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台湾から日本に帰国して、笑可はしばらく会えなくなるね。ベースの腕最低限は磨いといてねと言い残して愛媛 に住む『竹松ゆりあ』さんの家へ1日休んでからギターと多くのノートを持って旅立った。

台湾の次は愛媛か。
忙しいな。
ベースの教本を見ながら練習する。
ベース代はなんとか母親に出してもらった。
そろそろバイトもしてみなければ。
なぜならこれから笑可が武者修行から帰ってきた後にライブに同行する軍資金が底を尽きかけているから。
うちの親は厳しく、笑可と一緒に音楽活動をすることは許してもらえたがそれにかかるお金などはしっかり働いて稼ぐことと言われたのだった。

あまり社会に馴染めないボクに向いてる仕事なんてあるんだろうか。
ドーナツ好きだしミスタードーナツで働いてみるか。
ベースの練習に飽きてきたところで、緊張する心を抑えて最寄りのミスドの店に電話をかける。

平日の15時。
店長はいたようで面接のスケジュールがスムーズに決まる。
本来なら他の面接も入れるべきなのかもしれないが、なんか受かる謎の自信がありあえてミスド一本にしておいた。

あさってが面接日だ。
バイトしまくって笑可を支えるベーシストになるべく、1、2回でもオンラインレッスンは受けたいしやるしかない。

夢に全力で向かう彼女の音楽に惚れ込んでいるボクは何かバイトでイヤなことがあったとしても、彼女の負った心の傷に比べれば屁でもない。
そう思いながら一心にベースを練習した。

まだ手元を見ないと弾けないけど、しかたない。
息抜きにベース 面白いでYouTubeで何となく検索かける。
すると、HJフリークスという女装ベーシストのチャンネルがヒットした。

ホルモンの恋のメガラバのベースカバー動画を見てみる。
そこにはメイド服?  のHJさんがめちゃくちゃカッコよくテクニカルにベースを演奏していく動画が展開されていた。
なんじゃこりゃ!

『ベース弾くなら女装していく必要あるのかな』
そんなワケわからない感想を抱いた。
うまぴょい伝説のベースカバーもあまりに良い。
同時にさすがにこの人には追いつけなすぎるとも思わされた。
何百時間練習したのだろうか、的確にプロすぎるベースラインを奏でていく。
ベーシストの世界一を決める大会があれば、恐らく優勝してしまうのではないか。

 夜に駆けるのスラップの効いたベースカバーもカッコイイ。
1度、笑可の女性限定ライブ辺りで本気の女装にトライしてみようか。
ちょうどクラスにコスプレイヤーの女の子がいた気がする。

何かを変えたいなら目まぐるしいくらい色々なことに挑戦するくらいがちょうどいい。
笑可が夢中で色々と曲を作ったり、素人でも勉強できる程度の様々なコード進行を試すような音楽的生き方に知覚過敏敏になって、ボクにできることは何か考え続ける。

ついでにテレビに出たくて簡単な3コードに値するベースを弾く。
G C Dのルートの音なら弾ける。
タガメ食いてえって歌を即興でやってみる。

三脚でスマホを固定して録画開始。
タガメ食いてえ
背負(しょ)いきれない
悲しみがあるから

牛丼よりも
それよりも
マックよりも

タガメ食いてえ
タガメ食いてえ 
タガメ食いてえ

愛媛のテレビ局に『音楽でメジャーを目指し始めている知人女性が武者修行で音楽の先輩に学ぶため
愛媛にいます。
その先輩が愛媛在住なので、良ければ流してください』

どうせこんな動画無視されるだろう。
でも起用されたすぎて
虫食べた後はポンジュース飲みてえのフレーズを付け加え、ひたすら歌い続けて録画した。
どうなる?


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