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Innocent Love

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熱を出し、訪問を断ろうとする笑可に「たまには看病させてくれ」と押し切る。
チルいフリーBGMをかけたり、フジファブリックのcosmos、ランクヘッドのプルケリマのアルバム版の出だしのアコギの部分をループ再生させた音楽でもかけたりしている。

笑可と徐々に一緒にいる時間が増えてく。
今は彼女を見守れればそれでいい。
どうしたらもっと笑可の力になれるんだろう。
カウンセラー的な資格がないことが残念だった。

どこまで彼女の心に立ち入っていいか、わからない。
それでも彼女の顔から笑顔のパーセンテージが増えてくことを祈って一緒にいる。

「料理ならこの体調でも作れるのに」
「大人しく寝てろ。お粥でいいんだよな。米、一度から煮たことないから不安だけど」
「ええっ。怖い」
「安心しろ、スマホのレシピサイト見てっから」

そして出来上がったどろどろのふやけすぎたお粥。
やっちまったと思った。
それでも口にした笑可は「うん、おいしいよ」と褒めてくれる。
本当か?     と聞いても「豹馬ががんばって作ったからいいの」と嬉しい答えを返してくれる。

こんないい子を無惨な目に遭わした男たちを去勢したい。
笑可の好きなフジファブリックのLight Flightをかけた後、GRAPEVINEのアダバナのMVを流す。

荒川良々がギターボーカルをやるMVに笑うオレに「おぎやはぎって互いに褒め合う芸風がいいよね」とMVに出てる彼らにも言及する笑可。

「そうだな。学校行かなくてもオンライン授業とか受けないのか?」
「学校に本当のこと話したくなくて。どこで私の情報が漏れるかわからないし。
それに......勉強なら」
「勉強なら?」
「いっそ豹馬くんから教わりたい」

!??

「オレが教えることができるとでも?」
「うーん。それしか選択肢浮かばないし」
「笑可が赤点取ってもいいならそれでもいいよ」
「じゃあ、豹馬先生。お願いねー」

今日初めての満開の笑みを見せる彼女。
サブスクからはTOKYO  NO.1 SOUL SETのInnocent Loveが流れていた。

「体調治ったら、それからひたすら教えてやるよ。それに笑可のいない学校つまらないから週2はズル休みしてここに来る」
「そこまでしてもらわなくてもいいよ」
「いや、ここで笑可といなかったら後悔する気がするんだ」

ボクの熱意が伝わったのか、彼女はコクンとうなずいた。
冷めたカフェオレを2人で冬だと寒くて飲みきらなかったの、後悔するよねと言いつつ飲んだ。

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