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太陽が燃えている

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山沢さんの手によって笑可の歌が3曲音源になった。
配信者のリスナーさんたちが集まって購入してもらったノートパソコンで、編集を施しボーカルに適度なリバーブが加わり笑可にはそのボーカルのみの音源も渡されていた。

笑可の顔はとても幸せそうだ。
次の山沢さんのLINEにボクらは驚かされることになる。
「生きてくこと」という彼女の歌をリミックスした音源をYouTubeで近所の公園の花を映したMVにしたこと、そして笑可の歌を各音楽サイトで販売し始めていること。

そして、その収益の半分をどうするか?   というLINEであった。
「どうする?」
「もう山沢さんには返信したよ。そのお金、性犯罪の被害に遭われた女性のための基金への募金に宛てていいですか?    と」
それを笑可から聞いた彼はそういうことならと全額性被害の女性に寄付すると決めたらしかった。

「社会の役に立てない私でも、ようやく役に立てたのかな」
SNSでちょうどジャニーズの性加害問題が問題になっていた頃だったので、反応が集まり笑可の元には150万が集まることになる。

生まれて初めて手にする大金に「銀行の振込の通帳を載せて、報告する」と笑可は譲らなかった。
そして自分を音楽に駆り立てた歌として、彼女はランクヘッドのカナリアボックスのカバー動画をXに載せた。

笑可は注目されることを嫌って、プロのアーティスト以上に反応を返さなかった。
それでも同じ性被害の女性シンガーソングライターに応援する歌を作られ、動画に送られた際は長文で感想を送った。

『高崎玖蘭(たかさきくらん)』という名前のスタイルの良い24の美人SSWからだった。
茶髪に赤のメッシュが入ったその人が後々に笑可の人生に大きな影響を与えるとは思ってなかった。

「音楽やってみてよかったかも」
そこそこ外出出来るようになってきた笑可を労いたくて、近くのカフェでパフェを食べあっている時
新年初の笑顔を見せて、彼女は言った。

「玖蘭さん、いい人そうだよね。私と違って毎回のようにステージに立てて、歌披露出来てるのすごいよ。
彼女が事件に巻き込まれたのは5年前らしいから、もちろん人前に立てるようになるのに時間がかかったんだろうけど。
本当は玖蘭さんみたいにステージで堂々と歌いたい。大森靖子さんのように性被害の過去があっても戦える女性になりたい」

エモい出来事と言えば、笑可がカバーした1週間後に玖蘭さんもカナリアボックスをカバーする動画を上げたのだった。
しかも、笑可の歌をサビでハモるように重ねて編集しリスペクトを見せたカバーだった。

その動画を見た時の笑可はひたすらポロポロと涙を流して、「私、独りじゃなかったんだ」と大粒の涙をこぼした。

ボクはただ「よかったね」と声をかけた。
そんな笑可に配信ライブの提案をしたのは山沢さんだった。
カフェでまったり会話していると、山沢さんから「もし、笑可ちゃんが嫌じゃないなら無観客ライブか知人を呼んでその空間でライブをして、配信ライブにするのはどうか?
そうすれば笑可ちゃんの人前で歌を披露したい欲を叶えられる」と送られてきた。

笑可は色々悩んで、仲の良かった女友達で口が堅く信頼のおける弓歌ちゃんだけ呼ぶと言った。
もちろんボクも観客に含まれている。

山沢さんは最速でその返信から10分後にすぐにライブ会場と配信時間を取り決めた。
日曜の19:00-20:15と絶好の時間帯をおさえた。

会場まではタクシーで送ると言う。
例によって山沢さんは女装すると言って聞かない。
本当は女装がやりたいだけなんじゃないか。
そんな疑念すら湧いた。

さあ、彼女の晴れ舞台はすぐそこにある。
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