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どうしても許せないことがある

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「あれ、なんだっけ。笑可っていたけど男にレイプされたらしいけどその後から学校来なくなったよな。根性無しすぎねえ?   それで今はのほほんと自宅で音楽作って楽に金稼いでんだろ?」

ボクは偶然にもそう話すクソ上級生を見かけてしまった。
気がついたらとっさに手が出ていた。
コノヤロウ!

生まれて初めてケンカをふっかけた。
廊下で殴り合うボクらをマッスルな体育教師が止めてくる。
結果として1ヶ月の停学処分をくらった。
笑可になんて言い訳しよう。

「あれ?  なんか私んち来るの早くない?   それに顔腫れてる……殴りあったの?」
「いや、ドブ川に金魚が泳いでいて捕まえようとしたら派手にすっ転んだだけ」
「ホントに?」

「ホントだっつってんだろ!」
「私のことを悪く言う人を許せなかったとかじゃなくて?」
核心を突いてくる笑可。
ボクはギャグなウソの言い訳でごまかそうとし続ける。

「わかった、そういうことにしといてあげる。でもなるべくもし私の悪口聞いてもほっといて」
「酒飲んでるのバレて停学1ヶ月くらったわ」
「!??   学校どうすんの」
「だから停学だってば」
「豹馬の家厳しいのにね」

「でも、これから1ヶ月笑可とずっといられるって思うと嬉しいんだ」
「私も豹馬がいてくれるのはうれしいけど……いいの?」
「オレはもうお前が居ないとダメなんだよ!」

「うれしい。ありがとう」

会話のネタが尽きてきたので、南波志帆さんのMUSICをかける。
頭の中クルクル回るミュージック。

推しのバンドほど、なぜか南波さんのラジオ番組に出ない。
そんなぼやきを笑可が確かにねと笑って答えた。
「未だにフジファブリックやLUNKHEADがNHK-FMに呼ばれないのなんでよ?   南波志帆さんと推しが話し合うほっこり空間味わいたいのに!!」
「南波さんの癒し声いいよね。私も玖蘭さんくらいの立ち位置になったら出てみたい」

ドキドキドキドキする。
笑可のまっすぐな目はあの日よりも少しづつ輝きを取り戻してきている。
もっとその顔を、今は曇りがちな顔を笑顔にしていきたい。
ハイロウズの青春の歌詞ほど6対1のケンカにはならなかったけど、自分の大切なものを守る上で名誉の停学処分になった気がする。
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