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第9話 そういうことかもしれない。

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 メサージャさんは何度も何度も、俺にお礼を言いながら帰って行った。俺はベッドの上に寝転がり、『個人情報表示』と呟いた。目の前に表示されたのは見慣れた画面。そこに表示されている回復属性のレベルを見て納得したんだよ。

「まじですかー」

 空間属性:1 回復属性:20

 やはりこれらの数値は10進数ではなかった。この場合、20にじゅうではなく『20にぜろ』という読みになるというわけだ。ということは、俺の回復属性はレベルが32。おそらく、一度に出力できる『魔力量』、こちらで言うところの『魔素量』が違うのかもしれない。

 俺だけ16進数表記になっていたのは何か理由があるんだと思う。どこかにいるかもしれない神様か女神様が、俺のUMPCノートパソコンがどうしても欲しくなって、その代わりにOSとMMOのデータを融合させたのかもしれない。

 うろ覚えだけど、俺の魔法のレベルや能力値が、どう考えてもMMOのキャラクターそのままなんだよ。MMOでは10進数表記だったけど、こうなったのって融合したときにミスったか、バグが出ちゃったかなんだろう。

 うん、そう思うようにしよう。そうじゃないと説明がつかないわ。考えるの、やめたっと。

 王女さんや他の神官さんたちの、回復属性のレベルどれくらいなんだろう? 魔素毒を回復しきれないのは、もしかしたら『そういうこと』かもしれないんだ。

 某MMOでは、現在のレベルから見て、二つ下の呪文を行使してもスキルレベルぎりぎりが上がるはず。本来なら、適正レベルの呪文、ここでいうところの『ハイ・リカバー』が上がりやすいはずなんだけどね。

 色々試しながら、早く回復属性のレベルを早く上げよう。そうすることによって、俺にもできることが増えるかもしれないんだ。

 一眠りして、かなり減らした魔素も元に戻ってることを確認する。部屋を出て、宿を出ようとしたとき、受付で知った顔の青年に呼び止められた。

「受付のセテアスです。昨晩はお楽しみでしたね?」

 にやっと笑って、突っ込み入れてくるとは思わなかったよ。

「昨日の晩は誰もいないって」
「わかってますよ。先ほどいらしていたネリーザさんという女性から、銅貨10枚預かっています」

 なんだ、そういうことなのね。

「ありがとう。それは食事代の精算にあててくれたら助かるよ」
「わかりました。外出ですよね? 鍵、お預かりします」
「うん。ありがとう。ところでさ」
「はい、なんでしょう?」
「『ギルド』ってどうやって行くのかな?」
「はい、この先を――」

 この青年の名前、セテアスって言うんだね。あそこまでフレンドリーに接してくれるのは驚いたよ。これは、名前は覚えておかないとだわ。値段なりのしっかりした宿だし、昨日紹介してくれた酒場も良かった。俺はセテアスさんに、丁寧に教えてもらった道順で、ギルドとやらへ向かうことにした。

 王城の回りの堀は、この先の湖に繋がってるんだってさ。俺はその堀を右手に見ながら、湖に向いて歩いているんだ。そりゃそうだよね。水が抜けなきゃ腐るからなぁ。川や湖、海が近いだろうとは思ってたけど、それでも、潮の匂いはしなかったからね。

 このまままっすぐ行けば湖、この角を左に折れる。歩くこと5分ほど、なるほどね、某有名マンションみたいに、赤煉瓦のモザイク柄に見える外壁。これはわかりやすいわ。

 俺は一応ゲーマーだったし、『それ系』の漫画もラノベもかなりの数を読むくらいに大好物だった。アニメや漫画で見たイメージとは多少違ってはいても、ぱっと見でも施設内のどれが何なのか理解できる自信はあるんだよね。

 ホールを抜けて、左の壁には依頼が手書きされた紙が貼ってある。クエストのボードみたいなものなんだろうけど、まるでデパートなんかの、ご意見書みたいなコーナーそっくりな感じだわ。

 昨日の酒場で、メサージャさんが着ていた制服に少しばかり似たデザインだけど、小豆色でシックな感じの制服を着た女性が二人、並んでカウンターの内側にいるんだ。もしかしたら、制服の出所は同じ服飾店なのかもしれないね。

「いらっしゃいませ。冒険者ギルド、ダイオラーデン支部へようこそ。私は、受付のジュリエーヌと申します。隣にいるのは同じ受付のリリウラージェ」

 『ファミレスかよっ!』ってツッコミ入れたくなるような、見事な接客ロールプレイだね。やっぱり冒険者ギルドで、ここは支部なんだとさ。どこかの国に本部があるってことだろうね。

 隣にいるリリウラージェさんは、笑顔で会釈だけしてくれる。手短に自分の自己紹介だけでなく、それとなく相棒のこともしっかりアピールするのは好感が持てるよね。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

 もちろん、冒険者ギルドというからには、それなりのパターンは予想できる。だからこそ、こちらから質問してみるのも手かもしれないんだ。

「えと、俺、この国に来てまだ二日目なんです。空間属性のスキルを持っているので、輸送補助みたいな仕事があればと思っています。そうでなければどんな仕事があるのか。良い仕事があれば、ご紹介いただけたらと思いまして。お邪魔した感じです。どうでしょうかね?」

 要件だけ伝えて、登録するかどうかは仕事があるならそうするし、なければとりあえず登録だけというのはなんか違う感じがする。

「そ、そうですね。……リリウラージェちゃん、受付お願いできるかしら?」

 凄いよ、このリリウラージェさん。唖然としたような感じの表情を一瞬見せたけど、自力で持ち直しちゃった。うんうん。プロだねー。

「えぇ。いいですよ」

 ジュリエーヌさんは、一度受付の裏手に回って、ホールに出てきてくれる。

「どうぞこちらへ」

 手のひらを上に、促す方向を指す感じ。まるでファミレスだよね。指し示してくれた方向を見ると、さっきの、掲示板みたいな場所に案内してくれるみたいだ。

「はい」

 軽く4~50枚は貼られているかな? 事細かに書かれてるから、全部見るのはかなーり時間がかかりそうだ。

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