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第二十四話 朝から料理とか、俺こっちに何しに来たんだ?
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ティナもこの酒の飲み方を知っているのか、ちびりちびりと飲んでいる。
後で聞いた話、アリエスさんは何か祝い事がなければこの酒を開けることはないのだという話だった。
それだけ高価で希少性の高いものだったんだろうな。
味も香りも物凄い。
ただアルコール度数が高いことを覗けば、俺もかなり好きな部類の酒だ。
こっちの物価がわからないから何とも言えないが、ここまでビンテージでなくともきっとこの酒は旨いのかもしれない。
そういや、関税とかどうなってんだろう?
俺、気にしないであっちの土産持ってきちゃったけど。
あとでティナに聞いてみるか。
なんとか酒豪義理母、アリエスさんの『私のお酒が飲めないんですか?』攻撃を耐えきった。
終始義理父クレイさんの『申し訳ない』という表情をこっちこそ申し訳なく思ったわ。
ティナはあの状態のアリエスさんを苦手としているのか、大人しく飲んでたな。
驚いたことに、あれだけ強い酒をかなりの量飲まされてた割りには、俺は悪酔いもしてない。
ドワーフの身体、すげぇ。
前の俺だったら潰れてただろうな。
ルフエルジャーノンって名前の酒。
あれは本当に旨かった。
こっちの名産品らしいから後で買いに行くかな。
「なぁティナ」
「ん?」
ティナはいい加減眠くなってきたのか、俺の隣でごろんと寝っ転がってる。
「俺、受け入れてもらえたのかな?」
「うん。大丈夫だと思うよ。母さんがあんなに楽しそうに飲んでたの久しぶりに見るし、父さんも嬉しそうだったよ」
「そっか。ならいいんだけどな」
「……うん。駄目、もうねむい……」
「あぁ、お疲れさん。また明日な」
「うん、おやすみ」
ティナは俺の腕を枕代わりにして目を閉じた。
流石に疲れたな。
建物の中は照明が落とされてる。
外も魔力で作られた疑似太陽の明かりも薄くなってるみたいだ。
こっちの時計を見てないから何とも言えないが、時差はあるんだろうな。
あ、風呂、入ってないじゃん。
朝になったらでいいか……。
▼
「武士、たーけーしー」
何やら俺の腹の上でティナが跳ねて騒いでるような気がする。
……じゃない。
目を開けるとティナの顔が目の前にあった。
「あ、やっと起きた。ほら、顔洗って。母さんと父さんが待ってるって」
「へ?」
ティナに起されて、そのまま洗面所に直行。
あのさ、俺、風呂入りたいんだけど。
って言っても、何やら急いでるっぽいんだよな。
仕方ねぇ。
用事が終わったらゆっくり入らせてもらうか。
顔を洗って、ティナに手を引っ張られて着いた先は。
……へ?
何で昨日来た、キッチンなんだ?
「なぁティナ」
「ん?」
「なんで俺はキッチンに連れてこられたんだ?」
「あのね、武士」
「ん?」
「ごめんね」
「へ?」
「武士が料理できるって、バラしちゃった」
それから簡単に、俺がここに連れてこられた理由を聞いたんだけど。
俺が起きる前に、アリエスさんとティナが先に朝食をとったらしいんだ。
そこでティナは『美味しくない』って。
ついでに俺の作る料理が美味しいって自慢したらしい。
したらな、『是非食べてみたい。いや、食べさせて』という話になったらしいんだわ。
「あのなぁ。いくら俺が婿さんだからって、朝からそれはないじゃないか?」
「母さんも父さんもお腹すかせて待ってるんだけど……。駄目?」
ティナ、それはずるいぞ。
小首傾げて見上げるとか。
駄目だなんて言えるわけないだろうが。
「……はいはい。いつものあれでいいんだな?」
「うん。あまーいフレンチトーストでしょ?」
「あぁ。あれが一番簡単だからな」
仕方なく俺は食材を探し始めた。
お、昨日食ったバケットそっくりのパンがあるな。
「ティナ。卵、……六つもらってきてくれ。そこに隠れてる侍女さんがいるだろ?」
「うん。ジュリエルおいで」
「……何故バレたんですか?」
「あー。うん。昨日も見てたでしょう? それに昨日呼びに来てくれたでしょ? 覚えてたんだよ。ジュリエルさんって言うんだね。俺は武士。よろしく」
「はい。存じております、武士様。卵六つでございますね?」
「うん。あと、ミルクとバター。それに砂糖とはちみつあるかな?」
「はちみつ、ですか?」
「うん。昆虫が集める蜜みたいなの。なければ、そうだな。作るか」
俺は鍋とフライパンを準備する。
「ティナ、そのパン。んー、そうだな。一センチ半くらいの厚さで、斜めに切ってくれるか?」
「うんっ」
ティナは慣れた手つきでパンを切り始める。
「えっ? ティナ様がお料理を……?」
「あぁ、下ごしらえくらいは手伝ってくれるんだ」
「あたいも食べてばかりじゃないんだよ」
ジュリエルと呼ばれた侍女。
おそらくは侍女長なんだろうな。
彼女は驚いていた。
そりゃー、姫君が料理するなんて普通思わないわな。
ティナがパンを切ってる間、俺はミルクと砂糖で浸け汁を作っておく。
「ティナ、切れたらこれに浸けといて」
「うん」
ティナは結構物覚えがいい。
『漬けといて』の意味をしっかり理解してくれている。
パンがしっかりと浸け汁を吸うように、ちょいちょいつつきながら沈めてたりするんだ。
ジュリエルさんは俺が作ってる手順をしっかり見てるっぽい。
フライパンを火にかけ、俺はバターを多めに入れてフライパンを回しながら全体にいきわたらせる。
「そう言いやティナ」
「ん?」
「アリエスさんも、クレイさんも。甘いの大丈夫だよな?」
「大丈夫だよ。二人とも甘いの大好きだから」
「そっか。ならいいや」
バターが溶けたら一度火を落とす。
シルバーストーンやテフロン加工のフライパンがあればいいんだけど。
こっちのフライパンは鉄製みたいだからな。
焦げちゃったら困る。
その間に、鍋に砂糖を多めに、水は砂糖の半分くらい入れる。
火をかけてじっと見る。
これは混ぜたらまずいらしいからな。
原理は知らんけど。
沸騰すると共に、ちょっとずつきつね色になっていく。
鍋を回しながら全体を混ぜる。
全体があめ色になったら少し水を入れて、またくるくる鍋を回しながら混ぜていく。
濡らした布巾の上に置いて、粗熱をとっておく。
「武士、もういいんじゃない? これ」
「おう。いい感じだな」
俺はフライパンを火にかける。
弱火にしてパンを並べていき、じっくりと焼いていく。
焼き色がつくまで焼けたらひっくり返す。
「ジュリエルさん、適当にサラダ作ってくれるかな?」
「は、はいっ」
サラダは外の店で食べたけど、あまりあっちと変わらない。
卵黄と酢(あってよかったわ)、オリーブオイルっぽい油。
さっき卵黄は二つ分とりわけておいた。
ボールでかき混ぜる。
オイルを垂らしながら混ぜる。
混ぜる。
ひたすら混ぜる。
いい感じになってきたら塩と酢で味を調えて、また混ぜる。
「武士、何作ってるの?」
「手製のマヨネーズだよ」
「おー。自分で作れるんだね」
「あぁ。味はそれなりだけどな」
俺はティナにスプーンでちょっとマヨネーズを食べてもらう。
「どうだ?」
「うん。おいしっ」
「なら大丈夫だな」
ジュリエルさんがサラダを作ってくれた。
そのボールに適当にかけて混ぜ合わせる。
粉チーズがあったから、軽くかけて終わり。
フレンチトーストも綺麗に焼けたっぽい。
大皿にほいほいと盛って、出来上がり。
「ジュリエルさん。コーヒーある?」
「はい」
「それをさ、ミルクと半々で入れてくれるかな? あと取り皿もお願いね」
「畏まりました」
ティナにカラメルソースの鍋を持ってもらい、俺はフレンチトーストとサラダを持つ。
「じゃ、いこっか」
「うんっ」
後で聞いた話、アリエスさんは何か祝い事がなければこの酒を開けることはないのだという話だった。
それだけ高価で希少性の高いものだったんだろうな。
味も香りも物凄い。
ただアルコール度数が高いことを覗けば、俺もかなり好きな部類の酒だ。
こっちの物価がわからないから何とも言えないが、ここまでビンテージでなくともきっとこの酒は旨いのかもしれない。
そういや、関税とかどうなってんだろう?
俺、気にしないであっちの土産持ってきちゃったけど。
あとでティナに聞いてみるか。
なんとか酒豪義理母、アリエスさんの『私のお酒が飲めないんですか?』攻撃を耐えきった。
終始義理父クレイさんの『申し訳ない』という表情をこっちこそ申し訳なく思ったわ。
ティナはあの状態のアリエスさんを苦手としているのか、大人しく飲んでたな。
驚いたことに、あれだけ強い酒をかなりの量飲まされてた割りには、俺は悪酔いもしてない。
ドワーフの身体、すげぇ。
前の俺だったら潰れてただろうな。
ルフエルジャーノンって名前の酒。
あれは本当に旨かった。
こっちの名産品らしいから後で買いに行くかな。
「なぁティナ」
「ん?」
ティナはいい加減眠くなってきたのか、俺の隣でごろんと寝っ転がってる。
「俺、受け入れてもらえたのかな?」
「うん。大丈夫だと思うよ。母さんがあんなに楽しそうに飲んでたの久しぶりに見るし、父さんも嬉しそうだったよ」
「そっか。ならいいんだけどな」
「……うん。駄目、もうねむい……」
「あぁ、お疲れさん。また明日な」
「うん、おやすみ」
ティナは俺の腕を枕代わりにして目を閉じた。
流石に疲れたな。
建物の中は照明が落とされてる。
外も魔力で作られた疑似太陽の明かりも薄くなってるみたいだ。
こっちの時計を見てないから何とも言えないが、時差はあるんだろうな。
あ、風呂、入ってないじゃん。
朝になったらでいいか……。
▼
「武士、たーけーしー」
何やら俺の腹の上でティナが跳ねて騒いでるような気がする。
……じゃない。
目を開けるとティナの顔が目の前にあった。
「あ、やっと起きた。ほら、顔洗って。母さんと父さんが待ってるって」
「へ?」
ティナに起されて、そのまま洗面所に直行。
あのさ、俺、風呂入りたいんだけど。
って言っても、何やら急いでるっぽいんだよな。
仕方ねぇ。
用事が終わったらゆっくり入らせてもらうか。
顔を洗って、ティナに手を引っ張られて着いた先は。
……へ?
何で昨日来た、キッチンなんだ?
「なぁティナ」
「ん?」
「なんで俺はキッチンに連れてこられたんだ?」
「あのね、武士」
「ん?」
「ごめんね」
「へ?」
「武士が料理できるって、バラしちゃった」
それから簡単に、俺がここに連れてこられた理由を聞いたんだけど。
俺が起きる前に、アリエスさんとティナが先に朝食をとったらしいんだ。
そこでティナは『美味しくない』って。
ついでに俺の作る料理が美味しいって自慢したらしい。
したらな、『是非食べてみたい。いや、食べさせて』という話になったらしいんだわ。
「あのなぁ。いくら俺が婿さんだからって、朝からそれはないじゃないか?」
「母さんも父さんもお腹すかせて待ってるんだけど……。駄目?」
ティナ、それはずるいぞ。
小首傾げて見上げるとか。
駄目だなんて言えるわけないだろうが。
「……はいはい。いつものあれでいいんだな?」
「うん。あまーいフレンチトーストでしょ?」
「あぁ。あれが一番簡単だからな」
仕方なく俺は食材を探し始めた。
お、昨日食ったバケットそっくりのパンがあるな。
「ティナ。卵、……六つもらってきてくれ。そこに隠れてる侍女さんがいるだろ?」
「うん。ジュリエルおいで」
「……何故バレたんですか?」
「あー。うん。昨日も見てたでしょう? それに昨日呼びに来てくれたでしょ? 覚えてたんだよ。ジュリエルさんって言うんだね。俺は武士。よろしく」
「はい。存じております、武士様。卵六つでございますね?」
「うん。あと、ミルクとバター。それに砂糖とはちみつあるかな?」
「はちみつ、ですか?」
「うん。昆虫が集める蜜みたいなの。なければ、そうだな。作るか」
俺は鍋とフライパンを準備する。
「ティナ、そのパン。んー、そうだな。一センチ半くらいの厚さで、斜めに切ってくれるか?」
「うんっ」
ティナは慣れた手つきでパンを切り始める。
「えっ? ティナ様がお料理を……?」
「あぁ、下ごしらえくらいは手伝ってくれるんだ」
「あたいも食べてばかりじゃないんだよ」
ジュリエルと呼ばれた侍女。
おそらくは侍女長なんだろうな。
彼女は驚いていた。
そりゃー、姫君が料理するなんて普通思わないわな。
ティナがパンを切ってる間、俺はミルクと砂糖で浸け汁を作っておく。
「ティナ、切れたらこれに浸けといて」
「うん」
ティナは結構物覚えがいい。
『漬けといて』の意味をしっかり理解してくれている。
パンがしっかりと浸け汁を吸うように、ちょいちょいつつきながら沈めてたりするんだ。
ジュリエルさんは俺が作ってる手順をしっかり見てるっぽい。
フライパンを火にかけ、俺はバターを多めに入れてフライパンを回しながら全体にいきわたらせる。
「そう言いやティナ」
「ん?」
「アリエスさんも、クレイさんも。甘いの大丈夫だよな?」
「大丈夫だよ。二人とも甘いの大好きだから」
「そっか。ならいいや」
バターが溶けたら一度火を落とす。
シルバーストーンやテフロン加工のフライパンがあればいいんだけど。
こっちのフライパンは鉄製みたいだからな。
焦げちゃったら困る。
その間に、鍋に砂糖を多めに、水は砂糖の半分くらい入れる。
火をかけてじっと見る。
これは混ぜたらまずいらしいからな。
原理は知らんけど。
沸騰すると共に、ちょっとずつきつね色になっていく。
鍋を回しながら全体を混ぜる。
全体があめ色になったら少し水を入れて、またくるくる鍋を回しながら混ぜていく。
濡らした布巾の上に置いて、粗熱をとっておく。
「武士、もういいんじゃない? これ」
「おう。いい感じだな」
俺はフライパンを火にかける。
弱火にしてパンを並べていき、じっくりと焼いていく。
焼き色がつくまで焼けたらひっくり返す。
「ジュリエルさん、適当にサラダ作ってくれるかな?」
「は、はいっ」
サラダは外の店で食べたけど、あまりあっちと変わらない。
卵黄と酢(あってよかったわ)、オリーブオイルっぽい油。
さっき卵黄は二つ分とりわけておいた。
ボールでかき混ぜる。
オイルを垂らしながら混ぜる。
混ぜる。
ひたすら混ぜる。
いい感じになってきたら塩と酢で味を調えて、また混ぜる。
「武士、何作ってるの?」
「手製のマヨネーズだよ」
「おー。自分で作れるんだね」
「あぁ。味はそれなりだけどな」
俺はティナにスプーンでちょっとマヨネーズを食べてもらう。
「どうだ?」
「うん。おいしっ」
「なら大丈夫だな」
ジュリエルさんがサラダを作ってくれた。
そのボールに適当にかけて混ぜ合わせる。
粉チーズがあったから、軽くかけて終わり。
フレンチトーストも綺麗に焼けたっぽい。
大皿にほいほいと盛って、出来上がり。
「ジュリエルさん。コーヒーある?」
「はい」
「それをさ、ミルクと半々で入れてくれるかな? あと取り皿もお願いね」
「畏まりました」
ティナにカラメルソースの鍋を持ってもらい、俺はフレンチトーストとサラダを持つ。
「じゃ、いこっか」
「うんっ」
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