール近くの幹線道路を走っていたかと思えば、北側へ進路が変わっていた。この界隈は、勇次郎自信も自転車でよく走ることがあるから、道は熟知している。
「麻乃さん。あの、僕、りうぼうへ行こうかなっって――」
「あのですね、勇次郎様」
「はい」
「久茂地りうぼうは、百貨店だけあって確かに良いものが揃っています」
「うん」
「ですが、ターゲットとしている年齢層が比較的高く設定されており、杏奈お嬢様には少しずれているというか……」
「あ、うん。僕、その辺よくわからないです。りうぼうなら百貨店だし、悩んだときは間違いないかなって思ってただけで」
「はい。二十代くらいからなら、良いかと思います。ただ、中高生には少々ですね」
「うん。そうだったんだ。それなら、どこに向かってるんです?」
おおよそ方角的にどのような施設があるかはわかる。ただ、女性向けのアイテムがどこに売ってるか、勇次郎には予想ができるわけがない。一応、勇次郎も男なのだから。
「おそらく『そう』だと思っておりました。ときに勇次郎様」
「はい?」
「ご予算は、いかほどまで考えておられますか?」
「僕、アルバイトはある場所でだけで、それなりにもらえていたんです」
勇次郎がどこでアルバイトをしっていたかは、麻乃ならばある程度予想はしていただろう。
「えっとね。これくらい、です」
勇次郎は、麻乃に向けて右手の人差し指を伸ばして見せる。
「なるほど。一万円まで――」
「いえ、桁、間違っています」
「まさか、千円でございますか?」
「そうじゃなく、これだけです」
勇次郎は、両手の指を広げてみせた。
「そ、そこまでとは思いませんでした」
「はい。鈴子お姉ちゃんは、時給これだけくれるもので……」
勇次郎は先ほどのように、指数本を立ててみせる。
「なるほどなるほど、……『あの方』はそれだけ稼いでいらっしゃるわけですね。もしや、勇次郎様の自転車は、そうして買われたのでしょうか?」
「んっと、完成車は母さんに買ってもらいました。後付けの交換パーツはアルバイトですね」
国道三百三十号線を突っ切り、国道五十八号線を通り抜け、西海岸側へ出てきた。そのまま右折し、北へ向かうと開けた場所に、やたらと大きな建物が見えてくる。
「あ、そっか。パルコシティね」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる