24 / 37
ブランコに乗って
しおりを挟む
ビー玉が机を転がるようなスピードで月日は過ぎていく。
バレンタインは特に何も無かった。
いや、笑可が作りかけの新曲を聞かせてくれたんだったか。
あと1週間で停学も解ける。
1ヶ月を通してLUNKHEADの小高さんやフジファブリックの志村を模範にして、音楽を作っていきたいという笑可の姿勢を知れてよかった。
何度も何十回も病み、時にはエチケット袋に嘔吐することもあった。
そんな時に完全に笑可の心の支えになれているのか不安になったりもした。
でも、彼女は毎回別れ際に「いつもありがとう」の挨拶を忘れないのだった。
ああ、ボクがベース弾けたなら田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)ばりにうるさく暴れてやるのに。
そんなことしたら笑可が「あ、あのw 動きうるさいんで大人しくしてて豹馬」ってツッコミ入れてきそうだけど。
実際、猫の歌とは別の歌を作っている彼女の隣でハタキをベース代わりにひたすらヘドバンしつつ田淵ダンスしたら笑可は迷惑そうな顔で「変なキノコでも食べた?」とツッコミしてきたっけ。
笑可のフォロワー数はCDリリース後に少し増えた。
また、#アシアト感想で検索すると性被害を引きずりつつ歌を書く彼女に心を打たれた女性たちがツイートしまくっていた。
今、ボクらは昼の公園でブランコに乗り彼女の作った猫の歌(仮)のデモテープMP3を聴いていた。
「雲ってわたがしみたいだよね」
そんなのんきなことを言う笑可。
「最近はオレのいない時はどう過ごしてるんだ?」
「あの日行った猫カフェの動画見返してはニコニコしてる」
「それはいい話だな」
「玖蘭さんに聴かせてみたいな、今の歌がDTMerさんのアレンジを経たら」
だからか、彼女の作った猫の歌はシンプルなリズムギターに間奏でポップなギターリフが入るくらいで
色々アレンジしがいのある余地を残す作りになっていた。
「ヨーロッパ、ヨーロッパ、ヨーロッパ返して!
ヨーロッパ、ヨーロッパ、ヨーロッパ返して!」
突然歌い出したボクについに壊れたかといったような表情を浮かべつつ、どうしたの?と笑可が聞いてきた。
「今のはメランコリック写楽って解散したバンドのヨーロッパ返してって歌だよ」
「あっ、このボーカルの女性知ってる。ももすももすさんじゃん」
YouTubeを一緒に見ながら、火星返してって歌作りたくなってきたと笑可。
今日は体調にムリがあったのか、笑可は30分公園にいたが「もう帰りたくなってきた。私を見守ってて」と小さい声で言う。
「わかったザンスよー」とボクは明るい声で彼女に声をかける。
そして笑可の頭をポンポン優しく叩く。
「笑可が嫌いなものってなんだっけ」
「カニミソとうに」
「じゃあいつか出したCDの順位がオリコン50位以下記録したら両方食べてもらおうか」
「私を殺す気?」
辛そうにしてた笑可の顔がオレの軽口でほころぶ。
さらに笑わせようとコウメ太夫風にネタを披露する。
「計量スプーンだと思ったら~、洗剤用スプーンで食べてました~。ちきしょー!」
笑可はあはあは笑って、別の意味で苦しそうだった。
女性DTMerとZoomで打ち合わせするのはまもなくであった。
バレンタインは特に何も無かった。
いや、笑可が作りかけの新曲を聞かせてくれたんだったか。
あと1週間で停学も解ける。
1ヶ月を通してLUNKHEADの小高さんやフジファブリックの志村を模範にして、音楽を作っていきたいという笑可の姿勢を知れてよかった。
何度も何十回も病み、時にはエチケット袋に嘔吐することもあった。
そんな時に完全に笑可の心の支えになれているのか不安になったりもした。
でも、彼女は毎回別れ際に「いつもありがとう」の挨拶を忘れないのだった。
ああ、ボクがベース弾けたなら田淵智也さん(UNISON SQUARE GARDEN)ばりにうるさく暴れてやるのに。
そんなことしたら笑可が「あ、あのw 動きうるさいんで大人しくしてて豹馬」ってツッコミ入れてきそうだけど。
実際、猫の歌とは別の歌を作っている彼女の隣でハタキをベース代わりにひたすらヘドバンしつつ田淵ダンスしたら笑可は迷惑そうな顔で「変なキノコでも食べた?」とツッコミしてきたっけ。
笑可のフォロワー数はCDリリース後に少し増えた。
また、#アシアト感想で検索すると性被害を引きずりつつ歌を書く彼女に心を打たれた女性たちがツイートしまくっていた。
今、ボクらは昼の公園でブランコに乗り彼女の作った猫の歌(仮)のデモテープMP3を聴いていた。
「雲ってわたがしみたいだよね」
そんなのんきなことを言う笑可。
「最近はオレのいない時はどう過ごしてるんだ?」
「あの日行った猫カフェの動画見返してはニコニコしてる」
「それはいい話だな」
「玖蘭さんに聴かせてみたいな、今の歌がDTMerさんのアレンジを経たら」
だからか、彼女の作った猫の歌はシンプルなリズムギターに間奏でポップなギターリフが入るくらいで
色々アレンジしがいのある余地を残す作りになっていた。
「ヨーロッパ、ヨーロッパ、ヨーロッパ返して!
ヨーロッパ、ヨーロッパ、ヨーロッパ返して!」
突然歌い出したボクについに壊れたかといったような表情を浮かべつつ、どうしたの?と笑可が聞いてきた。
「今のはメランコリック写楽って解散したバンドのヨーロッパ返してって歌だよ」
「あっ、このボーカルの女性知ってる。ももすももすさんじゃん」
YouTubeを一緒に見ながら、火星返してって歌作りたくなってきたと笑可。
今日は体調にムリがあったのか、笑可は30分公園にいたが「もう帰りたくなってきた。私を見守ってて」と小さい声で言う。
「わかったザンスよー」とボクは明るい声で彼女に声をかける。
そして笑可の頭をポンポン優しく叩く。
「笑可が嫌いなものってなんだっけ」
「カニミソとうに」
「じゃあいつか出したCDの順位がオリコン50位以下記録したら両方食べてもらおうか」
「私を殺す気?」
辛そうにしてた笑可の顔がオレの軽口でほころぶ。
さらに笑わせようとコウメ太夫風にネタを披露する。
「計量スプーンだと思ったら~、洗剤用スプーンで食べてました~。ちきしょー!」
笑可はあはあは笑って、別の意味で苦しそうだった。
女性DTMerとZoomで打ち合わせするのはまもなくであった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる