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第十三話 ティナ先生の『初めての魔法』。

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 俺とティナはホテルに戻った。
 今日は色々なことを教えられて、俺は正直頭がパニックになっていたんだ。
 父さんが正義を行ったために殺された。
 母さんも巻き添えになった。
 志狼さんの父さんも。
 頭がぐちゃっとしてきた。
 いくら二十年以上前の話だからって。
 そう簡単に消化できる話じゃなかった。
 かといって、俺が何かできたわけじゃない。
「武士」
「うん」
「ほらこっちおいで。あたいの膝で泣けばいいよ」
「ごめんな……」
 俺はティナの優しさに甘えた。
 ティナの太ももに顔を埋めて、大声で泣いた。

 泣きつかれて眠っちゃったんだな。
 俺の顔は相変わらずティナの引き締まった太腿に埋まってた。
 後頭部は何やら柔らかいものに包まれてるし。
「武士。起きた? もう大丈夫?」
「あぁ、すっげー気持ちいいわ。このすべすべと頭のふにっとした感触もな」
「えっち……」
 無理やり横を向いたらティナが今何をしてるかわかっちまった。
 暇だったんだろうな。
 俺の髪を撫でながら、スーツケースに入ってたノート使って『魔法少女ラジカルくれは』見てたんだな。
 俺のノートにはBlu-rayROMがついてる。
 再生できたんだっけな。
 そこにはヒロインの高森くれはが魔法を使うシーンが映ってた。
「なぁティナ」
「んー?」
「俺に『王家の力』をくれたって言ったよな?」
「うん」
「ってことは、俺も魔法使えるのか?」
「どうかな? 多分使えるかもしれないけど」
「それってさどうやって使うんだ? 呪文とかあるのか?」
 ティナは俺をおっぱいの重圧から解放してくれた。
 ちょっと後頭部に喪失感を覚えてしまった。

 ティナと向き合って魔法を教えてもらうことになった。
「あのね、んっと。起きて欲しい現象を思い浮かべるんだよ」
 駄目だこいつ。
 天才肌の教え下手だわ……。
 ところで何でライジングハートさんを持ってるんだ?
「えっとね、こんな感じ?」
 ピンク色の魔方陣のようなものが中空に描かれていく。
 魔方陣の構築が終わると、同じ色の光がライジングハートさんに収束していく。
 それはまるで、アニメの映像そっくりの魔法の再現だった。
「『これがあたいの全力全開っ! メテオ、ブレイカーっ!』」
 『魔法少女ラジカルくれは』のワンシーン。
 ティナの『メテオ、ブレイカーっ!』の声と同時に俺に向かって。
「ちょっ。おまっ」
 どわぁあああああっ!
 ピンク色の光が襲ってくる。
 俺は手を交差させて顔を覆ってしまった。
 ……あれ?
 何も起きてない。
「どう? かっこいいでしょ?」
「あ? どういうこっちゃ?」
「途中まで再現してみたんだ」
「ビビっただろうがっ!」
 俺はティナの頭をごつっと叩いてしまった。
「ひどいよ、武士……」
「そうならそうと言ってくれないと、俺の寿命が縮むじゃないか」
「だって……。やって見せた方がわかりやすいかなーって」
 てへっとライジングハートさんを胸に抱いて舌を出して笑いやがった。
 可愛いからって……、許すと思うなよ?
 許すけどさ。

 なるほどな。
 イメージ力で具現化させるのか。
 そういうのなら、俺も得意だ。
 なにせ、長年読んだ漫画とラノベの知識がある。
 マスクドライダー一号の本郷毅は改造人間になったけど。
 俺はドワーフになったんだ。
 同じ意味で人間じゃない。
 だから人間じゃできなかったことだってできるはずなんだ。
 そういう意味では父さんの成せなかった正義だって……。
 いや、無理なことは考えないようにしよう。
 立花さんにだって、魔法を極力使わせないようにって言われたんだっけ。
 俺はテーブルにあったグラスに水を注いだ。
 そのグラスの中にある水を睨む。
 こうぐにゅっと持ち上げるように……。
 お?
「おぉ!」
「凄い凄い、武士。あたい、そういうのできないんだ。凄いよ」
「うん。できた。やったよティナ。……あ」
 グラスの中の水が空中にふよふよと浮いている。
 と思ったら集中が途切れてグラスに落ちてしまった。
 急に魔力を使ったからだろうか。
 瞼が重くなってきた。
「やべ。眠くなってきた……」
「あたいも初めて使ったときはそうだったよ。寝たらいいよ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ、武士」

 ▼

「うわっ。すっご……」
「……ん?」
 何やら下半身がこそばゆい。
「あ、武士。おはよ」
「お、おう……。あのさ、ティナさん」
「ん?」
「何やってんの?」
「おっきくなってて辛そうだなーって」
 ティナはにまーっと笑いながら、俺のを手で擦っていた。
 もちろんパンツの上からだよっ!
「あのなぁ……。ちょっとトイレ」
 俺は便座に座って用を足そうとするんだが、跳ね返るように邪魔をしてうまくできやしない。
 ……ふぅ。
 しかしこの朝立ち、半端ねぇな。
 この下半身からどばーってオーラが出たりしたら笑えるだけどな。
 ……って出るなよっ!
 俺の息子が有名な漫画の『スーパーベジタブル人』みたいな金色のオーラをまとって青筋立てた状態になってるし。
 俺はつい、そんなイメージを頭に思い描いてしまったようだ。
 イメージの具現化っておっかねぇ……。
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