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僕らについて

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無事、ミスドは受かった。
面接の志望理由は笑可の性被害の情報以外をありのまま伝えた。
『音楽をプロで目指す彼女のサポート役として生きてくのに色々お金が必要で稼ぎたいんです』と独特なものだったが。

バイトを始めて3日目。
初日までにほぼ全てのドーナツの名前を覚え、レジで打つ時に困らないようにした。
袋詰めは早くできないけど、今のところ女性の同僚とかに嫌われては無い。

共学の高校に通ってる人間としては女性ばかりの空間には慣れてる。
店内の有線を聴きながら、いつかは笑可の歌も流れる時が来るのかなと思うと感慨深くなる。

季節は4月を迎えていた。
ボクはクラス替えを経験して、それでも笑可とは同じクラスのままでいれた。
彼女が再び高校に行ける時は来るのか。

学業と音楽活動を両立させるのは可能なんだろうか。
笑可の両親は彼女が望む道を陰ながら応援しているようだ。
両親からすると、一人娘が生きる道を見つけただけでも良かったのだろう。

時折笑可からはLINEが来る。 
添付されていた動画には「裏声でハーモニー出せる?」とゆりあさんの声が聞こえた。
竹松さんはそこそこスパルタらしく、彼女に礼儀作法を教えたりしている。
あとは細かい音楽理論やギターのスケール(音階)、どこか民族音楽っぽく聞こえるスケールなどをみっちり教えてきているらしい。

『竹松さんのおかげで中華っぽいメロディ作れるようになったよ』
そのメッセージの後にスマホで直撮りした黒鍵を多用しそうなメロディ。

あとはデモテープをDTMで作る方法とかもしっかり教わってるらしい。
各楽器のパン(方位)の振り方など細かく教わってる。

アシアトを再録した音源を竹松さんの家の機材で録って、彼女が元メジャーのアーティストだったプライドで編曲を施したサウンドは水絵さん以上のクオリティで息を呑んだ。

ラストサビにだけ、エモいストリングスが挿入されたりアウトロで幻想的なシンセやピアノが追加されて壮大感が増していた。

次のページでは笑可がゆりあさんに吐露された音楽活動の話を記そうと思う。
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