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サムライソウル

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CDが発売する日になった。
ボクと笑可は3駅離れた都会な駅に降りて、CDショップに行った。
玖蘭さんのインディーズレーベルから数量限定で販売されている「アシアト/カナリアボックス」は笑可の泣きそうな顔をジャケットにして売られている。

敬愛するバンドとレコーディングをし終え、感動で涙しそうになっているところを撮られたのが真相だ。
「本当に店に並んでる。すごい。豹馬、どれくらい売れたか聞いてきてよ」
「わかった」

女性店員に緊張しながらemikaのCD何枚売れました?    と聞くと20枚と答えが返ってきた。
特に試聴コーナーでカナリアボックスを聴きながら涙する女性が多いという。
同時にランクヘッドのカナリアボックスのシングルも少しずつ売れていると言う。

「笑可、そこそこCD売れてるよ。もう20枚売れてるだってさ」
「今16時だから開店して6時間でそんなに売れたの? 
特にCMとか打ててる訳でもないのに」
「色んな人達に努力が届いてよかったじゃん」
「そうね。曲順変えてみたのもよかったのかも」

彼女の言う通り、1.アシアト、2.カナリアボックス、3.意味なんてわからないの3曲が収録されたのだった。
特に3は最後のサビの歌詞も暗かったのだが、小高さんの手によって希望が見える歌詞に書き換えられ、作詞のクレジットは笑可/小高となってる。

嬉しいボクはなんとなくウルフルズのサムライソウルを熱唱していた。
「なんでウルフルズ?」
「なんとなく。笑可がピンチになったらええねん歌うつもり」
「そういうのは教えないでいてほしいな。サプライズ効果ないじゃない」

CDショップを散策する。
1枚のCDを出すのに色々な人が力を合わせて、やっている。
「みんなせっかく作品出してるんだから売れて欲しいな」
笑可は性格まで良いようだ。

「いい考えだと思うよ」
「有名な人ばかりに目が行きがちだけど、世の中埋もれている音楽はいくらでもあるんだよね。
知ってもらう努力をしていても、それが実らない。
なんともいえないよ」
好きなバンドの解散や活動休止を知っているからか、笑可の放つ言葉には説得力がある。

「ねえ、豹馬」
「何?」
「次作る曲どんなものがいいかな」
「猫テーマにした歌とかいいんじゃない?    笑可は親せきの猫ちゃんメチャクチャ愛してたじゃん」
「そうだね。猫カフェ連れて行ってよ」

猫を前にはしゃぐ笑可。
こんなに明るい彼女の姿を見るのは初めてかもしれない。
黒猫を抱っこしつつ、「はあ、猫って最高」と言う彼女。
ミドルテンポで明るい作風でサビで切なくなる歌が浮かんできたと笑可が笑って言う。

「作風に変化つけたいから、まだ印税振り込まれてないけど何かあった時のために使っていいって言われてる貯金からDTMerの人に頼むよ。
山沢さんに頼みたいけど、久しぶりに配信者への楽曲提供始めてるし探してみる」

笑可のフォロワーでカナリアボックスの音源をリミックスしていいか聞いてきた女性トラックメイカーがいるらしい。
どうやらその子に依頼するつもりらしい。

なにはともあれ、全てが快調に向かっている。
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