27 / 37
銀ラプロテピチ
しおりを挟む
「ミックスダウンは明日だったよね。その前に歌いたい曲できた」
「マジかよ」
「超飛行少年(スーパーフライングボウイ)の銀色ラプソディとクノシンジさんのポータブルポップミュージックかな」
「2曲もできるのか?」
「山沢さんにディストーションギターとボーカルの2つのMP3を送って、玖蘭さんにポータブル~のクリーンギターのバッキングを送る」
「2人にだいたいのミックスと玖蘭さんに関してはアレンジも丸投げするのか」
「そう。頼れる人がいるなら甘えてもいいって思ったの」
2人は急なこちらの提案に笑可ちゃんのためならと引き受けてくれた。
その日の夕方に幻想的なピアノでサビのメロディを単音で弾いたイントロと打ち込みのリズムトラックが付け加えられた銀色ラプソディ(カバー)と、玖蘭さんが急遽知り合いのミュージシャンを呼び寄せて作られた原曲にかなり近いアレンジのポータブルポップミュージックの音源は次の日の昼に届いた。
サビで玖蘭さんが美しいコーラスを入れたり、笑可のボーカルを殺さない程度にキレイなハモリを入れている。
これが笑可にとってインディーズ最後の仕事になるだろう。
1ヶ月後、笑可の2ndシングルの『猫の歩く時/ポータブルポップミュージック』が店頭に並んだ。
1.猫の歩く時
2.ポータブルポップミュージック
3.悲しみスープ
4.銀色ラプソディ
この曲順で、今度は銀色のカバーを聞きたさに試聴機におっさんが群がる独特な景色を2人で確認した。
笑可がもしも音楽活動につまずいた時は、再始動したバンドか再び音楽を奏で始めたクノさんみたいな人をイメージして何年も休んでもいいから、ゆっくり進むことが大切なのかも。
「やっぱり店員さんに聞いてきて」
「そう言うと思った」
そして店員に尋ねると120枚売れたと答えが返ってきた。
今の時刻は19:45。
つまり前回よりも遅く来店したのと確実に彼女のファンが増えている証拠だと見て取れた。
「笑可はメジャーデビューできたら何がしたい?」
「性被害のことさえなければ台湾とか香港とか行きたかった。豹馬が着いてくるなら行こうか迷ってる」
「悪くないかもね。行っちゃう?」
「行こうよ」
こうして電撃的に台湾行きが決まった。
ももすももすさんがMV撮影で行ってたのに触発された感じだ。
「それにしてもCDの裏ジャケに水絵さんの飼い猫のすみれちゃん載せてもらったけど、本当にかわいかった。水絵さんの指をなめるすみれちゃん見て、はわわぁってなった」
「あまりに初日にしてはCDが売れるからインディーズなのに面陳されてたよね。
慌てて絵の上手い店員さんが描いたと思しき猫のイラストのポップまで付いてたし」
「感動してスマホで撮っちゃったよ。emikaの名前もレタリングなノリで書かれてたし」
この頃になると、性被害を克服しようと活動している彼女を応援したいと思ったレコード店の店員(やはり女性が多め)がクオリティの高いポップでどこまで宣伝できるか競い合っていた。
笑可は喜んでそれらのツイートにお礼の言葉を自らリプしていた。
だが彼女が凌辱される様を書いたふざけた小説やイラストを書くゲス野郎もいて、通報により消しているものの笑可が見ていない訳もなく。
彼女に直接問えないものの、本当は傷ついてるんじゃないかと思ったりした。
「何か悩みは無いの?」
「ん? 全然。本当にプロになれるのか? って不安くらいはあるけど」
どうやらそんなに気にしてないみたいだ。
リアルタイム検索で彼女の歌についての反応を調べると「選曲渋い」「カバーで久しぶりにクノシンジ気になって調べたら、いつのまにかクノくん復活しててうれしい」
それとラップなノリで猫を可愛がる笑可をイメージした文章と動画を上げてる女性ラッパーがいた。
「あれ。mieさんだ」
「mieってのは何者なんだ?」
「えー!? 知らないの? JKの心をつかみまくってる現役ラッパーだよ」
笑可は曲作りの間にTiktokやYouTubeを見てるらしく、ボクなんかより世間の流行を熟知してるみたいだ。
「槇原ドリルいいよね。槇原敬之さんとさだまさしさんは書く歌詞深くて好きだわ」
「そうだな(槇原ドリルって何だ??)」
「豹馬、槇原ドリル知らないんでしょ。もう恋なんてしないを独特なリミックスしてTiktokで流行りまくってるミームだよ」
「なるほど」
「しかも公式が認めてる」
「槇原さんは懐深いな」
「7分以上の曲いつか作りたいな。ゆりあさんに師事する時、長尺の歌を聞き飽きさせずに作る方法真っ先に聞こうかな」
「なんでそんな長い歌作りたいんだよ」
「だってXJAPANのForever LoveとかヒプマイのNext Stageとか他のヒプマイの歌もそうだけど、長くても聴いてられる歌って作業用BGMに役立つから」
そんな長い歌をレコード会社のスタッフに提案しても大丈夫なのか? とまだどこにも所属が決まってないにも関わらず心配してしまった。
「歌詞覚えられるのかよ」
「いざとなったら、町田康先生ばりに歌詞カード持ちながら歌うのもいいかなって。
普通の歌ならさすがに歌詞見なくても歌えるけど長い歌は自信ないや」
笑可が猫好きだから知ったけど、そういえば保護犬2匹、保護猫はもはや多すぎて何匹かわからないくらい飼ってる芥川賞作家にいたな。そんな人。
「いつか気い狂いて、カバーしたい」
「町田康の歌なら心のユニット辺りが無難だろ」
確かに町田先生のミュージシャン時代のように売れないのは困るし……と言葉に詰まった笑可。
まだ3月だけど寒いね…と言う笑可。
ボクはというと、帰ってから両親から海外に行く許可を取らなければならない。
とはいえ、笑可との関係を知ってるから許可もお金も出してもらえるだろう。
いつかバイトするようになったら、そのお金は返せばいい。
「台湾楽しみだな」
「そうね。果物とかスイーツおいしそう」
自分の音楽の関わる場面だと不思議とPTSDに悩まされる状態から少しだけ解放される笑可。
これが音楽療法ってやつか。
彼女がやり遂げたと思うまで、ベーシスト兼マネージャーとして添い遂げたい。
「マジかよ」
「超飛行少年(スーパーフライングボウイ)の銀色ラプソディとクノシンジさんのポータブルポップミュージックかな」
「2曲もできるのか?」
「山沢さんにディストーションギターとボーカルの2つのMP3を送って、玖蘭さんにポータブル~のクリーンギターのバッキングを送る」
「2人にだいたいのミックスと玖蘭さんに関してはアレンジも丸投げするのか」
「そう。頼れる人がいるなら甘えてもいいって思ったの」
2人は急なこちらの提案に笑可ちゃんのためならと引き受けてくれた。
その日の夕方に幻想的なピアノでサビのメロディを単音で弾いたイントロと打ち込みのリズムトラックが付け加えられた銀色ラプソディ(カバー)と、玖蘭さんが急遽知り合いのミュージシャンを呼び寄せて作られた原曲にかなり近いアレンジのポータブルポップミュージックの音源は次の日の昼に届いた。
サビで玖蘭さんが美しいコーラスを入れたり、笑可のボーカルを殺さない程度にキレイなハモリを入れている。
これが笑可にとってインディーズ最後の仕事になるだろう。
1ヶ月後、笑可の2ndシングルの『猫の歩く時/ポータブルポップミュージック』が店頭に並んだ。
1.猫の歩く時
2.ポータブルポップミュージック
3.悲しみスープ
4.銀色ラプソディ
この曲順で、今度は銀色のカバーを聞きたさに試聴機におっさんが群がる独特な景色を2人で確認した。
笑可がもしも音楽活動につまずいた時は、再始動したバンドか再び音楽を奏で始めたクノさんみたいな人をイメージして何年も休んでもいいから、ゆっくり進むことが大切なのかも。
「やっぱり店員さんに聞いてきて」
「そう言うと思った」
そして店員に尋ねると120枚売れたと答えが返ってきた。
今の時刻は19:45。
つまり前回よりも遅く来店したのと確実に彼女のファンが増えている証拠だと見て取れた。
「笑可はメジャーデビューできたら何がしたい?」
「性被害のことさえなければ台湾とか香港とか行きたかった。豹馬が着いてくるなら行こうか迷ってる」
「悪くないかもね。行っちゃう?」
「行こうよ」
こうして電撃的に台湾行きが決まった。
ももすももすさんがMV撮影で行ってたのに触発された感じだ。
「それにしてもCDの裏ジャケに水絵さんの飼い猫のすみれちゃん載せてもらったけど、本当にかわいかった。水絵さんの指をなめるすみれちゃん見て、はわわぁってなった」
「あまりに初日にしてはCDが売れるからインディーズなのに面陳されてたよね。
慌てて絵の上手い店員さんが描いたと思しき猫のイラストのポップまで付いてたし」
「感動してスマホで撮っちゃったよ。emikaの名前もレタリングなノリで書かれてたし」
この頃になると、性被害を克服しようと活動している彼女を応援したいと思ったレコード店の店員(やはり女性が多め)がクオリティの高いポップでどこまで宣伝できるか競い合っていた。
笑可は喜んでそれらのツイートにお礼の言葉を自らリプしていた。
だが彼女が凌辱される様を書いたふざけた小説やイラストを書くゲス野郎もいて、通報により消しているものの笑可が見ていない訳もなく。
彼女に直接問えないものの、本当は傷ついてるんじゃないかと思ったりした。
「何か悩みは無いの?」
「ん? 全然。本当にプロになれるのか? って不安くらいはあるけど」
どうやらそんなに気にしてないみたいだ。
リアルタイム検索で彼女の歌についての反応を調べると「選曲渋い」「カバーで久しぶりにクノシンジ気になって調べたら、いつのまにかクノくん復活しててうれしい」
それとラップなノリで猫を可愛がる笑可をイメージした文章と動画を上げてる女性ラッパーがいた。
「あれ。mieさんだ」
「mieってのは何者なんだ?」
「えー!? 知らないの? JKの心をつかみまくってる現役ラッパーだよ」
笑可は曲作りの間にTiktokやYouTubeを見てるらしく、ボクなんかより世間の流行を熟知してるみたいだ。
「槇原ドリルいいよね。槇原敬之さんとさだまさしさんは書く歌詞深くて好きだわ」
「そうだな(槇原ドリルって何だ??)」
「豹馬、槇原ドリル知らないんでしょ。もう恋なんてしないを独特なリミックスしてTiktokで流行りまくってるミームだよ」
「なるほど」
「しかも公式が認めてる」
「槇原さんは懐深いな」
「7分以上の曲いつか作りたいな。ゆりあさんに師事する時、長尺の歌を聞き飽きさせずに作る方法真っ先に聞こうかな」
「なんでそんな長い歌作りたいんだよ」
「だってXJAPANのForever LoveとかヒプマイのNext Stageとか他のヒプマイの歌もそうだけど、長くても聴いてられる歌って作業用BGMに役立つから」
そんな長い歌をレコード会社のスタッフに提案しても大丈夫なのか? とまだどこにも所属が決まってないにも関わらず心配してしまった。
「歌詞覚えられるのかよ」
「いざとなったら、町田康先生ばりに歌詞カード持ちながら歌うのもいいかなって。
普通の歌ならさすがに歌詞見なくても歌えるけど長い歌は自信ないや」
笑可が猫好きだから知ったけど、そういえば保護犬2匹、保護猫はもはや多すぎて何匹かわからないくらい飼ってる芥川賞作家にいたな。そんな人。
「いつか気い狂いて、カバーしたい」
「町田康の歌なら心のユニット辺りが無難だろ」
確かに町田先生のミュージシャン時代のように売れないのは困るし……と言葉に詰まった笑可。
まだ3月だけど寒いね…と言う笑可。
ボクはというと、帰ってから両親から海外に行く許可を取らなければならない。
とはいえ、笑可との関係を知ってるから許可もお金も出してもらえるだろう。
いつかバイトするようになったら、そのお金は返せばいい。
「台湾楽しみだな」
「そうね。果物とかスイーツおいしそう」
自分の音楽の関わる場面だと不思議とPTSDに悩まされる状態から少しだけ解放される笑可。
これが音楽療法ってやつか。
彼女がやり遂げたと思うまで、ベーシスト兼マネージャーとして添い遂げたい。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。


あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる